幾億海底に燻る微光 其の二
「ん、あれ?」
あんなことを息巻いたが重大な欠陥があった。隠されてもないし全く隠れていない欠陥、
「海って、どうすんの?」
マップを眺め呆然とするガンマだった。
一先ず周囲を探索することに。なんやかんや色々手順を吹っ飛ばしてここまで来てしまった。もしかしたら海に出る手段が何かあるかもしれない·······
数時間周囲を探索してみた。捜索範囲は徐々に広がっていき結局もう二つほどエリアをすっ飛ばし海沿いを歩いていた。
「こっち側は砂浜とかがないんだな、いつか崩れ落ちるだろこれ」
モンスターが定期的に襲ってくるためその対処にも追われる。マップの端に近づくほどモンスターの力が増していることがわかる。
「レベルがアマリリス戦以降殆ど上がっていないと思ったら·····そういえばこのゲーム、というかこのモードって経験値獲得量終わってるんだった······」
イカれ経験値効率のカブトムシとアマリリスの所為で忘れていたが、獲得量8分の1はかなり効いているようだった。
「戦狂の斧戦ですら数レベルしか上がらなかったし、こっからレベルを更にあげるとなると時間がいくらあっても足りん」
どっかの誰かは3秒で150レベル消えたらしいが、思い出さないでおこう。
「さて、本当にどうすれば行けるんだ?」
現実逃避も程々にしてガンマは座り込んで考えることに。
「うーーーん、やれ無くはないけど····情報が漏れるだろうし現実的じゃ無いな、」
船で戻ってきたクランに頼んで連れていってもらうという手もあるが、シグマ達と嘘つき悪巧み中なため協力など出来るはずもない。と来れば、やることは1つだ。
ガンマは目的の場所まで直線で行ける場所にやってきた。装備を全てしまいストレッチを始めた。入念に準備運動をしなければ足が攣ったりして危ないからな。
「うっし、覚悟決めるか!」
ガンマは自ら海に飛び込んだ。
「っぱぁ!波は強いがここはゲーム!酸素値を気にすれば溺れはしない、スキルも使える!つまり!泳げば何とかなる!!!」
「おーい!大丈夫かあんちゃん!」
知らない声がガンマの耳に届いた。
「え?」
大きな漁船がガンマの近くまでやってきていた。
「あんちゃん運が良かったな、俺たちが通りかかってなかったら今頃溺れてたぜ?」
「お、おう、助かったよ」
「足滑らせちまったようだからな、沖まで送ってやんよ」
『海に飛び込んだら起きる演出·····?随分と親切なもんだな·····ん?待てよ?』
「いいや、船長さん」
「おん?どうした!」
「ここまで連れて行って貰えませんか?」
ガンマはマップを開き主従の杖の場所を指さした。船長さんは不思議そうに見てきたが、快く承諾してくれた。
「ここに行きたいんか?なんもねぇ海のど真ん中なんだけどよぉ、まぁ。あんちゃんが行きたいって言うんなら俺達も手伝ってやんよ!」
「助かるよ」
見た目は大柄のイカつい男、だがこういう人は見た目に反して優しく器も大きい人も多い。船長さんは操舵師に声に進路の変更を告げた。
『これを偶然と見るか必然と見るか·····ずっと感じて違和感が確信に変わりつつある。』
ガンマの感じていた違和感、何故こうもタイミングよく船やクエストが発生するのか、リリースから今まで動くことのなかった世界がガンマが来てから目まぐるしく回り始めている、これはあくまで憶測、自意識過剰と分かっていても、そう感じざるおえない。
「恐らくこのゲームは····っ?!」
ズガン!という轟音が船への振動へと変わり船体を揺らした。
「なんだ?!」
「っ!野郎共!持ちこたえろぉ!!」
周囲を見渡せば原因が分かる。それほどまでに荒れ狂った海、操舵師の気合とプライドによる操舵テクニックが無ければ横転していたやもしれない。
「急に波が強くなりやがった!」
ガンマは体制を保ちながらマップを確認し始めた。マップによればあと数分で着きそうな距離まで進んでいた。
「巻き込んでわりぃな、」
小声でそんなことをボヤくガンマ。船員からすれば巻き込まれでしかない、ガンマに対する不満も出るかと思ったが、
「はっ!船長!この海でここまで荒れるなんて久々じゃねぇっすか!」
「っ、ガッハッハ!!!それもそうだな!オメェら!振り落とされんじゃねぇぞ?!」
この嵐の中でも通る声、それに呼応する船員の通る声。この状況すら楽しんでいるように見えた。
「この荒れ具合、そしてあの空·····どう考えたってシークレットクエスト関連だろうな」
竜巻のように見た目の気候現象、海から海水を吸い上げたものが周囲に撒き散らされ水の攻撃魔法のような威力を誇っていた。
「あんちゃん!あんちゃんの行きてぇ場所ってのはあの根元か?!!」
「あぁ!だけど、」
「今更心配か?!俺たちにかかりゃあ何の問題もねぇさ!」
「まじかよ·····w」
さっき会ったばかりのNPC、ここまでしてくれるとは実に都合が良い、これがたとえ仕組まれたルートだとしても乗る以外に選択肢は無いだろう。
荒れ狂った海、普通の航海であれば死を覚悟するようなその光景にも果敢に挑む船員達。波に振り回されながらも何とか目的の位置へと運ばれた。
「これ以上は行けねぇ!あんちゃん!こっからどうすんだ!」
「·····悪いな、まじで助かった!帰りの便は考えないでくれ!」
ガンマはその荒れ狂った海の中心に勢いよく飛び込んだ。
「なっ!!!あんちゃん!死ぬんじゃねぇぞ!!!!?」
そんな声が遠くに聞こえたがそれを気にしている暇は無い。荒れ狂った海は水中も同様だった。海中で激しい水の流れに振り回されながらと何とか意識を保つ。
『っ、!HPが減ってる····こんな所で紙装甲のデメリットが顕著に出やがった、HPも酸素ももう持たない、ワンチャンにかけて飛び降りた結果がこれだ。だが、俺の推測が正しければ·······!」
ガンマは海底に吸い込まれるかのように意識も無いまま消えていった。




