07.黒船事変(戦闘)
「侵入者だー!!捕まえろ!!」
「なんだこいつら!?どっから潜り込みやがった!!」
フェニィとヒナが、弾丸のような速度で船内を制圧しにかかる。
否──、正確には、ヒナが。ほとんど一人で次から次へと現れる手下どもを倒して行った──。
そんな中、ヒナの一歩後ろを走るフェニィはと言うと……。
「ヒナ!お前、ずりーぞ!!一人で全員倒す気か!?!?」
「…遅れを取ってるフェニィが悪い。悔しかったら、私より早く私より先に敵を倒すべき。それが出来ないうちは、私の後ろで守られているといい──」
「こんにゃろ〜!!」
事実、爆走するように走るヒナを大の大人数人がかりでも制圧する事が叶わない…それどころか、向こうは武器を手にしているにも関わらず素手のヒナは凄まじい速度と高度なレベルの格闘技で次々なぎ倒していく。
〝先祖返りの能力〟抜きにしてこの強さなのだ──全くもって、ヒナの実力は底が知れない。
「ヒナ!!わかってると思うけど、いざと言う時まで〝能力〟は温存しておけよ!!いつどんな厄介な奴が現れるかわかったもんじゃねぇから──」
「…わかってる。それより、ひよこの心配をするべき。フェニィは戦わなくていいから、彼女の居場所を探し出して。」
「いちいち勘に触る言い方だなぁ!!言われなくてもさっきから〝気ぃ張って〟探してるケドいねぇんだよ!!」
フェニィは祖父──スザクから教わった、気配察知の〝勘〟を使っているが、どうやら近辺にひよこの気配はいない様子だった。
この察知能力はヒナ自体も使用が可能ではあるが…繊細な集中力が必要とされる為、出会い頭に戦いながらの使用は難しい。
故に──、不本意ながらフェニィはひよこの捜索担当を担っていた。
「っ!!ヒナ!止まれっ!!」
「…いた?」
いかにも怪しげな扉を見つけ、そこで立ち止まるフェニィとヒナ。
この部屋から溢れ出る強大な〝気配〟に反応して、フェニィは立ち止まった。
「……入るぞ」
「…うん」
ガチャリ──と、ゆっくりドアノブを回す。周囲を警戒しながら、部屋の中を探索し始めた。
「…私の気配察知には引っかからない。フェニィは少し、修行不足な気がする……」
「んなわけねぇよ!!…おっかしいな、ここから〝匂う〟気がするんだけど…」
「〝匂う〟…??」
辺りを見渡し、やがてそれらしい木箱が置かれている事に気が付く。
「この中かな──?っ!!おい!ヒナ!これ!!」
「どうしたの…フェニィ?ん??これは──〝桃〟??」
そこに入っていたのは、少しサイズが大きいとても白い美味しそうな桃だった。
「…………フェニィ、食い意地を張るのは帰ってからにすべき──」
「違っげぇわあほ!!…これ、じいちゃんが大事にしてた何かのお守りじゃなかったっけ??確か──〝不老不死の秘薬〟、、とか何とか??」
その言葉に、首を傾げるヒナ。
「…私はよく知らない。でも、フェニィの勘は正しいと思う。…不服だけど、確かに普通の桃にしては立派すぎる」
「だろ!?…一言余計だけどな。とりあえずこれ持っといた方がいいよな、どうする?」
「私は戦わないといけない。フェニィはその桃のお守りをするべき。これが最善の配役」
「イチイチ勘に触る言い方するな……わかってるよ。ヒナにこんなもの持たせたら、すぐにどっか無くしそうだしな──」
「……フェニィはもう少し立場をわきまえるべき。フェニィに出来て、私が出来ない事は無い……」
少し、ほっぺを膨らませて対抗心を燃やすヒナ。どこかに無くしそうというフェニィの言葉は意外に図星だったのかも知れない──。
「んじゃ、行くぞヒナ、すぐに──」
「どこに──行くつもりだ?あの世か?」
そう言って、部屋の外へと出た途端銃口を脳天に突きつけられるフェニィ。
瞬時に状況を悟ったヒナはその場に立ち尽くして動けない。
「いい判断だ小娘──もし一歩でも動いていれば、このガキの脳汁が部屋中に飛び散るところだったな……」
(何──この男?構え一つとっても隙がない…実力差がありすぎる……!!)
珍しくヒナの頬を、冷や汗が滴り落ちる。
「さて──お前たち。少し外の空気を吸おうじゃないか??」
「私たちを、どうするつもり──??」
最悪の状況の中、引き金を引かれないギリギリの立ち位置で強気の姿勢を見せるヒナ。
「安心しろ──殺しゃしねぇさ。最も──大人しく俺の言う事に従うのならばな」
「……」
不気味な笑みを浮かべる黒装束の男に対し、警戒しながらついて行く二人。
嫌な予感を抱えながら、フェニィはヒナに指でコンタクトを飛ばしていた──。




