06.黒船事変(潜入)
「……っ──!!」
気が付くと、そこは真っ暗な箱の中。猿ぐつわされている自分の姿を認識して、暗闇の中瞬時に私は悟った──。
「これは…まさか!!奴隷船──」
昔、島民の一人に聞いたことがある。かつて奴隷だったという農夫の話だ。
自分は嵐の中、船が転覆して運良くこのヒノトリ島に辿り着いたが、そこに至るまでの彼の人生は地獄のどん底のようなものだったらしい──。
ある日突然攫われ、子供ながらに親元を離れた彼はそれから十年間奴隷として過ごしていた──。
毎日甲板を掃除し、潮風に煽られ、食事も満足の行くものは無く、お給金だってびた一文支払われない。
ただ雇い主が気の済むまでボロ雑巾のようにこき使われる毎日だったという──。
そんな彼の語りの出だしはこうだ。
『ある日突然狭い箱の中に入れられて、猿ぐつわをさせられていたよ──』
(い、今の私じゃない──!!!!!)
あぶら汗を垂らしながら、ひよこは心の中で静かに祈る──。
(お願いニィちゃん──助けに来て!!)
……。
……。
ヒノトリ島最北端──クチバシ港。
見慣れない不審な飛行船を目の当たりにして、フェニィとヒナの二人は乗組員の様子を伺っていた。
「どうやら奴ら──もうこの島を出発するみたいだぜ…観光にしてはずいぶん短いと思わないか?ヒナ──」
「第一、こんな島に観光くる人もそうそういないけど──おじい様が戻ってくるタイミングに合わせて出発するのが気にかかる。やましい事があるとしか思えない──」
ヒナの言う通りだ──偶然にしては時間がピンポイントすぎる。奴らが現れた時間も立ち去る時間もまるで、〝番鳥スザク〟と呼ばれた祖父を避けているとしか思えない動向だった…。
猶予は、残されていない──。もしもひよこがいるとすれば、あの船の中なのだろうから。
人一倍責任感の強いあの子なら、不穏な動きをする奴らを追いかけようとして捕まった線も十分に有り得るのだ。
「行くぞ──ヒナ。ひよこを探し出して、あいつら全員締め上げてやる!!」
「同感──なんの目的があってこの島に来たかわからないけど、この島で好き勝手する奴ら全員ただでは済まさない──!!」
二人揃って、一歩も引く気配が無い──これもまた〝革命家の性〟というものなのだろうか──?
何はともあれ、フェニィとヒナのひよこ捜索が始まった──。




