#17 生活魔法 後編
水の玉がぷかぷかと浮かんでいる。浮いている状態で召喚できたのは操作するのに都合がいいかもしれない。浮いている状態を維持している感覚があるので気を抜くとびしょ濡れになりそうだ。
俺が移動して水の玉との距離が変わると支えている感覚も変わるのだが、水の玉は動かない。遠ざかると存在しない筋肉がプルプルと震えるような感覚がする。付いてきてほしい。
この水もしまい方が分からない。畑でやればよかった。誰か呼んでバケツでも持ってきてもらうか?……いや、勝手に魔法を使ってることはなるべく言いたくない。家族ならともかく、ジルコに告げ口されると面倒くさそうだ。
……と思った瞬間、窓から銀色の風が見えた。母さんの呼ぶ声がする。
「カージ、魔法使いの方が見えてるわよ」
「今ちょっと忙しい!」
慌ててそう言ってみたはいいものの、どうしたものか。バケツ、頼めば良かった。冷静に考えて生活魔法を使った程度で大事にはならないだろう。ジルコの話が長くなるかもしれない、程度だ。素直に聞けばよかった。餅は餅屋だ。失敗した……
しばらく途方に暮れていると、窓を叩く音がした。
「カージ君、何やってるんだい?」
「ジルコ、たすけて……」
「呼び捨て⁉︎……いや、まあいいけど。何があったんだ?」
窓の隙間から銀色の砂が吹き込んできたかと思うと、ジルコはいつのまにか部屋にいた。銀色の風に見えていたものは砂嵐だったのか、と思ったがそんなことを考えている場合ではない。
「おー、水だ。生活魔法だよね?」
「うん。でもこのままだと部屋がびしょびしょになっちゃう……」
「今は浮いてるから問題ないよ。動かせる?」
俺は首を振った。
「今って水を外側から支えてる感覚だと思うんだけど、そうじゃなくて水そのものを動かすんだよ。」
多少水滴が落ちてもいいから、というので、思い切って力を抜いてみたところ、水の玉は地面スレスレで止まった。先ほどまでよりもやや不定形に思える。
「そのまま外に捨てに行こうか」
水の玉は付いてくるようになった。
水を畑に捨ててから改めてリビングの机でジルコと向き合った。平民の家に机は1つしか無い。
「いやあ、君の年相応な姿がみれて嬉しいよ」
ジルコは堪えきれないとでもいうように笑っている。そんなに面白いか?中身転生者の慌てふためき様がよ……
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