ジョナサンはエロ怖い体験をしていたが、そんなことはつゆ知らずJKは高級ホテルで豪華ブレックファスト
原作の冒頭はジョナサンがトランシルヴァニアへ向かう旅の描写で始まります。西から東へ、どんどんヨーロッパ文明の色合いが薄れて行く感じ。これは現代の列車の旅でもある程度は実感できるのではないでしょうか。
ロンドンでそんなことがあった三週間前、ブダペストでミナはジョナサンに再会していた。
ジョナサン「...ミナ...か?」
ミナ「私よ、ジョナサン!」
ジョナサン「...神よ...感謝します。」
ミナ「何が...何があったの?」
ジョナサンは語り始めようとして苦痛に顔を歪ませた。
ミナ「いいの...いいのジョナサン、無理に話そうとしなくても...」
ジョナサン「ミナ...ぼくは今すぐ君と結婚したい。」
ミナ「いいわよ...今すぐ...今すぐ晴れて夫婦になりましょう。」
ジョナサン「ありがとう …… シスター・アガサ、国教会の聖職者を呼んでいただけますか?」
アガサ「わかりました。宗派は違いますが、すぐ手配します。」
ジョナサン・ハーカーがドラキュラ伯爵の城に到着したのは、遡ること三ヶ月半前の5月5日のことだった。ロンドンを出発したのは4月末。長い旅の末にたどり着いた未到の地トランシルヴァニアにそびえ立つ古色蒼然とした漆黒の城。城に招き入れられてから約2ヶ月、ほぼ幽閉状態のままジョナサンは外界と隔絶され、不思議で恐ろしい経験をした。伯爵は使用人もいないこの大きな城でひとりで暮らしていた。最初はそう思った。伯爵より恐ろしい3人の女を見るまでは。金髪碧眼の女を筆頭に目が紅く褐色の肌を持つ女がふたり。あからさまにジョナサンを食い尽くしそうな目で見て淫らな言葉を投げかける。いつの日からか城から伯爵の姿が消えた。ジョナサンは決死の脱出を図ったが、3人の女――人間ではない――ヴァンパイアに捕まり、官能的な魅了と吸血以上の苦痛を同時に味わうことになった。
ミナとの会話で記憶をたどろうとして苦痛を感じたのは、精神分析でいう“抑圧”のためだ。現実に性的トラウマになる出来事を体験すると、あとになってそれを想起すれば自我が崩壊してしまう。そこで心理的保護機制というメカニズムが記憶の中に結界領域を作って、無理にこじ開けようとすると激しい苦痛に見舞われるのだ。婚約者のミナの目の前だったのでなおさらのことである。
アガサ「国教会の牧師様が到着しました。」
牧師「略式ですが教会法に則って正式な婚姻の儀式を始めます。」
ジョナサン&ミナ「よろしくお願いします。」
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女神「なんで3人の女ヴァンパイアの中でひとりだけ金髪碧眼なんだろうな?」
青水「あいつら全部ドラキュラが吸血した結果なんだろ。トランシルヴァニア付近にはあまり金髪碧眼がいないからな。ドイツあたりまで遠征したときにスケベ心が疼いて...」
翡翠「青水さん、言い方!」
青水「ブラム・ストーカーは同郷の先輩作家であるシェリダン・ファニュを敬愛していて、その作品“カーミラ”の世界観を取り入れたかったんじゃないのか。実は、生前に公刊されなかった“ドラキュラの客”というという原稿があって、そこで“カーミラ”の世界につながる金髪碧眼の女――たぶんヴァンパイアなのだろうが棺に眠っている――が出てくる。」
女神「要するに作者が金髪好きだったってことなんだろ。ふん、わかりやすいわ。」
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ルーシーはミナからの手紙を受け取った。そこには、無事にジョナサンと結婚してミナ・ハーカーになったこと、ジョナサンが回復するまでスイスで静養すること、ジョナサンが引退する雇用主から事務所を譲られ独立すること、9月中にはロンドンへ帰ることが綴られていた。すべてうれしいニュースばかりだった。
ルーシー「ねえ、アーサー。ミナがとうとう結婚したわよ。」
アーサー「そうか。それを聞くとぼくも気が急くなあ。でも父が病に倒れてとても結婚式を挙げられる状況じゃないんだ。」
ルーシー「うちのママも容態が悪くなってきたの。結婚式はちょっと無理ね。」
アーサー「強い愛で結ばれているんだ。いくらでも待てるさ。」
ルーシー「そうね...ん...もう一度キスして...」
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女神「何だ、このへなちょこのラブロマンスは?」
翡翠「悲劇が回避されて王子と姫がラブラブなんだから良いじゃありませんか。」
女神「このルーシーという女はな、原作ではヴァンパイアになるんだぞ。そしてこともあろうに子どもをさらいまくる。」
青水「そうだったな。そしてヴァン・ヘルシングたちに墓所を暴かれ、婚約者のアーサーが杭を打ち込む。」
翡翠「そんな場面、見たくありません。」
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そのころアムステルダム大学の研究室でヴァン・ヘルシング教授はかつての弟子ジョン・セワードからの書簡を読んでいた。そこには、精神病院の独居房に収監している患者レンフィールドの異常な行動、ロンドン市内で多発する不思議な殺人事件、そして最新の科学技術と精神医学の関係について意見を交換したい旨が書かれていて。ジョン・セワード、ヴァン・ヘルシングの弟子の中でも飛び抜けた才能を示した男だった。ヴァン・ヘルシングはすぐさま返事を書き、三日後にロンドンに到着するのでバークリー・ホテルに部屋を取るようにと伝えた。
桜「ホテル・クロイツも良かったけれど、さすがにピカデリーの高級ホテルは格が違うわね。」
翼「バークリー・ホテルはスイートで一泊5ポンドだからね。日本円で15万円くらいだよ。」
紬「だんだん麻痺して来ちゃうね。」
桜「女神様のおかげで新聞もすらすら読めちゃう。」
翼「何か気になる記事は?」
桜「この一週間で三件の路上殺人事件が起きているって。」
紬「お、切り裂きジャックか?」
桜「それがね、被害者はすべて頸部切創による失血死。」
紬「やっぱり切り裂きジャックだ。こえー!」
桜「ただね、失血死なのに現場にはほとんど血が残されていなかったと。防御創もなし。気付かれる前に殺されたって感じらしい。」
翼「血が流れない頸部切創...臭いわね。血はどこに行ったの?」
桜「新聞でもその謎について報じているから警察は必死に捜査してると思う。」
翼「強制転移があるとはいえ、私たちも気をつけましょう。」
紬「うん、あれ食らったらゲームオーバーっぽくて悔しい。」
桜「明日の朝食、楽しみね。伝統的なイングリッシュ・ブレックファスト。」
紬「おお、これは朝から豪華ですな。」
翼「フランス人はクロワッサンとカフェオレだけだから、熱量がずいぶん違う。」
桜「そのぶんフランス人はランチをいっぱい食べるんじゃないの、知らんけど。」
翼「Breakfastっていうじゃん。ファストって何?速い?」
紬「ファストは断食だね。寝てる間は食べられないから断食ってことらしい。」
桜「断食破りだからこんなに豪華なのか。」
JKトリオが最高のフル・イングリッシュ・ブレックファストを楽しんでいるとき、3メートルほど離れたテーブルでヴァン・ヘルシングとドクター・セワードが朝食を摂っていた。
いよいよヴァン・ヘルシングやセワード医師、ジョナサンと立役者が揃ってきました。JKトリオはどう絡むのでしょう。楽しみですね。




