#14 町
父さんは家からずっと俺を抱きかかえていた。確かに父さんはただでさえ巨体なのだから子どもに歩幅を合わせるのは難しいだろう。
大きな車輪の跡のついた大通りの両側には店が立ち並んでいる。店の看板は覚えた字でほぼ問題なく読めた。ときどき父さんに聞いて合っているか確認している。
しばらくして、大きな扉のある建物の前で父さんが立ち止まった。
「ここが父さんたちが仕事を受けるところ、冒険者ギルドだ」
そう言って重たそうな扉を片手で開けて入っていく。
昼間の冒険者ギルドは心地良い程度に薄暗い。人も想像していたよりも少なく、カウンターの向こうで職員らしき人があくびしている。
……と思った瞬間、酒の臭いがした。
「お?誰かと思えばガルドじゃねぇか……ガキ連れて冷やかしか?」
「まあそんなところだ」
父さんは俺を持ってる方の手を遠ざけながらそう答えた。
「へぇ、一体何人目だ?前のヤツは農家にしたくせに?今度は冒険者にするのか?」
「一体何の話だ」
父さん、あんま反応しない方がいいんじゃないか。
「お前もかわいそうだなぁ、ほんのちょっと順番が違っていれば、今ごろ貴族の家にいたかもしれないのに」
酔っ払いははっきりとこちらを見ながらそう言った。
今家にいる兄さんより上の兄弟が養子に行った話をしているのか?
「昼間っから酔っ払ってるやつはさすが言うことが違うな」
父さんは酔っ払いを無視してカウンターの方に進んだ。俺が振り返ると目が合った。口元はニヤニヤしているのに、目は笑っていない。こんな悪意を向けてくる人間の目が笑っていても困るが。
「すまん、初級者向けの魔物だか薬草だかの図鑑あるか?」
父さんはカウンターでそう頼んだ。少々お待ちください、と言われてしばらく経つと、いくつかの本が出てきた。
「いくらだっけこれ?」
「冒険者の方は一律1冊小銀貨1枚です」
「買える冊子ってこれだけか?」
「確認します……冒険者向けの冊子はこれで全部、一般向けのものがあと2冊ありますね」
「1冊ずつ全部くれ」
「かしこまりました」
そういうと父さんは小銀貨4枚と銅貨10枚を出した。そういえば通貨を知らない。銅貨10枚で小銀貨1枚相当っぽいが、銅貨が1種類かどうかもわからないしな。
「カージ、これはお前のだぞ」
「えっ」
「スキル鑑定祝いだ。文字、好きなんだろ?」
文字が好きというのはどういう状態なのかよくわからないが、そういう認識なのか……
「うん、はやく読みたい!」
「じゃあ、もう帰るか?」
「うん!」
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