帰還、日常、そして新たなる転移先はドラキュラ
次は長編小説なので予習に余念がありません
桜「ふう、戻った。さてトイレ...あ、紬に取られた。」
翼「先にシャワー使っても良いよ、桜。」
桜「いや、良いよ。待ってる。トイレに行きたいままシャワーを浴びると...その...」
翼「ああ、わかる...あの水音が何かを誘い出そうとする。」
桜「そう...だから、翼、先に行っておいで。」
翼「それにしてもあの青ひげ、なんで禁断の部屋の鍵を妻に渡して旅に出たんだ?」
桜「己への忠誠を試そうとしたとか。」
翼「ペローのあのシリーズ、必ず最後にモラルってのが付いてるんだけど。」
桜「教訓みたいなやつ?」
翼「そう。青ひげには2つ付いてる。」
桜「へえ、さすがフランスの宮廷人ざますわね。単純に落とさずもう一発殴る。」
紬「ふう、トイレ空いたよ。」
桜「うん、少し後で行く。いま青ひげの話は何を言いたかったのか考えてるところ。」
翼「最初のシンプルな教訓は、好奇心はしばしば後悔させる結果に終わる。まあわかりやすいけどつまらない教訓。」
桜「もうひとつのは?」
翼「これは昔話だから、今の――つまりペローの時代のね――妻と夫の力関係は逆転してる、だとさ。」
桜「それは宮廷のレディーたちに、うふふ、そうよねえ、と言わせる仕掛けか。これもつまらん。」
紬「そもそもお話の最後に教訓を付けるというのがねえ。」
桜「うちらには受け入れられないよ。アニメのエンディングに、良い子のみんなはこんな危ないコトしちゃダメだぞ、って入れたら幼稚園児だって怒る。」
紬「そういえば、青ひげは逮捕されてたぶん処刑されるんだろうけど、財産は全部シャルのものになるのかな?」
桜「お伽噺の世界なのでそのあたり、どうなってるかわからないけど、私だったらあの城に住み続ける気にはなれない。」
翼「だよねー、6人の死体が放置された部屋を持つ城、ホラーにしか使えないよ。」
紬「全部売り払って、少し大きな町に瀟洒な家を買って住む。相手が見つかれば再婚して。」
翼「そして売り払われた城はホーンテド・キャスルとなって新たな物語を紡ぐのであった。」
女神「よお、戻ったか。今回もご苦労様。」
桜「何だか不完全燃焼です。」
女神「そうだろうな。物語が短すぎるからそうなったんだろう。次は取り組みがいがあるやつにしてやるよ。」
翼「来週の金曜日ですね。」
女神「そうだ。だから準備のために種明かしをしてやろう。今度の転移先は19世紀末のロンドン、物語は有名な小説“ドラキュラ”だ。」
紬「うわ、読んだことがないけどたぶん長編だ。」
女神「なので来週までしっかり予習して準備しておけ。準備がいい加減だと血を吸われてしまうぞ。」
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女神「ふっふっふ、今度は超大作だ。しかも翡翠も対処したことがないドラキュラ。どうなるんだろうな?ふっふっふ、ドキドキが止まらない!」
青水「その目の動き、いつものやつか。」
翡翠「きっとやりますよ、女神様だから。」
女神「畏れよ!崇めよ!われこそはヴァンパイアクイーンなり!」
翡翠「出たな、クィーン!そこに直れ!……桃影流奥義、桃華円舞!」
青水「ちょっと...翡翠...刀なんか抜いて危ない!」
翡翠「はっ....私としたことが...」
青水「おまえ、初出は“ジョアンナ・ヴァン・ヘルシング ――The Vampire Queen”だったからな、フラッシュバックというやつか。」
翡翠「はい、面目ありません。」
女神「ふんっ...ふんふんっ!私の初登場より前の作品に出てたってアピールか?ああ、いいぞ。そうやって私の知らない昔話に花を咲かせるがいいさ。…… 青水!血のような赤ワイン持ってこい!」
青水「はい、どうぞ。すまなかったな。仲間はずれにするつもりはなかったんだ。」
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桜「日常の学校生活...非日常を知らない人にとっては退屈なんだろうけど...」
翼「私たちにとってはありがたいリチャージとブレークだよ。」
紬「こないだの模試の結果が出たね。どうだった?」
桜「受験勉強してないから良いわけない。早慶はE、マーチはD~Bまでいろいろ。」
翼「すごい、B判定もあるんだ。私、全部E~Cだよ。」
紬「私も似たようなものかな。あ、でも早稲田でひとつだけDが出た。」
桜&翼「おお!」
紬「いや、Dって落ちるって意味だから。」
桜「受験勉強は来年からだから伸びしろしかないんだよ、私たちは。」
翼「勉強と言えばドラキュラの予習、どうなってる?」
紬「速読スキルに恵まれた私でも文庫本で700ページはちょっと辛いかな。でも要点のメモは取ってる。」
桜「三人で分担じゃなくて三人が全部読むっていうのが良いよね。」
翼「そうそう、漏れがなくなる。」
紬「ニンニクが出てきたね。」
桜「私、あそこで少しモヤっとした。」
翼「わかるー。ニンニクの花飾りって何なの?お上品すぎて匂いが出ない。」
紬「それな。うちらは容赦なく行こう。摺り下ろしニンニクの大型チューブ。大量のガーリックパウダー。」
桜「あとさ、聖水と聖餅が出てきたじゃん。これはこっちから持ち込むより現地調達が良いね。」
翼「銀の弾丸....はうちらには扱えそうもない。」
桜「取り扱えたとしても予算的に無理。財産が消し飛ぶ。」
紬「ドラキュラって巨大コウモリと狼に変身できるじゃん。何か対策できないかな?」
翼「猫ならマタタビが効くんだけど。」
桜「コウモリは視覚情報じゃなくて超音波のエコーで周囲の状況を把握するんだって。」
紬「害獣用の超音波発生器とか。」
紬「…… ダメだ、携帯用の機種がない。」
桜「狼は犬だから嗅覚が弱点かも。」
翼「それならウンコスプレー一択じゃん。Youtubeでよくやってる。」
紬「ウンコスプレーなら人間状態のドラキュラにも効きそう。いっぱい持って行こう。」
桜「ウンコにニンニクを混ぜて...」
翼&紬「やめい!」
桜「何を使うにしてもバックファイアー的にうちらも巻き添えになるので、モンベルで速乾性の服を買い足しておこう。あとなにかデオドラント的なもの。ウンコ臭いJKがロンドンの町を疾走はイヤだ。」
翼「明日は木曜日で転移の前日だから、買物ツアーに行こうよ。現地の金策も少し考えないと。」
紬「19世紀末のロンドンとなると、今うちらが持ってる1500フランは古銭になるね。換金はできるだろうけど、あまり期待はできない。」
翼「もうすぐ20世紀でしょ。昔の人みたいに蓄光アクセで金策は無理そう。」
桜「ならばまたもやクンツァイトやモルガナイト、そしてアミアージュかな。」
紬「アミアージュを台座から外してルースで持ち込もう。鑑定が簡単だし、地金からお里が知れるリスクもなくなる。」
桜「紬....すごく悪い顔してるよ。」
準備が楽しそうですね。作品を読んで具体的な場面を想定して準備する、JKたちのゲーム体質が明らかになってきました。




