第19話 Piercing
翌朝、教室にて。
「おっはー遥!」
「あっ。おはようゆりな。昨日大丈夫だった?」
「全然平気。でさ、昨日の練習試合、どうだったの?」
「その話がしたかったの。私の最初の位置がゴルフ場脇の林で、近くの3人を頑張ってやっつけたの。そしてもっと奥に行ったら、1人の選手がすでに6人も倒してた」
「その子が稲越遥?」
私は周りに本人がいないことを確認し、声を小さくして聞いた。
「多分そう。木の陰からひっそり見てたんだけど、急にこっち向いて走って来たの」
「怖〜」
「でもその子すっごく足速くて、その上、走りながら撃ってくるの。私太ももの裏に一発受けちゃった」
「痛かった?」
「いや、痛くはないの。でも急にスーツの足の部分が動かなくなっちゃって。で、つまずいて転んじゃった」
思った通りだ。
「それでどうなったの?」
「倒れた時に近くに隠れてた敵がちょうど出てきて、その人を撃って試合終了。結構危なかった」
「多分その時私とオリバーは死闘を繰り広げてたわよ。ね?オリバー?」
私は遠くの席に座るオリバーの方を向く。
「なんだ?なんか用か?」
オリバーが不機嫌に返す。
「いや、なんでもないよ〜」
*
地学の授業にて。
「ーなんでこうなるか説明できる人〜」
1番前の席に座る学級委員長の稲越薫が手をまっすぐあげる。
「よし。ええと...稲垣」
「はい。P波は縦波、S波は横波だからです。一般に、縦波の方が速いです。したがって、観測地にはまずP波が来て、遅れてS波が来ます。その時間差から、どの地点にどの時間でS波が来るかを計算できるという仕組みです」
「完璧だな。予習でよくそこまで理解できたもんだ」
私は後ろから稲越薫の後ろ姿を見つめる。
それにしてもあの子が昨日ペイントボールで敵をボコボコにしてたのは信じられない。
直接話を聞いてみるか。
休み時間、稲越薫の席へ行く前に、あっちから私の方に来てくれた。
「古賀さん」
相変わらず綺麗な子だ。目が大きくて肌が透き通ってる。
「ん?なに?」
「昨日のことで話したいことあるから来てくれない?近衛さんも」
「いいけど...」
私と遥は稲越薫の方についていった。教室がざわざわする。
*
私たちは人気の少ない二号館裏に連れていかれた。
「で、話ってなに?」
私が切り出す。
「そんな大したことじゃないの。でもあんまり他の人には聞かれたくなくて」
私は首をかしげる。
稲越薫がモジモジしながら、顔を少し赤らめて言った。
「よかったらさ...今日私の家、来ない?」
「「えっ?」」
私と遥の驚きがシンクロした。
「忙しかったらいいの。でもあなたたちも『戦研』に入るんでしょ。なら見せたいものがあって」
「私はいいけど、遥は?」
「私は今日暇だからオーケーだよ」
「そう、よかった。じゃあ放課後一緒に帰りましょう」
それだけ言って稲越薫は去っていった。心なしか、スキップしているようにも見えた。
「ふ〜怖かった〜」
私は腰を抜かす。
「ね。なんか叱られるのかと思ったよ」
「でもさ、さっきの委員長なんか可愛らしかったよね」
「それ私も思った。ああいう一面もあるんだね」
「多面的すぎるよ。才色兼備でクール。運動神経は抜群で可愛い一面もあり。全然わかんないよ〜」
でも、不思議と、稲越薫の家に遊びに行くのは嫌な感じはしないのだった。




