05.謎の黒船
昨日の夜から、ひよこの姿が見当たらない。
この島で行方不明という事件は珍しく、朝からその話題で皆持ち切りだった──。
「ヒナ、そっちの方はどうだ──?」
「駄目、いない。ひよこが居なくなる事が今まで無かったから…。どこかへ出かけただけだと思う?」
「それは無いな…。ひよこは律儀だから、必ず何処へ行くにも書き置きの一つは残してたし──考えたくないけど、嫌な予感がするんだ」
数日前にすれ違った男──今思えば、彼は何か不自然だった。
ヒノトリ島は特殊な気候と海流の影響で、外部から来る人間はほとんど居ない──つまり、言い換えればこの島民は皆顔見知りということになる。にも関わらず、フェニィが全く見覚えのない男が島にいるのだ。
胸騒ぎが、強くなる。
「なぁヒナ──見慣れない飛行船があったって言ってたよな…?それってどこにある──?」
《ヒノトリ島》──北端に位置する〝クチバシ港〟。
ヒノトリ島から入出航する船は全て、ここに泊まっている。海上船、飛行船両方共だ。
その一角に──確かに見慣れない、黒い飛行船がそこにはあった。
「おら!さっさと荷物を運べ──あと1時間で出発するぞ!!」
黒装束の、イカつい男が奴隷らしき者たちを取り仕切る。
ふと──そこに。
「ベルガー。さっさと支度を済ませろ。あと一時間の内に奴が戻ってくる──」
「〝番鳥スザク〟──ですか?〝あのお方〟が手を出すなと言ってたって言うこの島を取り仕切る男…そんなにやべぇ奴なんですか??」
どこか遠くを見据えるように、もう一人の黒装束の男は答える。
「ああ──。現役を退いたとはいえ、その力と影響力は今この世界でも五本の指に入る程だろうな…。この俺でさえ、まともにやり合って勝てるかどうかの化け物だ──」
「お頭が…ですか??とんでもねぇ奴ですね…そいつぁ──」
空いた口が塞がらないような部下を尻目に、黒装束の男が物思いに耽る。
「まぁそれも、もうしばらくの間までだ。こいつがあれば、あの方は更なる高みへと登り詰める──。それこそ、この世の全てを支配出来るまでにな──」
黒装束の男が、コンコンッと木箱の積荷を一つを叩く。
「そいつがお頭が探していたっていう──例の〝秘薬〟ですか??」
「ああ──。お前も聞いた事があるだろう…〝先祖返りの能力〟だよ。」
先祖返りの能力──稀に、前世や先祖の能力を受け継いだまま生まれる現象の事である。
魔法のような力を操ったり、動物のように翼を自由自在に操ったりする者がいるが──それらは総じて先天的に生まれ持った者たちしか能力を扱えない…。
「生まれ持った奴にしか扱えない能力──それが先祖返りの能力だ。だが、この秘薬は後天的にその力を得られる代物らしい…。しかも、中に入っているのはそんじょそこらの低レベルな能力とは訳が違うそうだぜ…?」
「い、一体…どんな能力だって言うんです…??」
手下の男が、生唾を飲む。
その様子を面白そうに、黒装束の男は答えた──。
「世界のありとあらゆる王族が探し求めた──世界最強にして、伝説の先祖返りの力…。〝不老不死〟の能力が秘められた、《不死鳥の先祖返り》の秘薬だ──」




