#12 神殿教室
「あなた、だれ?」
「何さい?」
「ねー、あたらしい人?」
「チビ!」
部屋に入ると人がたくさんいた。この子たちが『神殿の子どもたち』なのだろう。
「あー、俺3歳」
「まだ子どもじゃん!」
どう見ても6歳かそこらの子どもに言われた。
そうこうしていると神官が来た。
「今日は計算をやりますからね」
子どもたちからえー、という声が上がる。俺も声に出しかけた。ハズレだ。
幸いなことにこの世界で使われているのも10進数だ。前の世界の数字とややこしかったりもしない。が、そろばんのようなものを渡された。玉が10個ある。使った方がいいのか……?
「君、名前は?」
「カージ。近くに住んでるの」
「そうか、今日が初めてかい?」
「うん」
「そうとは思えないよ、お父さんかお母さんに教えてもらったのかい?」
お父さんとお母さん、と神官が言ったとき、周りが一瞬静かになった気がする。
「いや、全然……」
気まずいって。だから外部の人全然来ないんじゃないのか?
ほどほどに計算を済ませて時間を潰した。しかしそろばんがあるのに紙とペンがない。計算、手を抜かなくても怪しいかも知れない……
授業の始まりと終わりはあまりはっきりとは意識されていないようで、途中で来る人や帰る人もいた。全然授業に来ないやつとかも居るんだろうな。
次の授業がいつ始まるかもわからないので、俺は神官に話しかけにいった。
「ねえ、神官様。俺、文字読めるようになりたいんだ」
「自分の名前は書けるかい?」
「いや、全然。俺、カージっていうんですけど、なんて書くか分かりますか」
「カージ?うーん、珍しい名前だから正式な表記は戸籍見ないと分かんないけど、とりあえず音はこうだよ」
そういって文字を見せてくれた。ミミズでも蛇でもない。文字だ。かっちりした書体と日常用の書体がある感じだろうか?
夕方まで神官に文字について聞いた。文字には神聖文字とそれを簡略化した日常用の文字があるらしく、前者は膨大な量の合字や未解読の文字(合成スキルが神官に読めなかったのはそのせいのようだ)が含まれていると教えられた。おそらく父さんと母さんが書いた俺の名前は神聖文字だ。戸籍は神殿が所持しており、神聖な場では人名は神聖文字で表記する。そこで俺の名前の書き方はおぼえたが、音写することはできなかった、ということだろう。普段名前を使うときは音写した日常文字でいいらしい。
日常文字を一所懸命に憶えてから家に帰った。
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