ポールのサインをゲット、ジョンのサイン入りLPもゲット、そして鋼鉄のビートルズ親衛隊は青い星になる
新しい武器を得てやる気満々のJKトリオの前にまさかの大スターが...
ポール・マッカートニーのファンサは丁寧だった。旧友のジョンと仲良く歓談し、ギターをつま弾いて楽しい時間を過ごしたあとだったからか、JKトリオのサインの求めに気さくに応じた。
桜「自撮りの記念写真もいいですか?」
ポール「いいけど、その珍しいデバイスがカメラなのかい?」
紬「私たち...未来から来たんです。」
ポール「え?マジ?そりゃファンタスティックだ!Mysterious girls from the future!」
さすが一流アーティスト、ふつうならただでは済まないカミングアウトをそのまま楽しそうに受け入れた。
****************************************
女神「あ、ズルい!私もポールのサインと記念ツーショット欲しい!」
青水「おい、女神。神格が落ちるからやめろ。」
翡翠「私も欲しい!」
青水「翡翠...おまえもかよ!」
****************************************
3人はポールに遭遇してテンションが上がりすぎ、しばしミッションを忘れた。近所のカフェに駆け込むと、鼻息を荒くして戦利品を確認した。
桜「やった!サインゲット!」
翼「ポールってすごくいい人!」
紬「家宝だ...部屋に保存する装置を設置しよう。」
桜「....待って!うちら盛り上がっちゃったけど、あそこで何してたんだっけ?」
翼「あ.....ジョン・レノン暗殺事件の阻止。」
紬「危ねー、忘れるところだった。」
桜「犯人のチャップマンはもうNYにいるのかな?」
翼「待ってね ………… もう来てる。あいつ、ハワイ在住だけど、11月末にハワイを発ってニューヨークに来てるよ。」
紬「事前の説得は無理かな。」
桜「話が通じる感じじゃないみたい。」
翼「顔つなぎに接触は?」
桜「どこにいるのか情報がない。わかっているのは12月8日にここに来てサインをもらい、それから夜に帰宅したジョンを銃撃するということだけ。」
翼「サインをもらった直後に説得は?」
桜「説得に応じるようなやつじゃなさそうなんだよ。精神鑑定案件なんだから。」
紬「やはり銃撃直前に阻止して現行犯逮捕...危険だけどこれしかない。」
桜「3人で遠隔テイザーで無力化。ハウスのドアマンが目撃者になるだろうから、証拠物件とともに引き渡す。」
紬「一応、しっかりと顔を覚えるためにサインをもらう現場にも同席して、ついでにうちらもサインをもらおう。LPを買っておくと良いと思う。」
桜「LPは » Double Fantasy »一択だね。爺ちゃんも持ってる。うちらが暗殺を阻止しないとレノン最後のアルバムになるやつ。」
**************************************
女神「ぐぎぎぎ...あいつら、ポールのサインだけでは飽き足りず、ジョンのサイン入りLPまでゲットしようとしているぞ。」
翡翠「許せませんね。公私混同です。女神様...私も転移させてください。」
青水「おまえら....」
**************************************
12月8日になった。ダコタハウスの前には10人ほどのファンがサインを求めて立ち並び、ジョンとヨーコが現れるのを待っていた。桜と翼と紬もその中にいて、メガネをかけた小太りの若者の姿を探していた。
桜「ねえ、あいつじゃない?」
翼「あ、ホントだ。ネットの写真と同じだ。ここにメガネの青年はあいつしかいない。」
紬「何か嫌がらせしてやりたい。」
桜「やめときなさい。こちらを認識されるとあとが面倒になるから。」
ジョンとヨーコがハウスの出入り口から現れた。ファンが整然と並んでサインを求め、二人は笑顔でそれに応じている。チャップマンの番になった。ジョンが差し出されたLPにサインをして、 »Is that all you want? »と尋ねると、彼は笑顔で頷いた。鋼鉄のビートルズ親衛隊も無事にサインをゲットした。バカなことを言わないように無言の笑顔で。
桜「犯行時刻は22時50分、現在時刻は19時15分。」
翼「とりあえず現場が目視できるカフェで待機しよう。」
紬「チャップマンは何度もサイン入りLPを眺めながらずっとあそこに立ってるよ....あ、とうとうドアマンに退去を命じられた。」
桜「なぜファンなのに殺そうとしてるんだろうね?」
翼「専門家が難しい議論してるんだからうちらにわかるわけないよ。」
紬「おなかすいた。」
桜「いっぱい時間があるから何か軽く食べよう。」
翼「ニューヨークで“軽く”は難しいのよね。」
紬「サンドイッチに挟まれた肉が多すぎ。ミートソースの挽肉も多過ぎ。」
桜「ピザ屋でLサイズを3人でシェアして、それからカフェに行こう。」
桜「今のところ静かね。」
翼「背中に刺さる視線が痛いんだけど。」
紬「もうカフェに入って2時間近くになるから、追加注文してチップをたんまり渡そう。」
桜「うん、それは大事。Money brings smiles to the world.」
翼「動きがあった。チャップマン発見!」
桜「よし、勘定は済んでる。出るよ!」
チャップマンが曲がり角に隠れて手に銃を持っている。鋼鉄のビートルズ親衛隊は彼に見つからないように背後を取り、散開して遠隔テイザーを構えた。ジョンとヨーコを乗せた車がハウスの前で停まった。チャップマンが近づこうと動いた。3人は“フリーズ!”とは叫ばず無言で遠隔テイザーを発射し、チャップマンは倒れた。それからはいつもの手順。結束バンドで拘束し、証拠の銃に指紋がつかないよう布で掴んでビニール袋に入れる。ジョンとヨーコは一部始終を見ていた。このまま逃げてもいいのだが、何も言わずに立ち去るのもまずいような気がする。
桜「行って一言だけ状況説明しないと。」
紬「うちらで一番英語の発音が上手なのは?」
桜「...私かな?」
紬「いや...桜よりは私でしょう。」
翼「え?私に決まってるじゃないの。」
桜&紬「どうぞどうぞー!」
無駄な押し付け合いだった。ヨーコ・オノは日本語ネイティブだった。簡単に状況を説明し、ドアマンに犯人と証拠品を託し、3人はタクシーでプラザホテルに帰還した。
桜「楽勝だったね。」
翼「とはいえ緊張したよ。直前での現行犯逮捕だもの。」
紬「ヨーコさん、驚いていたね。うちら日本人だし。」
桜「きっとあとでジョンとポールがMysterious girls from the future について語り合うと思うよ。」
翼「未来武器で鎮圧したのを見てたしね。」
紬「うちら...歌になったりして!」
桜「ミッションが終わったから転移になる流れだけど...」
翼「このまま忽然とホテルから消えたら事件になる。」
紬「チェックアウトして夜のセントラルパークから青い星になって消えよう!」
無事に阻止できたのと、家宝になりそうなサインをゲットできて良かったですね。桜の爺さん、テンションが上がりすぎてさらにギターを3本ぐらい買いそうです。




