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第9話 2つの『運』を強く引き寄せるスキルだ。

気付いたら1か月以上経過していました。

やっぱり短い間隔で投稿できる方達は凄いな

 「さて、取り敢えずもう一度、自己紹介しておこうか。私はシャロン・ウーヘン、このディードの冒険者ギルドのギルドマスターを務めている者だ。」

 「どうも、水瀬純一と申します。ちょっとしたトラブルが元で、今この場にいるしがない何でも屋です。」


 ギルドマスター室に連れられると、二人は対面する形で座り、上記のやり取りから始めた。


 「しがない何でも屋・・・な、それにしてはそれなりに修羅場を潜り抜けてきただろう?」

 「おや、お分かりで?」

 「ふん、纏っている雰囲気と気配で分かる。それなりに殺しもしているだろう?」


 問うているが、彼女の中では断定済みだろう。異世界とはいえ、荒事の仕事を纏めるトップにいるだけあって、そこら辺の眼力は本物の様である。


 「ひひっ、流石は荒事の仕事を纏める最高責任者ってところですかねぇ、まぁ、私の様なしがない何でも屋は仕事の選好みなんて贅沢は出来ないんですよ。」


 水瀬は最初に禍々しい笑みを浮かべて感想を述べて、次に何とも言えない表情となって答えた。

 そこには個人とはいえ極小経営者としての苦労の色が出ていた。


 「まぁ、良い。お互い暇ではないだろうから本題に入るが、お前のスキルについてだが、『怒髪天』と『筋肉隆起』はどちらも一定時間ステータスつまり戦闘能力をアップさせるもので、『怒髪天』は文字通り怒りが頂点に達した時、『筋肉隆起』はスキルが発動すると同時に筋肉が膨れ上がって能力がアップする。この2つの場合だと怒りが頂点に達すると、筋肉も膨れ上がって能力が数倍になるという感じだな。どちらも戦士系にそれなりにあるスキルの1つだ。」


 説明を聞いて水瀬には、究極にして最強の暗殺拳を使う某世紀末救世主が浮かんだ。


 「しかし、この2つだけだったら、こうして対面で面談をしていない。問題はこの『強運』だ。」

 「珍しい素材やお宝に出くわす確率でも上がるんですかね?」

 

 水瀬の揶揄した言葉に、シャロンは「いや」と首を横に振った。


 「それは『幸運』と言うスキルだ。これもレアスキルの1つだが、お前の『強運』はその名の通り『幸運』と『悪運』、2つの『運』を強く引き寄せるスキルだ。」


 シャロンの説明に、水瀬は「栄光とビッグトラブルを招くスキルと言う事ですかね?」と、水瀬なりに解釈した事を伝えるとシャロンは肯定した。


 「過去、このスキルを持っていた者は全員、望むモノは違えど望みを叶え、名声もしくは悪名と共に歴史に名を残しているが、同時に波乱万丈の人生を送っており、必ず国家間、場合によっては大陸間にも影響を与えている。」

 「そして最後は惨めな最期を遂げていると言う訳ですかね?」

 「いや、それが『幸運』部分の恩恵か、全員、自分の望む最期を迎えられている。例えば数百年前、東の大陸で最強を言われた剣豪は、最後は戦場で英雄として死にたいと望み、望み通り死ぬ直前、住んでいた街がモンスターのスタンビートに巻き込まれ、一人で打って出て全て返り討ちにして街を守って死んだと伝わっている。また西の大陸の当時、最高の錬金術とまで言われた女性錬金術師は家族や友人に看取られながら穏やかに死にたいと望み、その通りに死ねたそうだ。これは悪行で名を遺した者達も同じだ。」

 「ある意味、その『強運』のスキルを持った者達はやりたい放題やって、満足して死んでいるって訳ですかね?」

 「・・・それも必ず周りを引っ搔き回して、最後は歴史の流れまで変えるほどにな・・・。だからこうして『強運』のスキルを持つ者には、こういう話をしている訳だ。」

 「要するに、よく考えて自重しろと言いたい訳ですな。」

 「そういう事だ。理解が早くて嬉しいよ。」


 シャロンの返しに水瀬は肩を軽くすくめて、


 「ま、記憶には留めておきますよ。と言ってもよそから来た(あたし)ゃ、まずは生活基盤を整える事が最優先なので、何を成すなんて高尚な事を考える余裕はありませんな。」

 「そうか、ならその()()()()を考える時が来たならば、是非とも今話した事を思い出して欲しいモノだな。まぁ、私からの話はここまでだ。行っていいぞ。」

 「では遠慮なく、ご説明どうも。」

 

 一言、礼を述べてギルドマスター室を退出しようと立ち上がろうとしたところで、ふとミントやレナードの話で、モンスターの遺体を冒険者ギルドに持ち込めば換金出来る事を思い出したので、序とばかりに目の前のシャロン(ギルドマスター)に尋ねた。


 「そう言えば、ここ(冒険者ギルド)にモンスターの遺体を持ち込めば換金出来るって来たんですが、どうすれば良いのですかね?」

 

 水瀬の質問にシャロンは「何?モンスターの遺体なんて持ってないだろうが・・・まさか?!」と怪訝な表情になった後、すぐさま察し、


 「お前、まさか収納魔法が使えるのか!?」

 「まぁ、(あたし)ゃ、アイテムボックスと呼んでいますがねぇ。」

 「・・・収納魔法まで使えるとはな。それでモンスターの遺体の換金だったな。先程の受付でその事を伝え、モンスターの遺体はアイテムボックスに入れていると伝えれば、受付担当者がギルド内にある解体作業場の場所を教えてくれる。その指示に従ってそこに行き、担当にモンスターの遺体を渡せば、後は暫く受付がある1階のロビーで待機していれば、亡骸の種類、状態、解体により得た素材により金額が選定されて、受付で渡される。」

 「成程、詳しい説明ありがとうございます。」

 「いや、冒険者やその志願者の質問に答えるのも、職員の業務の1つだからな。他に訊きたい事はあるか?」

 「いえ、じゃあ、今度こそ失礼しますわ。」


 水瀬の言葉にシャロンは「ああ」と短く答え、水瀬は今度こそ立ち上がり、そのまま部屋を出て行った。

 水瀬が退出し、階段を降りる音を聞きながら、


 「『強運』のスキルを持った上に、収納魔法まで使えるとはな・・・。有望な人材が来たと喜ぶべきか、それともとんでもないもめ事を持ってくる厄介者となるかもしれない人材が来たと頭を抱えるべきか判断に迷うな。」


 シャロンは深いため息を吐いた後、


 「今は考えても仕方がないか、私も元冒険者、その時はその時で判断して対応するしかあるまい。」


 自分に言い聞かせる様に言うと、まだ残っている仕事を処理するために自身も立ち上がって部屋の中に設置されている業務机へと向かった。


 地方都市ディードの冒険者ギルドの最高責任者であるギルドマスターの彼女は、何時までもその事ばかりに関わっていられないのだ・・・。

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