煌びやかな水晶に透明な刺客
全てを見透かされたガンマの思惑、この言及は今後も幾度か続くのだろうか
「あぁ、逃亡したい」
ポーカーフェイスを保つのに気疲れし体をだらけさせながら向かったのは熱気と甲高い音に包まれた鍛冶場だ。
「よっ仕事を持ってきた」
「我はアマリリス戦の修繕に忙しい 時間は貰うぞ」
今修繕しているのはガンマも使用したアレクシカコスだ。これが無ければあの猛攻を防ぐことなんて叶わなかった、これが手に入ればどれほど良いだろうと少し考えた。
「いくら時間かけてもらっても構わねーよ 良い感じのタイミングで取りに来るからさ」
そういいガンマは2つの大袋を取り出した。鉄を叩いていたトゥーシューガァンはキリの良いところで手を止め袋の中身を確認した。
「ほぉ?ライトニングビートルか 投げナイフの素材に使えば最高品質の出来になる代物だ」
もう片方の形が歪になるほど入っている袋からは団栗が顔を出した。
「こいつは初見だ 千色のリスの団栗?なかなかにユニークなアイテムだ」
初見のアイテムに目を輝かせる鍛冶師。そんな鍛冶師にこいつのびっくり性能を話した。
「こいつはMPを注入できて注入した分だけトンデモ性能の飛び道具に化けるって感じだな MP効率はこのゲーム屈指の終わり方をしているが お手軽遠距離攻撃手段としては優秀だろ?」
「性能は聞くよりも見た方が早いな」
1つ手に取り自身のMPを注いだ団栗は少し青みがかった。トゥーシューガァンは親指と人差し指で摘むように持ち団栗の確認に入った。
「見た目は9mm弾と言ったところか 説明文を読む限り速射性というのは少し妙だな。つまりこれは武器に投与することができる特殊アイテム。この先様々な素材が手に入れば銃を作ることも夢じゃなくなる。引き金を引くことで放たれるタイプではなくMP装填を発車のトリガーにすることで」
早口で何を言っているのかあまり分からないが、こういうのはプロに任せるのが得策だろう。
『まぁ俺も気になってはいた 聞き取れた中に速射性は妙って言ってたけど そこは弾速が上がるとかを記載すべきだと感じた。実際弾速は上がり貫通力も上昇している。ということはこれはそもそも連射することを前提として作られているアイテムってとことか?』
2人とも考え込むように顰めっ面をしているが我に返ったトゥーシューガァンがガンマに本来の目的を伺った。
「っと我としたことが 客人を置き去りにし1人で考え込んでしまった。それで?依頼の方は?」
職人の顔つきになったトゥーシューガァンに依頼した内容は至極単純なものだ。
「そりゃあこいつらを組み合わせたお手軽遠距離攻撃手段を作って欲しい!ライトニングビートルとこの団栗のMP装填を組み合わせればとんでもねぇーアイテムになるだろ!」
目を輝かせながら言う辺り結局男の子なのだ。最強とかそういうのに憧れるのは世の男子の摂理というものだ。
「良いだろう その仕事我が引き受けた。ただし条件がある」
「いいぜ?内容を聞こう」
「条件はただ1つこれを伝令神のクランに情報として落とす これを許可すること。素材を横流ししたり伝令神に渡すこともしねぇ。あくまでも渡すのはこういう存在があるという情報だけだ 外部に流すかはうちの団長が決める」
「そのくらい覚悟して持ってきてるからな問題ねぇーよ」
「では交渉成立だ」
2人は固く握手を交わした。職人が客を裏切るはずがない。さらにトゥーシューガァンは情報クランの幹部でもある。筋が通っていないことをすれば情報クランの名が廃り信頼もガタ落ちだ。だからこそトゥーシューガァンは信頼たるという自信があった。
「さてと 今度こそ攻略の再開だな」
ガンマが次に向かった場所はあのクソエリアを大回りし勇気の花畑の更に先、岩肌に囲まれた洞窟エリアだった。
「ここが次のエリア――古来の晶洞か」
水晶が無数に群生し洞窟内だが外と変わらないほどの明るさがあった。
「陽の光ってのは目が痛くなるが 水晶の輝きは目に優しい。今の俺にとってはめちゃくちゃありがたい.......」
アマリリス戦からほとんど寝ずにプレイしている弊害である。
「さーて、ここはクソエリアじゃないことを祈って、」
中は変わらず水晶によって光源が確保された洞窟、足音が響き人が増えたかのように感じる。
「来たな」
カサカサという音が微かに聞こえた。常人なら聞き逃すほどに小さな音だが聞き逃すはずもない。隠密系のモンスターなのだろうが、生憎相手が悪すぎた。鳴き声を上げながら飛びついてきた何かをガンマは最低限の動きのみで躱しメイスを叩きつけた。
「うぉらよ!」
奇怪な叫び声を発したモンスター。絶命したのだろう、姿が顕になり粒子状になって消えていった。
「なるほど 隠密の蜘蛛 名前の通り姿を隠しプレイヤーを奇襲する厄介なモンスターだな。だけど悪かったな それの専門家なもんでね」
モンスタードロップは何も無かったがこの洞窟の生態系が何となくわかった気がした。
『まだ確信は無いが この微かに聞こえる音の正体はおそらく』
シャー!
「やっぱりな!」
先程よりも遥かに隠密性が増した隠密の蜘蛛、ガンマは事前に1つの考察を立てていた。
「1匹目は俺を油断させるための陽動でしかない 本命の隠密部隊を隠すための捨て駒だな?賢い真似するじゃねぇーか」
音的にかなりの勢いで飛びかかってきたのだろうが地面がエグれたりしている様子が無いことから威力はお粗末ということが分かった。耳をすませば聞こえる音、それに頼りきった戦術の強制はかなり厄介だが、痕跡は音だけにあらず
「陣形の整え方までお粗末だな。セオリー通りの動きしかできない奴に俺を殺せるわけがねーだろ」
足の本数から足音を逆算し推定15匹に囲まれていると判断したガンマはスキル――跳躍を使い洞窟の天井まで跳んだ。
「歯食いしばって踏ん張れよ?!――鋼鉄の震打!!!か〜ら〜の〜?」
周囲に衝撃が伝わり十数匹の隠密が解かれ地面へ落下を始めた。
「鉄槌旋打!!」
ブレードキルの様に地に落ち始めた蜘蛛達をグルグルと回転しながら横っ腹や顔面にメイスを叩き込んだ。回っているせいで視界は終わっているがこういった一掃できる敵に対してはAOEは効果的だ。
「大体片付いたな あとは」
隠れている意味が無いと踏んだのだろう。少し大きめの隠密の蜘蛛が降りてきた。
「悪いけどでかくなった程度じゃ何も変わんねーな」
言葉通り隠密の蜘蛛は抵抗も虚しく叩き潰された。他の個体よりも経験値量は多く群れのリーダー敵存在だったことは間違いないだろう。ドロップアイテムとして――隠密の糸なる物を落として行った。
「さーて 入口付近でこの交戦具合 この先何が待ち構えているか楽しみだな」




