第18話 Embarkment
私はベッドの上に寝ていた。
「おっ。目覚ましたか」
まだ胃に鈍い痛みが残っている。
起き上がると、部長の海馬悠が側に座っていた、
「ここは...」
「保健室だ。気絶してたっぽいから大事をとって保健室まで運んだんだ」
「オリバーはどこですか?」
「ああ、オリバーは近くの病院でCT検査受けてるよ。本人は大丈夫って言ってたんだけど。なにせあんな風に蹴られたんだから。君もよくやるよな」
海馬が笑う。
「そういえば、勝ったのは誰なんですか?」
「そうだ。それ言おうと思ってたんだ。古賀と、オリバー。そして首席さん。あと稲越薫だったかな。知ってるか?」
私は目を大きく開いて驚いた。遥が勝ったのは少し意外だし、嬉しかったが、それよりもその次の名前だ。
今朝ちょうど私を注意してきた学級委員長の稲越薫。あの子が「戦研」に入るだなんて。ましてや練習試合で勝利したんだなんて想像し難い。
「同じクラスなんです」
「マジ?!ていうことは4人は全員一年一組なのか。すげえな。四人とも体力、技術力、戦略力に非常に長けていたけど、特に君に関しては僕たち先輩を凌ぐ実力だったよ」
そこまで褒められると照れるものがある。
海馬いわく、入部は私たち四人で決定だそうだ。一ヶ月後に同じ世田谷区内の高校と練習試合があり、そこで私たち四人は初めて実戦デビューするらしい。
「たったの一ヶ月ですか」
「ああ。なかなか厳しいだろう。しかも実弾演習だ」
「大丈夫なんですかそれ」
不安そうな顔を作り、胸の奥まで興奮をぐいっと抑える。やっと対人で実弾が使えるのだ。
「問題ない。相手の高校も一年生のスクワッドを出すからな」
「ていうことは上級生も出るってことですか?」
「勿論だ。俺たちも出るぞ」
私は咄嗟に口を抑える。にやけていることをバレないようにするためだ。この無性にムカつく部長を早く叩きのめしてやりたい。
「そうですか...それに向けて精一杯頑張ります」
「ああ!期待してるよ」
そう言って海馬は保健室から出て行った。
*
家に帰ると、頭に包帯を巻いたオリバーが出迎えてくれた。
「あんたそれ大丈夫?!」
私の胸が申し訳なさで満たされる。
「ああ、ただの擦り傷だから大丈夫だって」
「そう....それならいいわ。それよりもあんた!なんで銃撃とうとしたのよ?!フェアプレーの精神のかけらもないじゃない!」
私の頭に血が脈打つのが聞こえる。オリバーは無視して冷蔵庫を開ける。
「ビール飲もうっと。バドワイザーじゃんやったぜ」
「ちょっとそれ私のよ!!楽しみにしてたの!!勝手に触んないで!!」
「この頭の傷をつけたのは誰だろうな〜」
私は歯をくいしばる。確かにオリバーに怪我を負わせたのは否定できない。
「あーもう!好きにしなさいよ!!」
「みんなの入部成功に、乾杯!」
オリバーが豪快に私のバドワイザーをラッパ飲みする。
「くぅ〜。このために生きてるわ〜」
私は全力でオリバーを睨みつけた。
「冗談だって。まだ半分余ってるよ」
笑いながら口をつけたバドワイザーを渡してきた。
「いや...やっぱ大丈夫...今日はビールの気分じゃない」
「そうか」
オリバーはそう言って飲み干した。
今度好きを見つけて後頭部をバドワイザーの瓶で殴ってやろう。
こうして部活の初日が終わったのだ。




