NYでプラザホテル、ミッションが確定、翡翠さんが鬼だったこと、まさかのポール
1980年のニューヨーク、近いようで遠いようで...よくわかりません。
翼「まずはソブリン金貨の換金だね。」
紬「えーと....ほぼ金の値段で価格が推移してる。現代は金が高騰してるけど、この時代はわりと安い。1枚せいぜい120~130ドルかな。」
桜「アミアージュで手に入れた胡散臭い金貨だから安くてもいいよ。」
翼「それでも一度に1000枚は犯罪の匂いがするから、2~3軒回って200枚を換金しよう。」
桜「手数料を引かれても2万ドル以上にはなる。豪遊できる。」
3人は銀行と貴金属店を回って23000ドルを手にした。
紬「次はホテルだ。当時の日本はバブル前夜。うちらはバブル前にバブルを体現する金満JKとしてNYに君臨する。」
翼「えーと、ちょっと待ってね …… これだ、プラザホテル。」
桜「なんか聞いたことがある...プラザ合意の場所だ。」
翼「何それ?」
桜「知らん。読んでもちんぷんかんぷんだ。」
紬「大臣が集まって世界経済の話をするくらい立派なホテルってことなんだよ。」
翼「プラザへGo!」
3人はクレジットカードを持っていない怪しい少女なので、前金で5000ドルをデポジットとして預けた。ホテル側は一瞬怪しんだが、異国の富豪の娘たちが無邪気にニューヨークに遊びに来たのだろうと受け入れることにした。これだけ支払えば3人は太客と認定される。コンシェルジュのサービスも充実する。さまざまな世界に転移を繰り返した結果、資金の効果的な利用を体得したJKトリオなのだった。
翼「さすがに豪華ね。」
桜「悪目立ちしないように標準的なスイートにしたから一泊600ドル。」
紬「ではさっそく検索しよう、1980年12月ニューヨークの事件 …… あ、これしかないっ!12月8日ジョン・レノン暗殺...」
桜「それ....阻止できたらうちの爺ちゃんが涙流して喜ぶ。」
翼「あの爺ちゃん....スケバン婆さんの彼氏....ボブ・ディラン派じゃなかったっけ?それもアコギ限定の。」
桜「入り婿に入って地下スタジオを手に入れてから宗旨替えしたんだよ。リバプールサウンド徹底研究に。」
紬「じゃあ、爺ちゃん孝行のミッションだ。頑張ろう。」
翼「犯行場所はレノンが住んでいたダコタハウス付近の路上。犯人はマーク・チャップマン。」
桜「犯行まで1週間ある。入念に準備しよう。」
***************************************
女神「ふっふっふ、Love & Peace 大作戦だ。じっちゃんの名にかけて...」
青水「いろいろ混じってずれるからやめれ。」
翡翠「私もぜひ助けたい、分身ガールズバンド »The Jade « のメンバーとして。」
青水「あの完全独裁ガールズバンドか....」
翡翠「青水さん....言い方!」
青水「あれは“翡翠さんタイムトラベル”じゃなくて、その前の“巫女とサキュバスと異世界と、そして人文知は役立たず”のエピソードだったな。最初に作ってアー写まで取ったメンバー2人を無慈悲にチェンジした。」
翡翠「完璧を期すためです。
「はい、みんなちょっと作業の手を止めて集まって!」翡翠さんがバンドメンバーを集めている。
「セッティングの前に、まだピカピカの状態でアー写を撮ります。ステージの横に飾って、チェキを撮ってくれたお客さんにも配ります。私たち”The Jade”の初ステージです。悔いのないパフォーマンスを!」
「それじゃみんな、アンプのゲインをすべてチェックして!」翡翠さんの指示で、みんな楽器と機材の調整に余念がない。
「ダブルネックでチューニング大丈夫?」
「はい、大丈夫です。」リードギターの顔に緊張が浮かぶ。
「ゲインを上げすぎなんじゃない?」翡翠はベーシストのセッティングを見て指摘した。
「このくらいにしないとドラムスやギターのアタックに飲み込まれてしまうんです。」
「あなたの物理アタックは?」
「指の力が弱くて...」
「みなさん、ペダルボードのエフェクターの調整にミスはない?」
「OKでーす!」
「じゃあ、ワンコーラスだけ試しに音を出してみるわよ。」
「ワン、ツー、ワンツースリーフォー!」ドラマーがスティックでスタートを告げる。
