第10話 モンスターの亡骸の買取査定の希望者か?
また1か月程掛かってしまった。なんという事だ・・・。
ギルドマスターであるシャロンから『強運』のスキルについて説明を受け終え、1階のロビーに戻って来た水瀬に、先程、水瀬の対応をした受付嬢がカウンター越しから声を掛けて来た。
「あ、水瀬さん、ギルマスとのお話は終わったんですね?」
「ああ、大きな目的が出来たら、よく考えて自重しろって言われましたわ。」
「あ~、確かに過去『強運』のスキルを持っていた人達は、良くも悪くも世に大きな影響を与えていますからね。」
「・・・『強運』のスキルの効果は一般的に広く知られているのかい?」
受付嬢の反応から、ふと、その事が気になった水瀬は尋ねると、
「国や冒険者ギルドのような組織に務めている人は、部署によっては私のような一般職員でも知っていますね。一般的には知る人は知ると言う感じですかね。」
どうやら『強運』のスキルとその効果については、それなりに世に知られているらしい。まぁ、過去、このスキルを持っている者が全員、世に大きな影響を与える偉業もしくは悪行を成している以上、世に広く知られるのも当然と言えば当然かもしれない。
「成程ねぇ。」と納得した様子で頷く水瀬。そしてふと疑問に思った事を尋ねた。
「ところで、あのギルドマスター、随分と貫禄と人を見る目を持っていたけど、見た目に反して実は結構、年をくってないか?」
水瀬の質問に「あ、はい、ギルドマスターは龍人族の方なので、老化が凄く遅い長命の種族の方ですので、あの見た目ですが60代はいってますね。」と答えてくれた。
「龍人族・・・だから頭から龍の角のようなモノが出ていた訳だ。」
「そうですね。龍人族の方は皆、ギルマスのような角が頭から出てますね。」
水瀬に受付嬢はそう答え、更に龍人族は別の種族”魔族”と並んで、この世界では魔力、身体能力共に優れた種族と認識されている事、序にギルドマスターであるシャロンはかつてはS級という凄腕の冒険者でもあった事も伝えてくれた。
それを聞いて水瀬は「神は2物を与えずと言うが、与えまくってるな。」と感想を述べると、受付嬢は「そうですね。」と苦笑をして返した。
「では水瀬さん、ギルドへの登録はギルマスとお話している間に終えていますので、ギルド所属の証明である『冒険者カード』をお渡し致しますね。」
クレジットカード程の大きさのプレートを受け取る水瀬。
「これで俺も冒険者ギルドに属する冒険者と言う訳で良いのですかね?」
「はい、水瀬さんのこれからのご活躍を期待しております。」
恐らく登録を終えた新入り全員に対して言っているだろうセリフを聞いた後、
「ところでギルマスに、受付でモンスターの亡骸を買い取って欲しいと伝えたら、そのやり方を説明してくれると聞いたんだが・・・。」
「え?水瀬さん、モンスターの亡骸らしき物を持っていない・・・まさか、収納魔法が使えるのですか!?」
「・・・レナード達やミントのお嬢ちゃん、ギルマス、そしてあんたと言い、俺がアイテムボックスを使えると皆、驚くな・・・。しかも声がデカいし・・・。」
水瀬が呆れた様に言うと、受付嬢は我に返り、
「あ、す、すいません。まさか収納魔法まで使えるとは思いませんでしたので・・・。」
「まぁ、いいけどね。で、話を戻すがモンスターの亡骸を買い取ってもらう場合、どうしたら良いんですかね?」
「あ、はい、でしたら、まず、水瀬さんの『冒険者カード』をお出しください。」
受付嬢の指示通り、仕舞ったばかりの『冒険者カード』をカウンターに置くと、「お借りしますね。」と一声掛けて、受付嬢はそれを手に取り、スキャナーのようなモノで『冒険者カード』を読み取ると水瀬に返した。
「では、左奥にある扉を進んで、広場にいる職員にモンスターの亡骸の買取希望と伝え、『冒険者カード』を渡し、それからモンスターの亡骸をお渡しください。そうすれば査定に入りますので、またこのロビーに戻って頂き、査定結果が出るまで待機していてください。結果が出ましたらお呼びしますので。」
受付嬢の説明に水瀬は「了解です。」と返し、指示通り左奥にある扉を進んだ。
扉をくぐると広い広場に出、数人のギルド職員がモンスターの死体を調べ、解体を行うなどをして忙しそうに動いている。
そのうちの一人、見た目からしてもガタイの良い職員が水瀬に気付き「モンスターの亡骸の買取査定の希望者か?」と尋ねてきた。どうでも良いが落ち着いた感じの声で、その見た目とマッチしていてより仕事が出来る男に見える。
「ええ、受付でまずは、この冒険者カードを渡せと指示を受けたんですがね。」
水瀬が冒険者カードを差し出すと、職員は頷きながら受け取り、中央に設置された司令部に駆け出して、そこに置かれている受付でも見たスキャナーらしきモノを当てると戻り、「見たところ、モンスターの亡骸を持っていないところから収納魔法を使っていると推測するから、今から案内する場所で、亡骸を出してくれ。」と指示してきた。
職員に案内された場所で水瀬がアイテムボックスからシルバーウルフの進化体とゴブリンの亡骸全部を出すと、
「シルバーウルフの進化体か・・・見たところ駆け出しの様だが苦戦したんじゃないのか?」
「ええ、このワン公にはガブリと噛みつかれましたわ。」
噛みつかれた場所に手を当てながら答えると「よくそのまま嚙み殺されなかったな。」と驚きの声が返ってきた。
「何、両手で噛みついているそのワン公の顔と身体を強く掴み、その痛みで噛みつく力が弱まったところで、その腹に思いっきり蹴りをぶち込んでやったよ。それがそのワン公の致命傷になりましたよ。」
水瀬が答えると、職員は絶句した様だった。
「まさか、素手でシルバーウルフの進化体を倒すとはな。まぁ良い。では今から買い取り査定をするので、ロビーで待機していてくれ。」
「了解、よろしく頼みますわ。」
そう答えると水瀬はロビーに戻り、何気に依頼書が張られている斡旋板に足を向け、Eランク向けの依頼を見回していると、受付から水瀬を呼ぶ声が聞こえてきたので、名前を呼ばれた先程とは違う受付カウンターに行き、冒険者カードを提示すると、先程担当した受付嬢よりも若い受付嬢が受け取り、
「はい、水瀬さんと確認出来ました。今回の査定の結果、水瀬さんに支払われる金額は全部でえ、81万200”エン”ですかぁぁ!?」
「ちょっと受付のお嬢さん、あまり騒がれると困るんだけどねぇ。」
「あ、ごめんなさい。それではこれが買取金額です」
「どうも」
受付の少女が大声で叫んだため、ギルド内にいる職員、冒険者の注目を浴びる事になったので、水瀬は内心やれやれと思いながらも金額を受け取り、それをアイテムボックスに収納すると、またもや目の前の受付の少女が大声で驚き、それも見て水瀬は内心、このお嬢ちゃん、受付向いてないなと呆れた。
しかし、異世界なのに金の名前が”エン”とはねぇ、やっぱりこの世界、地球しいては日本と関係があるって事なのか・・・?
思わぬ所で日本と関連がありそうなモノが出てきて、水瀬は僅かの間だが思案する事になった・・・。
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