4、負けヒロインは幼馴染を撮るのは複雑
~前話あらすじ~
レイはレイナにもタマキと同じスクイーズをあげていた。
落ち込むタマキの前に現れたツキ先輩はタマキを助けてくれた。
ツキ先輩はとても優しい人だと気付いたタマキ。
「今日はサッカー部の写真を撮ろうか?」
写真部に入ってからツキ先輩の横で、いろんな部活の練習をする姿を見ていた。
ツキ先輩が写真を撮る姿を見てギャップに驚く。
いつもはニコニコしていて可愛いツキ先輩は、写真を撮る時は真剣な表情で残しておきたい瞬間を見極めて撮っている。
そんな姿を真似したいとさえ思わせてくれるほど、ツキ先輩の写真への愛は深い。
「ツキ先輩。どうしてスマホで写真を撮るんですか? 普通はカメラで撮るものじゃないんですか?」
「簡単に言えばお金が無いからなんだけど、でもね高いカメラで撮るから良い写真が撮れる訳じゃないんだよ。僕は、その人にとって大事な瞬間を撮りたいんだ」
「ツキ先輩って本当に写真が好きなんですね?」
「そうだね。写真は残るからね」
「忘れたくない想いが写真に残るんですね」
「そう。だからタマちゃんも写真を撮ってみてよ。残したい想いを写真に」
そして私はスマホでサッカー部の練習風景を撮る。
汗が滲む部員達の青春を残したい。
私は時間も忘れて撮っていた。
「そろそろ、部室に戻ろうか?」
ツキ先輩に言われて部室へと戻る。
「撮った写真はUSBに残して、スマホの中に写真は残さないでね」
「どうしてですか?」
「プライバシーの問題とかあるからね。タマちゃんのことは信じているけど、何かあった時の予防のためだよ」
そして私のスマホの中の写真はなくなった。
ツキ先輩は写真を見ながら良いものはどこが良いのか説明しながら褒めてくれた。
「これは、タマちゃんだよ」
ツキ先輩は写真を撮っている私を撮っていた。
真剣な表情で撮る私の写真は見ていて恥ずかしい。
「タマちゃんの一所懸命なところが伝わってくるでしょう?」
「はい。なんだか迫力が私の撮った写真と全然違います」
「撮り方も少しずつ教えるから、今はタマちゃんの思うままに撮ってよ。そんなタマちゃんの写真を撮りたいからね」
ツキ先輩はウインクをしながら言った。
私より可愛いが似合うツキ先輩を撮った方が素敵な写真が撮れそう。
「今日はバスケ部を撮ろうね」
いろんな部活の写真を撮っていたある日。
とうとう、その時が来た。
「バスケ部ですか?」
「あれ? なんだか嫌そうだね?」
「だって幼馴染がいますし、撮ってる姿を見られるのは恥ずかしいです」
「恥ずかしいことなんてないよ。タマちゃんはカメラマンだよ。みんなの想いを残す役目の大事なカメラマンなんだからね」
レイとレイナが仲良くしている所を見るのが嫌だ。
レイがレイナに優しく声を掛ける所を見るのが嫌だ。
恥ずかしいからじゃない。
本当はそれが理由。
「あれ? タマちゃんだ。写真を撮りに来たの?」
レイナが私に気付いて近寄ってきた。
「うん。スマホで撮るから自然に、いつもの様に練習をしてね」
「レイ君。タマちゃんが、いつもの様に練習してねだってよ」
私がレイナにスマホを見せながら伝えると、レイナが遠くにいたレイに言った。
「はあ? そんなの当たり前じゃん」
「当たり前ねぇ」
レイがドリブルをしながら近寄ってくると、レイナは呆れた顔で意味深に言った。
そんなレイナの表情を見て、レイはレイナの頭を乱暴に撫でた。
その二人を見ていると、胸がキュッと痛んだ。
『カシャッ』
シャッター音が聞こえた。
私のすぐ横でツキ先輩が私を撮っていた。
「ツキ先輩? どうして私を撮るんですか?」
「だってタマちゃんと幼馴染が一緒にいる時の写真を残しておきたかったからだよ」
「勝手に撮らないでくださいよ」
「それは無理だよ。タマちゃんが写真部に入った時に約束したじゃん。タマちゃんは僕の被写体になるって」
「そんな。ヒドイです」
「タマちゃん。僕を信じてよ。必ずタマちゃんの想いを写真にするから」
ツキ先輩が真剣な眼差しで言うから断れない。
でも私はツキ先輩を信じているんだと思う。
ツキ先輩は絶対に写真を悪い目的で使ったりしないって。
「さあ、頑張って良い写真を撮るぞ」
「タマちゃん。やる気満々じゃん」
私が気合いを入れて言うと、ツキ先輩はクスクスと笑いながら言った後、私の写真を一枚撮っていた。
そして私はバスケ部の写真を沢山撮った。
バスケ部の部員達が休憩に入ると、レイが私の所へ向かってきた。
そして私の隣に立つ。
「写真、楽しいか?」
「うん」
レイは体育館の時計を見ながら私に言った。
私も体育館の時計を見ながらレイに言った。
隣にいるのに視線は交わらない。
「今日、タマキの部屋に行ってもいい?」
今、タマキって言った?
私の部屋でだけタマキって言うのに、今日は学校でも言うの?
「えっ、あっ、うん。いいよ」
「窓、開けとけよ」
「また窓から来るの?」
「いいじゃん。窓の方が楽なんだよ」
「分かったよ。気をつけてよ」
「俺、タマのように手足は短くないから大丈夫だよ」
「もう! 身長が低いんだからレイより手足が短いのは当たり前よ」
レイが私の頭をポンポンと撫でて練習へと戻った。
私は、いつもの様にドキドキが止まらない。
「何、今の? レイ君と話してたよね。『さんかく幼馴染』の負けヒロインのクセに」
後ろからコソコソと悪口が聞こえてきた。
負けヒロイン。
忘れていた。
私は負けヒロインなのよ。
レイに毎回ドキドキしても私の想いはレイには届かない。
私、バカだ。
何を浮かれているのよ。
レイが家へ来るのはいつものことでしょう?
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~次話予告~
レイがタマキの部屋へ遊びに来た。
用事もないのに来るレイにタマキは期待をしてしまう。
でも、すぐに自分の立ち場に気付く。
そして学校で事件が起きた。




