表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/22

第10話 Lorentz Force

四十年前までは世田谷区内に高校が沢山あったらしいが、少子高齢化に伴っていくつもが合併したそうだ。

世田谷中央高校はその名の通り、世田谷区の中央に位置する高校だ。

周囲の10校近くが合併して、校舎も新たに建設した新しい高校である。生徒数も三千人と桁違いに多い。

本校舎は12階建てとなっており、地下にプール、サッカー場、テニスコートがある。

地上には野球のグラウンドや小さめのゴルフ場があったりと、施設の充実ぶりは日本一だ。

だから部活動はものすごく充実している。



私と遥は吹奏楽部を見学(?)した後、他にも色々と部活を見に行った。


テニス部、陸上部、合唱部、バレー部、etc.

しかし、どれも私たちにとってイマイチだった。


疲れ果てた私たちは校舎外のベンチに座った。


「なんかどれもしっくりこないね〜」


「うん、そうね」


それ以外に話すことが思い浮かばない。

そして気まずい沈黙は続いた。


その沈黙を忽然こつぜんとして破ったのは重々しい轟音だった。


「なにいまの?」


遥は私に聞いてくる。


私はこの音を知っていた。しかし、こんなところで聞く音ではないはずだった。


「ちょっと見に行こう!」


今度は私の方が遥に引っ張られ、音のした方へ向かった。

音がしたのは間違いなくグラウンドからだった。

そして私たちがグラウンドに着いたとき、ちょうど2回目の轟音が響いた。地面が少し揺れる。


三脚の上に設置されている白くて細長い直方体型の物体。グラウンドの真ん中に佇んでいたのは間違いなくGarmamentガーマメント社製のレールガン、Echidnaエキドナだった。


ガーマメントは2040年代から画期的な兵器生産会社として躍進した企業だ。

数あるガーマメントの兵器のなかで抜きんでていたのがこのEchidnaエキドナだった。


高威力で高精度。その上、小型(他のレールガンに比べて)という革命的な性能は過去に例を見なかった。欠点は発射音が大きいことだが、弾が音速の17倍で出されるときに発生するソニックブームを搔き消す技術は今のところ確立されていない。


私がEchidnaエキドナを見るのは2回目だった。

初めてEchidnaエキドナを実戦投入したのがジ・エイスだったのだ。


作戦行動中に、ミサイル兵器が敵によって撃墜されてしまうことが発覚した。通常のミサイルだと相手の高性能レーダーに捕捉されてしまうのだ。したがって、レールガンによる攻撃が有効だと考えられた。秒速6キロメートルで発射し、上空1000kmまで上げて、敵に弾を降らす。もはや弾道ミサイルなのである。終端速度は秒速7km。敵に捕捉されずに攻撃する唯一かつ最適な手段だった。


Echidnaエキドナの使用は完全な成功を収めた。

結果として、Echidnaエキドナの威力と実用性は高く評価され、アメリカ、日本を含め世界中の軍隊に採用されることになった。


しかし、そんな兵器が高校にあることがまずおかしい。


私はすぐにグラウンドの中に入った。


「ちょっと!ゆりなさん!危ないよ!」


遥が戻ってこいという仕草をするが、私は合掌して謝り、Echidnaエキドナの方へ駆け寄った。


「ちょっと君!なに勝手に入ってるんだ!」


そう怒鳴りながら眼鏡の上に安全ゴーグルをかけた青年がグラウンドの外から入ってきた。勉強が出来そうな顔だ。多分年上だ。


「危ないってのはこっちの科白せりふよ!何でEchidnaエキドナを学校でぶっ放してるのよ?!下手したら誰か死ぬわよ?!」


私はそう応酬した。


眼鏡の青年はカッコつけて安全ゴーグルを外す。


「あなたは勘違いしているようだが。これはEchidnaエキドナであってEchidnaエキドナではない」


そう言って青年はニヤリとする。


「は?」


私は唖然とした。意味がわからなかった。


「つまりだな。このEchidnaエキドナは我々、先進戦略技術研究部が本物のEchidnaエキドナを真似て作った模倣品なのだ。威力も本物の100分の1に満たない。その名もEchidnaエキドナ世田谷ヴァージョン!」


「ダサッ」


思ったことをそのまま口にしてしまった。


「ふっ。この卓越したネーミングセンスをお前も否定するのか。つまらない奴らばかりだな」


青年は呆れたとでもいうように肩をすくめた。


「それよりもお前がEchidnaエキドナを知っているのが驚きだ。そうだな。我々の部室に案内しようじゃないか」


青年はそう言っててくてくとグラウンドの外へ歩いて行った。

私は遥を手招きした後、その青年に着いていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