「Nobody knows that nobody lives....♩」翡翠さんの透明な声がエネルギーを帯びて放たれた。
すごい。躍動感が半端ない。前にここで分身たちと演じたガールズバンドとは比べものにならない。前のが大学祭で一番良くできたバンドだったとすれば、今のはインディーズであちこちの事務所からスカウトが来るレベルだ。
「はい、ストップ!もう1回チューニングして!ちょっとリードの分身参、こっち来て。」
「なんでしょうか?」
「なぜダブルネック使っているの?音が安定しない。」
「ステージ映えするかと思いまして。」
「映えとか関係ないから。音が外れているの。最初のリフ、1カ所ミスってた。ディストーションのレベル上げすぎ。ということで、あなたは収束です。」分身参はその場で消えた。
「ベースの分身弐,こっち来て。」
「な、なんでしょう?」
「あなた、パワーが足りないわ。分身によって個性があるから、たまにそういう子も出ちゃうのね。アンプのゲインでごまかすようじゃベースは失格です。まあ私のせいでもあるのだけれど、残念ながら収束です。」分身弐はその場で消えた。
俺が知る翡翠さんではない。バンドの鬼だ。収束させているのであって、殺しているわけではないが、しかし明らかに簡単に消している。デリートしている。
「残ったのはドラムの分身壱だけか。この子は正確にリズムを刻むし、しっかり仕事をしてるわ。さっそくあと2体、召喚しましょう。」
女神「鬼のように容赦ないな。」
翡翠「それだけ真剣だということです。」
青水「分身に人権はないんだな。」
翡翠「私自身ですから問題ありません。おかげで最高のパフォーマンスを実現できました。」
ステージに幕が下ろされ、バンドのセッティングが始まったようだ。機材の調整の音が聞こえる。翡翠さんの厳しい指示が飛ぶ。期待が高まる。ドラムスのシンバルがパシャーンと大きな音を出した。何かがぶつかったのだろう。それに続いて少女らしい明るい笑い声が聞こえてきた。翡翠さんが幕の横から出てきた。
「みなさん、もう少しお待ちくださいね。メンバーが替わったのでアー写の撮り直しです。これはチェキを撮ってくださったお客さんにプレゼントします。」会場から興奮の声が上がった。
幕が上がった。華々しいライトがバンドメンバーを照らして動く。会場は割れんばかりの拍手と声援だ。ペンライトが振られる。MCもなくいきなり演奏が始まった。
「ワン、ツー、ワンツースリーフォー!」
« Nobody knows that nobody lives....♩ But the shadows that’ve been ourselves pretend to play their roles and whisper that it’s all OK....♩”
MCなしで激しい曲、メロディアスな曲、ダンサブルな曲、全部で5曲が続けて披露された。観客は総立ちでヘドバンしたり、踊ったり、ペンライトを振ったりと全力で楽しんだ。
「みなさん、どうもありがとう。次回のステージで同じメンバーにできるかどうかわからないのですが、全力で優れた分身を作り出せるよう精進します。」翡翠は最後に頭を下げてライブは終わった。
幕が下りたステージの横にチェキ会場が設けられた。翡翠に長蛇の列ができたのは言うまでもないが、いずれ収束する儚い分身たちにもファンの列ができていた。これは演奏に対するリスペクトのためだろう。お色気担当ベースのファンサ、寡黙な職人リードギターの渾身のリフ、冷静なリズム統御者のドラム、すべてが尊い。チェキ会が終了するまで1時間以上もかかった。
青水「こうして再現すると改めてこえーわ。」
翡翠「青水さん....コピペで字数を稼ぐという姑息な技を...」
**************************************
桜「あれがダコタハウスね。」
翼「ちょっと待って!あの人、あのギターケースを持った童顔のおじさん、あれって...」
紬「ポールだ!うわあ!サインを...」
桜「やめい!サインは私がもらう。爺ちゃんへのお土産だ。」
桜の爺さん、ミュージシャン志望でしたもんね。今は八王子のスカーフギタリスト。ポールのサインをもらったらうれしくて号泣しそう。




