第8話 冒険者になりたいんですけど。
「・・・間近で見るとそこそこの大きさなの建物だな。」
冒険者ギルドの入り口付近まで来て、改めて冒険者ギルドの建物を見渡して水瀬はそう感想を呟いた。
しかし、それ以上の感想は湧く事もなく、水瀬は冒険者になるべく、開いたままとなっている大きな入り口を通って、冒険者ギルドの中へと入っていった。
ギルドの1階は広めのロビーになっており、左に掲示板4つ一定の間隔で設置されており、一番手前の掲示板の前に冒険者のパーティが2組、奥でも2組いた。
中央にに受付カウンターがあり、数人の職員が待機している。
どことなくハローワークのような造りと雰囲気だなと思いながら水瀬は、受付カウンターに向かって歩いて行った。
受付カウンターは4つあり、それぞれに受付職員がいるのだが、どれも若い女性、20代前半から一番若いのは10代後半に見える。
水瀬としてはどの受付カウンターでもよかったので、運よく空いていた二十歳ぐらいの茶色の髪を緩く纏めた職員が担当している受付カウンターに歩いていた。
「初めまして、冒険者ギルドへようこそ。どのようなご用件でしょうか?」
「あ~どうも、私ゃ、水瀬純一と申しますが、ちょっとした縁で、帰る途中だったミント嬢とその護衛依頼をこなしていたレナードとお仲間さん達とこの街まで行動を共にする事になったんだが、その際、レナードから冒険者になる事を勧められたので、冒険者になりたいんですけど。」
「レナードさんから勧められたのですか。はい、分かりました。では冒険者登録の手続きをしますが、まずは冒険者システムについて説明を致しますね。」
「お願いします。」
「冒険者ギルドは色々な仕事の依頼を受け、それをギルドに登録した冒険者の皆様に斡旋しております。依頼内容の仕事は掃除や配達など街中での仕事も当然ありますし、護衛や傭兵、魔物や賞金首の討伐の依頼、それに魔石や魔物の遺体を含めた魔物の素材の買取なんかもやってます。ここまではよろしいですか?」
「ええ、レナードからもほんの軽くだが説明を受けましたわ。」
「1度登録すると冒険者カードが発行されるので、他の街でも利用できますよ。冒険者にはランクがあり、最初はEから始まりD、C、B、A、Sと上がっていきます。」
「ランクが上がると何かメリットがあるんですかね?」
水瀬がそう尋ねると受付嬢は少し困った表情になった。
「う~ん、実をいうとEからBまではギルドからも国からも大きなメリットがあるかというとほとんどないんですよ。精々、社会での信用度が増すぐらいで、まぁ、これも大きなメリットといえばメリットですが・・・。」
「・・・AとSは違うと・・・」
「A、Sランクの方々はギルドからも国からも優遇措置がなされ、Aランクならば騎士相応の、Sランクならば貴族並みの優遇措置がなされます。その代わりギルドや国からの協力要請には必ず参加する義務も生じますが・・・。」
「Eだとそれ以上のランクの依頼は受けられないなどの制限などもないと?」
「まぁ、ギルド側としましては一応、取りやめる事を推進致しますが、ご本人様がそれでも受けると強く望まれましたら、拒否は致しません。まぁ、実際、冒険者になられる方々の中には色々な事情を抱えておられる方もおられますから、Eから始まっても実力は高ランクレベルという方もそこそこいらっしゃいますから・・・。」
「成程、Eランクでも高ランクの依頼をこなせる実力があり、結果を出せば問題ないと・・・。」
「そういう事になりますね。逆に失敗した場合はペナルティを受ける事になりますが・・・。」
「まぁ、そうなるだろうねぇ。」
水瀬は軽く肩をすくめると、
「まぁ、大体理解しましたわ。登録、お願いしても良いですかね?」
「はい、水野純一さんでしたね。名前からして東の大陸の方ですか?」
「・・・どうですかね。まぁ、この大陸の人間じゃないのは確かですわ。」
言われるがままに、職員……受付嬢が取り出した細長い金属の板を握る。の返しに受付嬢は怪訝な表情となったが、訳ありと察し、それ以上尋ねて来なかった。
「では水瀬さん、こちらの板の中心部分に手を付けてください。」
水瀬は言われるがままに、受付嬢が取り出した一般的なノートパソコン程の大きさの金属の板の中心部分に右手をピタリと着けた。すると板全体が薄く青色に発光し、程なくして「もう手を放して良いですよ。」と言う受付嬢の言葉に従い、手を離すと、板に細かい文字や数字が浮かび上がってきた。
「これが水瀬さんの今の総合ステータスですね。」
そう言いながら受付嬢は水瀬の総合ステータスを読み取り、
「・・・水瀬さんは攻撃力が凄まじく高いですね。攻撃力だけで見れば現時点でBクラス並みですよ。防御力もCクラス並みにあり、戦士系で十分に活躍出来るステータスですよ。」
受付嬢は感心した様に言い、続けて、
「それに魔力も少ないですけどありますね。これなら初歩レベルですが、攻撃、回復、補助の魔法も習得すれば使用出来る様になりますね。」
「ほう、まさか俺に魔力とやらがあるとはねぇ、これにはおじさんもびっくりだわ。」
水瀬はお道化た様子で、しかし感心した様に言い、受付嬢は板を操作すると、
「水瀬さんはスキルも3つありますね。」
「スキル?まぁ、ニュアンスでどういうものかは予想はつくが。」
「平たく言えば習得すれば色々と便利な強い能力でしょうかね。」
「で、俺はどういうスキルを持っているんですかね?」
「水瀬さんのスキルは怒髪天、筋肉隆起それと、え?強運?!」
受付嬢は水瀬の最後のスキルを見た時、驚愕の表情となり「申し訳ありませんが、暫くお待ち頂けませんか。」と水瀬に言うと、大慌てで奥へと走って行った。
受付嬢の突然の行動に、周りも驚いたらしく、程なくして騒がしくなった。
一体何なのかねぇと思いながら待っていると、水瀬の相手をしていた受付嬢が一人の女性を伴って戻ってきた。
パッと見た限り受付嬢の上司と思われる見た目20代後半の長い藍色の髪が特徴の、長身美麗の美女で頭の左右耳の少し上ぐらいから後方に向かってピンと伸びている角が嫌でも目についた。
「お待たせしました。水瀬さんのスキルに関しましては私ではなく、このギルドの最高責任者である」
「ギルドマスターである私、シャロン・ウーヘンがする事になった。取り敢えずギルドマスター室に来てもらおうか」
受付嬢の言葉を引き継ぐ形で自己紹介をした後、自分の普段の仕事場であるギルドマスター室に来る様、水瀬に要求するシャロン。
「ギルドの一番偉い人に言われたら従うしかありませんななぁ。」
肩をすくめながら答える水瀬に、シャロンは鼻を鳴らすと自分の仕事場であるギルドマスター室へと歩き始めた。
水瀬はシャロンの後ろを付いて行きながら、次から次へとトラブルだらけで退屈しないねぇと内心苦笑するのだった。
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