乙女の尊厳を守るため、進め鋼鉄の花摘み団、そして百合に遭遇
19世紀半ばのヨーロッパ、都市と田舎の格差はとてつもない大きさですね。鉄道が敷設されようというのに、古城のトイレは中世仕様。
桜「昨夜はバタバタしていたのでディナーも有耶無耶になったけれど、今日は日常が始まるので食事も出るな。」
翼「1870年、パリのような大都市ではなくて地方の古城だから調理は丁寧だと思うね。肉も貯蔵肉ではなくて屠殺してすぐか狩ったばかりのジビエ。鮮度は大丈夫だと思う。」
紬「安心して食べられそう。」
桜「昨日のワイン、美味しかったな。オーストリアと言っても南部だからイタリアっぽいのかも。」
翼「ワインを語る女子高生、セレブざんすね。」
そんな話をしていたら、マダム・ペロドンが朝食の用意ができたと呼びに来た。
ペロドン「飲み物はコーヒーも紅茶もあります。主がイギリス人なので基本は紅茶ですが、大陸ではコーヒーが標準ですから。」
翼「パンはフランス風なんですね。」
ペロドン「これも主の趣味です。パンはフランス風に限ると。イギリスのトーストなんか犬に食わせろと言ってますわ。」
3人はそれなりにナイフとフォークを使いこなして朝食を上品に平らげた。バターとミルクは新鮮で本当に美味だった。マダム・ペロドンは、微笑んでいるけれど、しっかり3人の食事のマナーを採点していた。そして、桜たちはもちろんそれに気付いてマダムを逆に観察していた。港区で実家が太いJKならではの隙のなさだった。
桜「ごちそうさまでした。本当に美味しかった。ありがとうございます。」
ペロドン「あなたたち、服装は珍しいけれど、ずいぶんと育ちがよろしいようですね。これならお嬢様のお友だちとして合格ですわ。」
翼「育ちが良いなんてことはありませんよ。食べるときに音を立てるな、ぐらいしか教えてもらってません。」
紬「美味しいときは素直に美味しいと思って食べなさいと教わりました。」
ペロドン「そういうふつうのことがなかなかできないものなのですよ。食べ終わったらお部屋で少し休んで、あとはお城やお庭を見て回ると良いわ。」
桜「さて...と、実はひとつ気になることがある。」
翼「奇遇ね、私もだわ。」
紬「昨夜から気にはなっていたの。」
桜「城内を軽く見学して回ったときのことよね?」
翼「そう....ひとつ耐えがたいものが。」
桜&紬「トイレだ....トイレがひどい!」
桜「無理なんだけど!」
翼「あの穴の下はそのまま城外の地面だよ。高さ20メートル。」
紬「外から見るとこんな感じ。」
桜「恐ろしくて中に入れない。お股スースーどころじゃない!」
翼「部屋におまるを置かれたけど、使ったら尊厳が壊れる。」
紬「それな!」
翼「私は行くよ、外にお花を摘みに!」
翼はスコップを用意して外へ飛び出そうとした。
桜「待て!....スコップを持ったということは...」
翼「そうよ、大きなお花を摘みに行くのよ。このスコップで地中深くに埋葬するのです。」
桜「ダメだ...1人では行かせられない。」
紬「行くときはみんな一緒だ!鋼鉄の花摘み団を結成しよう!」
翼「みんな....ありがとう....」
桜「背後で花を摘んでいる戦友を2人が守る。そうやって3人が無事に大きな花を摘み終えたときがミッションコンプリートだ。武装して行くぞ!」
作戦は無事に終了した。摘まれた大きなお花はモンベルで購入したシャイニーウェットティッシュとともにシュタイアーマルクの土中深くに埋葬され、ゾンビとして復活することもないだろう。
JK花摘み団が快進撃を続けている間に、ローラとカーミラが城内の部屋で出会った。カーミラと初めて言葉を交わしたローラは、幼いころの夢を思い出していた。夜に、夢か現かわからない金縛りの中で自分を身動きが取れないように抱きしめた女...カーミラの姿にローラはその夢を重ねていた。
ローラ「私、あなたと初めて会ったという気がしない。幼いころ、夢に出てきたよね?」
カーミラ「夢に自由に入り込める能力なんかないわ。あなたがそう思うのは、私とあなたが深いところでつながっているからなのよ。」
ローラ「その目で見つめられると吸い込まれそう。」
カーミラ「視線だけじゃ満足できないわ。もっとこっちに来て。あなたをもっと感じたい。I want to feel you closer.」
この怪しげな百合場面にお腹がスッキリしたJKトリオが参入した。
紬「あら、お邪魔虫だったかな?」
翼「百合の花が咲くゴシックのお城。」
桜「ねえ、せっかくだから写真撮らない?」
カーミラ「う....何だ、おまえたちは?」
紬「さっきまでは鋼鉄の花摘み団、そして今は....何にしようか?」
翼「鋼鉄の乙女団だよ。」
桜「乙女映写団だよ。記念動画を撮ろう!」
カーミラ「ふざけるな!頭が痛い...私は失礼する。」
紬「あちゃあ...やっぱ映らないのかな。」
翼「鏡に映らないって設定が多いからね。」
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青海「あいつら、カーミラをどうするつもりだろう?」
翡翠「私は助けましたけどね。ローラを半分犠牲にして。」
青海「吸わせたのか?」
翡翠「いえ、女神様の仲介でヴァンパイアの真祖にお目通りさせてもらって....」
女神「ああ...思い出した...あの忌々しい甘やかしの女神と鉢合わせしたっけ...」
翡翠「はい、そこで私が一喝してその醜い争いを止めてから真祖様に直訴しました。」
女神「悪かったな...その...」
翡翠「いえ、慣れてますから。」
青水「で、結局カーミラとローラはどうなった?」
翡翠「真祖様の力で吸血の呪いを解き、不老不死の存在として未来永劫愛し合えるようにしました。」
青水「翡翠よ....おまえも...何というか...チョロいところがあるんだな。」
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桜「どうやら魅了されちゃったみたいだよ、ローラ。」
紬「小説を最後まで読んでわかったけれど、長い歴史に刻まれた血族の絆だからね。」
翼「どうする、私たち?」
紬「このまま放置すれば、カーミラはシュピールスドルフ将軍とバトル。勝負は付かずにそのまま逃げて、墓を暴かれお約束の杭打ち。」
桜「ローラは?」
紬「消えた恋人の思い出とともに生きていつか死ぬ。」
さあ、JK旅団、大きく咲いた運命の百合の花をどうするのでしょう?




