#23 前世チート 失敗
行くか行かないかの話じゃなくなってきた。これ、行けるか行けないかだ。魔法を使う計算ってなんだよ……
次はショルナにもっと話を聞かないと。人間関係に力を入れていなかったことが悔やまれる。ショルナを教室で見たことがなかったのは個人教師の先生、つまり家庭教師的な人に教わっていたのだろう。やはり神殿教室の教育機関としてのレベルはそこまで高くない。貴族が通う前提の学園入試なのもあるだろうが。
「ショルナ先生!」
「何よその呼び方」
別に良いけど、と言ってショルナは俺の方に椅子を出してくれた。
「私、この後すぐ個人指導があるの。あんまり長くは話せないわ」
「この間言ってた、魔法を使う計算について教えて欲しいんだ」
「本当に勉強が好きなのね?」
「そこそこ」
「まあいいわ。例えば……」
ショルナは魔法で水の玉を出して、放り投げた。
「今、水はどんな軌道で飛んだか分かるかしら」
「石投げたときとかと一緒だよ」
放物線のジェスチャーをした。
「書いてみなさい」
黒板の前に立って、チョークを渡してきた。
「勝手に使っていいの?」
「主は何人も学びを妨げないわ」
……前世で絶対やってるはずなのに、覚えて無いなあ。とりあえず十字線を書く。
「……?」
二次関数ってやつだよな。1のとき1×1、2のとき2×2で……点をとって滑らかに繋いでいく。たしか拡大と縮小でどんな放物線でも一致するはずだから問題ないはずだ。
「えーっと、こんな感じ?」
全然違う、と呟かれた。あれ?と思ったのも束の間。
「……あり得ないわ!」
ショルナは絶叫した。
「なんで、上下逆なのよ!」
◇◇◇
「あんた変よ!どんなふうに考えたらそうなるのよ!」
丸暗記って悪の文明だな。
「誰ですか!こんなに騒いで……ショルナさん?」
「あ、すみません、リー先生……カージ、もう授業始まっちゃうわ」
黒板は消しといてね、と言ってショルナが去ろうとしたとき、リー先生?…がそれを止めた。
「あら、あなたは?」
「カージだよ!ショルナせんせーが計算教えてくれたんだ」
教師は黒板と俺を交互に見比べた。
「カージさん……今、おいくつですか?」
3本の指を立ててみせた。
「リー先生、カージも一緒に授業できないかしら?」
「……直前期に何言ってるんですか。確かに非凡な子のようですが、私の仕事はショルナさんに勉強を教えることです」
「ねえ、カージは教会に来ないの?教会の子になれば、来年私のあとにリー先生が個人授業できるんじゃない?」
「あまり勝手なことを言わないでくださ……」
「俺は教会の子にはならないよ」
「……そう」
ショルナはもったいない、とでもいうような目でこちらを見ていた。呆れたリー先生に半ば無理矢理連れて行かれるときもまだ目が合っていた。
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