反逆者防衛戦其の二
東門ガンマ
「制圧完了。他のカバー行くわ」
「やはり囮でしたか。タワーシールド二枚持ちを数十人起用しガンマ様達から時間を奪う予定だったのでしょうが····水神の都バフの存在は一部のプレイヤーだけが事前に知っていること、今頃裏切り者は冷や汗が止まらなくなっているでしょう。」
テレストが眼鏡の位置を中指で直しながらそういった。
「王達は北に流れて正門の援護をお願いします。にぃつ様が狙われているのであれば我々としては好都合、にぃっ様そのまま維持若しくは殲滅をお願いします。」
「維持と殲滅は若しくはの関係にないだろ、」
「些事です」
多少の愚痴を零しながらも前衛として大暴れしているカバネのカバーをし、敵の頭を正確に射抜き続けるにぃつ。敵のメンツを見ると知っている顔が何人かいる。それはつまりこの戦場においての幹部クラスが集まっている、ということになる。
『反逆者連合は言わば無名の集まり、うちでもトップクラスの戦闘力を誇るカバネを止める術はない。とくれば、』
「当初の目的に忠実になり始める頃かな」
にぃつが敵の心を読んでいるかのような独り言を話し始めた。その時だった。その時にぃつの周囲に歪な形をしたダガーと人の腕が複数本現れた。
「ほらな?」
時間にして一瞬だがにぃつの目にははっきりと見えていた。ダガーと腕だけではなくそのまま顔やら身体が姿を現したことを。
「天雷の神子なしに雷の種あらん。御守りしろ【不遜の無い王守足る器】」
水神の都城頂上から放たれた魔法はにぃつの周囲に現れたプレイヤーに降り注がれた。まさに白銀の雷、奇襲してきたプレイヤー達は何とか逃れたようだが。
「奇襲に失敗した時点でアサシンの価値は大暴落〜お前の作戦もこれで没だね〜?宵闇」
「っ、!?どうやって!!!」
土煙の中から現れたのは標的ではなく、紫髪の少女、プッチーちゃんだった。
体には数多の武器が突き刺さりダメージエフェクトが垂れ流しになっているが、何故か倒れない。
「プッチーの綺麗な肌に刺し傷·······勿論、覚悟はできてるんだよね?後輩」
プッチーちゃんの圧に気圧され後退りする宵闇ら。プッチーちゃんの身体が少女から女性の体型に変化し、はなから受けていないかのようにダガーが体からポロポロと抜け落ちる。
「お前が1ヶ月前このクランに入ってきた時から裏があると感じていた。その時から既に情報の遮断を徹底していた。プッチーの本来の役割を秘匿にしつつお前をプッチーの下に置かせた。」
「っ、そんな前から、!俺は忠実な部下として動いてきたつもりだったんだけどな」
首元から聞こえるテレストの声に反応する宵闇。目の前に怒りを抑えるのに必死なプッチーちゃん、いやプッチーさんがいるが。こいつの寿命は残り僅かだろう。
「陰盗人は諜報部隊と自分達で語っておきながら肝心なところが見えていない。面倒臭いだけで誰からも相手されないだけで中身は弱小。そんな雑魚クランの幹部如きがにぃつ様を汚すなど、烏滸がましいとは考えなかったのか」
「っ!くっそ!」
宵闇は首につけている通信アイテムを強引に千切り悔しさをぶつけるように踏み潰した。
「通信機を壊さなければこちらの情報は筒抜け、話せるだけの欠陥アイテムだからね。」
口調の違うプッチーさんが宵闇らの目の前まで歩みを進める。いつの間にやられたのか、宵闇達を援護せんとやってきたプレイヤー達が粒子状になり消えていっていた。
「っ、撤退だ!一度体制を立て直せ!」
宵闇が陰盗人の面々にそう指示を出す。身体が徐々に消えていきプッチーさんの前から完全に姿をくらました、が。
「潜脱なる雷迎の帳、妖を捉えよ【雷迎なる妖の帳】」
水神の都城頂上から放たれた水色の雷はプッチーさんの周囲半径15m程の帯電したドーム状の結界を作り上げた。
バチツ!!
「って!」
透明になっていたはずの陰盗人の面々がテレストの魔法に妨害されたことで姿を表した。
帯電した結界に触れ感電したプレイヤーもいたが危険を察知し足を止めたプレイヤーもいた。こいつらは今こう思っているだろう。
『我々とて不色王の情報は不足している。現にこいつのせいでにぃつを仕留め損ねた。』
『宵闇がガセネタを掴まされたせいで戦況は最悪、だけどさ?』
『他の化け物の妨害が入らねぇなら話しははぇえじゃねぇか!全員で、』
『この雑魚を殺せばいいだけだ』
「先輩、あんたは接近戦が苦手だったよな?俺にも散々負けてきた。そんな俺より弱いあんたが、複数戦とか······正気とは思えねぇーっすよ」
プッチーさんを見下すような目つきで話を進める宵闇。他のプレイヤー達も同意見のようだ。恐らくこいつらの中で情報の共有、プッチーちゃんは弱い、そういう事を言われてるんだろう。
「はぁ、プッチーはね?見下されるのも見下ろされるのも大嫌いなの。でも、それよりもっと嫌なことは。団長を傷つけようとする人なの。」
プッチーさんはインベントリから厳ついガントレットを取り出し、装備した。触れるだけでダメージの負いそうな見た目をしたガントレットはプッチーさんに何故か良く似合う。
「団長のHPタンクとして、傷つけられることを良しとしないの。だから、邪魔者をとっとと排除して沢山褒めてもらうの。」
瞬きをした一瞬の間にプッチーさんは陰盗人のプレイヤー1人を帯電結界まで吹き飛ばしていた。
「グハッ!!!」
結界に叩きつけられたプレイヤーは帯電によるスタンをくらい動けなくなっていた。
「ぶち殺してやるからとっととかかってこいよ。」
口調が豹変したプッチーさん。見下していたはずのプレイヤー達だったが、今の一瞬で腰を低く落とし自分達の武器に手を掛け戦闘態勢を取り始めていた。
「見下ろし見下すのはもう終わり?丁度見下ろしやすい格好をしてくれてありがと♡滑稽で気分がいいよ」
「っ、やれ!お前ら!」
ダガーを構え襲いかかってくるがプッチーさんはそれを容易く流し胴に蹴りや拳、膝を叩き込んだ。
「瞬撃、」
小声でスキルを唱えていた陰盗人のプレイヤー。プッチーさんの項を切り裂くような鋭い一撃を叩き込もうとしていた。
他のプレイヤー達もそれに合わせるかのように各々瞬間移動系の攻撃スキルを使いプッチーさんの足·頭·首·胴などに攻撃を繰り出した。
「っは!ハッハッハハハ!なんだよ!やっぱ大したことねぇーんだな!先輩!手合わせで俺に勝ったこともねぇくせに!調子乗ってひとりで戦うからこうなるんすよ!!!」
プッチーさんには確かに攻撃が全てクリティカルヒットしていた。まず間違いなくHPは全損、このまま粒子状に消えるかと思われた、だが。
「言ったじゃん、HPタンクだって」
初めと同様。今度は18歳くらいの女性から次は20代前半のような見た目に変化した。
「なんだよ、それ·····」
「最上位職業──道化師の職業専用特性【皮の中の真実】」
最上位職業【道化師】
隠し職業放浪人の最終段階。
専用特性【皮の中の真実】は習得した時点でキャラクタークリエイトを3度行わせる。1度目は最大12歳の少女の見た目、次に最大18歳、最後に無制限。
作られたキャラクターを自身の身代わりとして使う事ができ、ステータスも異なる。
第一形態は第二形態の50%。そして第三形態は、150%
「さぁ、歯食いしばりな?」
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「第三まで行けばまず負けない、俺専属のHPタンクに負けは許されないからな。」
プッチーの勝利を確信し火花散る帯電ドームから目を離す。大量の魔法攻撃が飛んでくるがそれをにぃつと魔法使いが撃ち落とす。
「さてと、俺はそろそろ親玉と殺り合うとするか」
にぃつが視線を向けた先にいたのは敵の対処であるバルハルだ。
「··········」
『冗談だろ···?』
唖然としているバルハル。目の前に映る光景は当初予定していた物量による蹂躙とは程遠い物だった。スキルの質は大して変わらない。通常プレイで手に入れることができるスキルばかりだ。
何故ここまでの差がつく?
頭の中では分かっていても認めたくはなかった。
スキルを吐くタイミング、ゲームへの理解度、自身の体への理解度、何を取っても最高位に有って届きすらしないのだ。
「レベルだって全員カンスト済み!なんでた!んでこんな差があんだよ!」
「この戦は既に消化試合だ。手の込んだ大海原海賊戦術とかで来るんだったらもう少しいい感じだったと思うよ?無理だろうけど」
護衛としていたはずのプレイヤーはカバネ達に多方蹴散らされた後。あとはこいつを潰すだけの作業·····だけで終わってはつまらない。
「俺はスキルを使わない」
「あ?」
「俺は弓だけで戦う。どんなに卑怯な手だろうとお前が俺に勝てれば勝ちにしてやる。」
丁度タイミング良く水神の都の効果が切れ戦場を覆っていたドームが霧散していく。
「これでいい試合ができそうじゃない?」
「初期武器でやったらいいんじゃないっすか〜?」
カバネが野次を飛ばしているが、そこまでするのは流石に可哀想だから一応メイン武器で相手をすることに。
「カバネは大人しく観戦」
「あいよ」
武器をしまい地面に座りこみ両手を後ろに着きだらけた姿勢をとる。完全に舐めている。もう勝敗は着いている、とっとと諦めなという目で見てくる。
「······っんの、舐めやがってぇえ!」
身体から赤黒いオーラが吹き出しかなりの速度でにぃつに襲いかかった。にぃつはそれを弓を添えるだけで防いでみせた。
「っ!【殺意の大斧】!!!」
スキルによって顕現された赤色の大きな斧だがにぃつはそれを最小限の動きで難なく躱しバルハルの顔面に右ストレートを叩き込んだ。
「STR振ってないからほとんどダメージ無いでしょ?これ続けるだけで勝てそうだけど、どうする?まだやる?」
「っ、当たり前だろうが!!!」
「そっか」
突如としてバルハルが何も無いところで顔面から転んだ。何が起こったか本人ですらわかっていないだろう。
「地に這い蹲うという屈辱を味合わせて欲しいんだけど、」
バルハルの背中に座るにぃつ
「どのくらい惨めになる?」
視線すら合わせられない。
立つことすらできない。
完膚なきまでの敗北だ。
「頑張ったんじゃない?人数集め」
「っっっっ!!!!」
「最後に言い残すことは?」
「········ありません」
先までとは違い青年の口調と声色になったバルハル。あの強気な態度や口調、声色はロールプレイングだったのだろう。にぃつはバルハルに無慈悲な一撃を後頭部から放ちバルハルを絶命させた。
「カバネ?ガンマ達も来た事だし、ゆっくりしよっか」
「·······椅子とかの用意はないんで、それでいいんだったら、」
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