狼の突撃を阻止する大作戦、カネならあるんだ、人も雇えるよ
原作ではドラキュラが狼を盗み出して外部との境界を破壊してから好き勝手に屋敷に入り込むのでした。これを阻止できれば。
桜「これで残金50ポンドと合わせて650ポンドになった。」
翼「現代の日本円で2000万円以上だ。」
紬「まだ売ってないルースが24個ある。」
桜「とりあえず金に糸目を付けずに作戦を進められる。人も雇えるね。」
翼「狼突撃事件だけどさ、ドラキュラって本当は招待されないと他人の住居に侵入できないんでしょ?狼が窓を破ったら侵入できたのはなぜ?」
紬「窓は内部と外部の境界だから、それが破壊されると内部と外部がつながっちゃうからじゃないの?空間図形的に。」
桜「冴えてるな、紬。境界の破壊で内部がなくなったのか。」
翼「で、どうしよう?狼襲撃それ自身を阻止できればドラキュラはルーシーの家――ヒリンガム――に侵入できなくなる。大きなアドヴァンテージになるけど。」
紬「狼襲撃のショックで心臓が弱かったルーシーのママは死んじゃうんだよね。」
桜「阻止するのが難しい。ドラキュラがロンドン動物園に出向いて狼を逃がす。人を雇って狼を守らせれば犠牲者がたくさん出る。なにせ力は人間の20倍だから。」
翼「ならば屋敷を守らせるのは?こっちは対ドラキュラではなくて対狼だから犠牲者も出ないよ。」
桜「それ良いかも。野犬捕獲に長けた人材を5人ぐらい雇って警戒に当たらせよう。事件が起こるのは9月17日の夜。」
翼「パブの店主に話せば人を集めてくれそう。店主には....このポッキー一箱を袖の下として渡そう。」
桜「それうまいな。ポッキーは現代のバーでもお通しとして出てきそうだからスコッチとも合うよ、きっと。」
店主「おお、おまえたちか。どうだ、ホテル・クロイツ、気に入ったか?」
翼「はい、とても清潔で気に入りました。」
桜「私たちはまだ年少者なのでスコッチは嗜まないのですが、スコッチとチョコって合いますか?」
店主「ああ、合うよ。苦みと甘みの交互作用で。ただチョコは高くてな。」
桜「はい、これ。ポッキーといって細長いクッキーをチョコでコーティングしたお菓子です。スコッチ飲みながらつまむと良いかなと思って持ってきました。どうぞお試しください。」
店主「お、悪いね。うん、良い香りだ。今夜の寝酒に試させてもらうわ。」
紬「こういう仕事をなさっていると人脈も広がりそうですね。紹介していただくことは可能ですか?」
店主「ああ、そのへんの力自慢ならいくらでも紹介できるぜ。」
紬「紹介して欲しいのは野犬捕獲に長けた人です。5人もいれば大丈夫かと。あのヒリンガムの屋敷を野犬から守って欲しいのです。5人合わせて3ポンド支払います。」
店主「太っ腹だね、お嬢ちゃんたち。良いぜ、その報酬なら最高の腕利きを5人集めてやろう。」
紬「9月17日の夜です。その夜に大きな野犬が屋敷を襲いそうです。」
店主「わかった、集めておく。17日の夕方にここに来な。」
9月17日が来るまでJKトリオはヒリンガム――当時の屋敷には名前があった――の周辺を調査し、考えられ得る狼襲撃のルートを考察した。17日にはもちろんドラキュラも来るだろう。ドラキュラに狼捕縛を邪魔させるわけにはいかない。集めた捕縛隊に犠牲者を出してはならない。3人は対ドラキュラ戦闘のシミュレーションを頭の中で構築し、意見を出し合って戦略を磨いた。
17日になった。
桜「じゃあ行こうか。」
翼「うん、準備万端。」
紬「うちらは負けない。だって負けそうになったら自動転移で離脱だもん。」
桜「手練れ5人衆は揃った?」
店主「おう、お嬢ちゃんたち、揃ってるぜ。」
翼「じゃあ、面倒なので前金3ポンドで渡しておくね。店主さんが崩して配ってちょうだい。」
店主「あいよ。…… ほれ、これでしっかり働きな。終わったら....へっへっへ、店でガッポリ飲んでくれ!」
ヒリンガムの館で待つこと1時間、5人衆はタバコをくゆらせたり立ち小便をしたりして思い思いにくつろいでいた。………… そして狼は現れた。5人衆は捕縛網や棍棒を持って獲物に近づく。そのとき屋敷の庭の高木にぶら下がっていた巨大なコウモリがバサバサと降りてきて、彼らの前に立ちはだかった。ドラキュラだ。捕縛を阻止するつもりだ。
桜「やらせないよっ!」
翼「食らえ、3000ルーメン!」
タクティカルライトの照射を顔に浴びてコウモリは地面に落下し、それから再び飛び去ろうとした。
紬「残念!」
紬の超音波ブザーが130デシベルで鳴り響き、コウモリのエコーロケーションが一時的に麻痺した。混乱してクルクル回転する巨大コウモリ。だがそのまま人型に変身して紅い目をカッと見開き攻撃態勢に入る。
桜「さーて、正体を現したわね。」
翼「どっさり浴びて...いえ、飲んでもらおうかしら。」
紬「今回は私もウンコ担当じゃないからね。」
3人は高性能水鉄砲を構えて強い水圧の濃厚ニンニク水をドラキュラに浴びせた。膝をついてもがき苦しむヴァンパイア。それを見た捕縛隊の屈強な男たちは棍棒で袋だたきに殴りつけた。転がりながら再びコウモリに変身するドラキュラ。130デシベルのブザーに反応して近所の人々や警察官が駆けつけてきた。
警官「なんだ、これは?」
捕縛隊A「魔物でさあ、旦那。」
捕縛隊B「撃ち殺してください!」
警官が発砲すると、コウモリは再び人型に変身し、近くの家の壁を垂直に駆け上がって屋根に逃れ、そのまま消え去った。その場には、捕縛された狼だけが残った。
警官「説明してもらおうか。」
捕縛隊「俺たちはそこのお嬢ちゃんたちに雇われて野犬を捕縛する仕事をしてただけでさあ。」
桜「お騒がせしました。これは野犬ではなくて狼です。」
翼「動物園から逃げ出したという情報を得たので、友人宅が近いここで警戒していたのです。」
紬「まさかあんな魔物が出るなんて....」
桜「とても恐ろしいです、オフィサー。」
翼「このあたりの警備を強化してください。お願いします。」
警官「わかった。君たちはもう帰りなさい。」
桜「わかりました。…… では捕縛隊のみなさん、捕まえた狼をリージェントパークのロンドン動物園に移送してください。ビルダーさんという人が飼育係です。きっと探しています。それから、おまわりさん、この人たちに一筆書いてください。逃亡した狼を捕縛したので返却に向かわせたと。狼泥棒の汚名を着せられては困りますからね。」
警官「わかった。事情はすべて把握している。」
今回もなんとか撃退できました。ルーシーは無事、ルーシーママも存命です。




