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負けヒロインは幼馴染  作者: 来留美


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6/7

6、負けヒロインを助けてくれたのは、、、

~前話あらすじ~

タマキはレイが用事もないのに自分の部屋へ来たことに期待してしまうが、すぐに自分が負けヒロインだと気付く。

そんなタマキに学校で事件が起きた。

ツキ先輩とタマキの嘘の訳あり写真が黒板に貼られていた。

誰よりも怒っていたのは、、、。

「誰だよ、こんな写真を貼ったのは」


 レイは低い声で教室を見渡しながら言った。

 私にはレイの表情は見えなかったけど、声で怒っているのは分かった。


 いつも怒らないレイが、ここまで怒るなんて驚いた。

 レイナも教室の皆に怒りながら犯人を探していた。


 私は写真を取ろうとした手をそのままに、どうすればいいのか分からなくなってうつむいてしまった。


 レイとレイナの怒る声が私の頭の中で繰り返される。

 クラスメイトだけじゃない。

 他のクラスの人達も集まってくるのが足音で分かる。


 恥ずかしい。

 やめて。

 これ以上、人を集めないでよ。


「やめてよ。もう、やめて」


 私はその場から逃げ出した。

 誰もいない静かな場所に行きたかった。

 走り出した私の後ろでレイが“タマキ”と呼んだ気がした。


 私は外階段へと向かった。

 誰もいない。

 静かな場所。

 落ち着ける場所。


 静かに泣いた。



 どのくらい経ったか分からない。

 でも涙は乾いていない。


 レイには嫌われた。

 レイナにも嫌われた。

 ツキ先輩は私に近寄って来ないようになるかもしれない。


 あんな嘘の写真で私は沢山のモノを失うんだ。


「写真なんて嫌いよ」


 私は小さな声で(つぶや)いた。


「それは言っちゃいけないよ」


 私の後ろから声が聞こえた。

 この声はツキ先輩だ。


「授業中ですよ」


 私は振り向かず、遠くの景色を見ながらツキ先輩に言った。


「それはタマちゃんもだよね?」

「私はいいんです」

「ごめんね遅くなって」

「いいえ、ツキ先輩が来るなんて思っていなかったので大丈夫ですよ」

「タマちゃん。振り向いてくれるかな?」

「嫌です。まだ乾いていないので」


 私の涙は、まだ乾いていない。


「それは困ったなぁ」


 ツキ先輩が、そう(つぶや)いた時、私は後ろから抱き締められた。

 私の好きな柔軟剤の香りがフワッと鼻に届く。


「タマキ」


 私はレイに抱き締められていた。

 どうしてレイがいるの?

 どうしてレイが私を抱き締めるの?


「だから振り向いてって言ったのに」


 ツキ先輩は今の状況を驚きもせずに話す。

 目の前で私、抱き締められているんだよ?


「えっと、彼がタマちゃんの居場所を教えろって言うから、全ての事情を聞いてから犯人探しをして、ここに彼を連れて来たんだよ」

「ツキ先輩。簡単にまとめましたけど、凄い事を短時間で終わらせたんですね?」

「まぁ、僕は名探偵だからね」

「それは否定しません」

「あっ、それと僕は恋のキューピッドでもあるからね」

「えっ、もしかしてこの状況を作ったのがツキ先輩だと言うのですか?」

「そうだよ。でも、いい加減こっちを向いてくれてもいいよね?」


 私は仕方なくツキ先輩の(ほう)を振り向く。

 レイに抱き締められて嬉しかったのに。

 まだ抱き締められたかったのに。

 レイは私から離れて隣に立つ。


「それじゃあ、簡単に全てを説明するよ」


 それからツキ先輩は説明をしてくれた。


 くしゃくしゃになった写真を手にレイがツキ先輩の教室に行った。

 すると、その写真はツキ先輩の教室の黒板にも貼ってあり、ツキ先輩は写真がフェイクだということを証明するために(すで)に動いていた。


 写真は三枚のものを一枚に貼り付けたものだと分かり、私が写っている部分にツキ先輩は見覚えがあった。

 写真部で撮ったデータの全てを見て、角度から犯人を割り出し、データの中に犯人が写っていた。


 それから犯人を捕まえ、学校へ報告をした。

 “いじめということになっているから、犯人は退学になる”とツキ先輩は言った。


「俺、何もできなかった」


 レイが悔しそうに言った。

 そんなことないよ。

 教室で私を守ってくれたじゃん。


「それは間違っているよ」


 ツキ先輩が、そう言いながら写真を取り出す。

 何枚もの写真は私とレイの写真。


「このタマちゃんはサッカー部を撮っていた時で、このタマちゃんは(きみ)を撮っていた時だよ」


 二枚の写真の私の顔は全く違う。

 真剣な表情は同じなのに、雰囲気や視線など何か違って見える。


「この(きみ)はタマちゃんが練習をしている(きみ)の姿を撮った写真で、この(きみ)はタマちゃんと会話をしていた時に僕が撮った写真だよ。タマちゃんも写っているね」


 レイの顔が全然違う。

 どちらも格好良いのに、私と会話をしている時は柔らかい表情。


「俺、バレバレじゃん」


 写真を見てレイは顔を赤くして言った。

 バレバレ?

 何が?


「タマちゃんは気付いていないかもね」


 ツキ先輩は苦笑いをしながら言った。


「ツキ先輩? どういうことですか?」

「僕は、ここまでだよ。後は彼から聞きなよ」


 そしてツキ先輩は自分の教室へと戻っていった。

 レイと二人きりになった。

 抱き締められたことを思い出すと恥ずかしくなってうつむいてしまった。


「今夜、一緒に『さんかく幼馴染』を見ないか?」

「えっ、でも、私、泣いちゃうかもしれないから」

「泣く? レイは、いつもドキドキして俺達幼馴染に似てるって言ってたけど?」

「私、最初しか見てなくて」

「俺は一話も見てないから一緒に見てみようよ」

「そうだね。今夜、私の部屋へ来てよ」

「あっ、うん」


 初めて私からレイに“部屋へ来て”って言ったかもしれない。

 私、恥ずかしいことを口にしちゃったよね?

 だからレイも顔を赤くして焦った(よう)に言ったんだよね?

お読みいただき、誠にありがとうございます。

ブクマやいいねなど執筆の励みになります。

~次話予告~

次は最終話。

レイとタマキの関係はどうなるのか。

そしてツキ先輩が撮ったレイとタマキの写真はタマキの宝物になる。

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