出口から逆算するのが最適ルート、今回は制服でスパイ大作戦
綿密に考えられているようで、結局は個人の才覚に任せるしかないのがJK旅団の特色ですね。桜さん、完全に司令塔になります。
桜「出口をしっかり整えて、そこから逆算するのが良いのでは?」
翼「確かに。あの2人、どういう形に落ち着くのが一番良いか。」
紬「アルフレードがしっかり学業を修めて就職する。質素でも堅実な家庭を築く。」
桜「21世紀の私たちの常識ではそうなるよね。」
翼「うちのママがいつも言ってる。結婚するなら堅実な男が一番、夢語り物件はやめとけと。」
桜「うちは何も言わないなあ。パパは、おまえが何かにトライして失敗しても骨は拾ってやるって言う。だから、骨になる前に助けるのが親だろうと返してる。」
紬「そりゃそうだ。で、パパは何と。」
桜「考えてみればその通りだ。骨にはしない。ちゃんと助ける。だから肉を斬らせて骨を断て、だとさ。」
翼「桜のパパ、フレーズに振り回されるタイプ?」
桜「そうなんだよ。でさ、おまえの失敗はリカバーしてやる、だが男での失敗は別だ、自分の尻ぐらい自分で拭け、と。」
紬「で桜は何と?」
桜「その尻を拭くって比喩は汚いからやめなよ、って。」
翼「それな。私も完全に同意だ。話の中にウンコを持ってくるな。」
紬「えーと、良いかな?話のズレが大きすぎて戻って来れなくなってるんだけど。」
桜「あ、ごめん。」
紬「考えたんだけど、フランスを出てスイスへ移動するというのは?」
翼「スイスってドイツ語だろ?」
紬「いやジュネーブのあたり。フランス語だし、調べてみたら金融関係でいっぱい仕事がありそう。ジュネーブ大学もあるし。」
桜「それ良いかも。空気が綺麗で静養に向いている。物価も安くはないだろうけど、パリよりは安いと思う。私たちの資金でアルフレードの学業と就職までの生活費は賄えるはず。」
翼「では2幕でアルフレードがパリに金策に行く前が介入のチャンスだね。」
紬「アルフレードは生活の経済的基盤がどうなってるのかわからないまま郊外の家で牧歌的生活を堪能してる。」
翼「確かアンニーナに事情を聞いてパリへ金策に向かうんだった。」
桜「アンニーナを抱き込もう。」
3人は馬車を走らせ、ヴィオレッタの屋敷へ行った。アンニーナはまだここに住んでいる。おそらく家財の売却に従事しているのだろう。ヴィオレッタとアルフレードが郊外に家を借りたので、売れるものはもうあまり残っていない。アンニーナ自身の生活もやがて破綻する。
紬「アンニーナ!」
アンニーナ「あ、皆さん。」
桜「これから郊外のヴィオレッタに売却の報告に行くのね?」
アンニーナ「なぜそれを?」
紬「未来技術(紬はスマホの画面を見せた)。」
アンニーナ「え?そんな...」
桜「悲劇を回避するために私たちに協力して欲しい。」
アンニーナ「わかりました。私にできることでしたら。」
桜「このまま進行すると、あなたがヴィオレッタに会う前にアルフレードと遭遇し、現在の経済状況を漏らしてしまって、アルフレードはパリへ金策に行ってしまう。それを止めて欲しい。」
アンニーナ「アルフレード様をパリへ行かせないのですね。」
桜「そう。そうすればそこへ訪ねてくるアルフレードの父親とアルフレードが直接対決になる。言い争いになるだろうから私たちが介入するよ。」
翼「で、同時に私たちのひとりがヴィオレッタに先に接触して計画を伝える。ふたりにはジュネーブに行ってもらいたいんだ。」
アンニーナ「フランスを出てジュネーブへ行くのですか?」
桜「ジュネーブはレマン湖の畔、空気も綺麗だし静養にはもってこいの場所。アルフレードはジュネーブのアカデミーで学業を続けて、卒業したら就職してもらう。ジュネーブには金融の仕事がたくさんあるからね。」
紬「アルフレードが一人前の男になってヴィオレッタを養えるようになるまでの生活は、うちらが未来技術でちょっとズルして――この世界では違法ではないよ――獲得した資金で賄えるようにしよう。9万フランある。」
アンニーナ「え?そんなに?」
桜「これだけあればジュネーブにそれなりの屋敷を借りて、学費も払え、2~3年は悠々暮らしていけるはず。」
翼「アンニーナさんもこれまで通り、2人の世話をしながら安心して暮らせるよ。」
アンニーナ「わかりました。全面的に協力します。」
桜「良し、ではちょっと狭いけどこの馬車でヴィオレッタの家に向かおう。」
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女神「あいつら、翡翠がマルグリットを救ったときと同じで、ジュネーブを目指すか。」
翡翠「まあ、ふつうに考えればそれが最適解ですね。転地療養といえばスイス。ジュネーブは金融都市。1850年から右肩上がりでその地位を上げます。スイスの銀行というブランドが確立して、世界中から怪しい資金が流れ込んできますから。」
青水「プライベートバンキング....マネーロンダリングという概念が浸透して糾弾されるようになるまではまだまだ時間がある。アルフレードも上手く立ち回れば金持ちになれるぞ。」
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ヴィオレッタ「アンニーナ...そして皆さん...」
アンニーナ「ヴィオレッタ様...アルフレード様は?」
ヴィオレッタ「狩りに行くと言ってたけど、もうすぐ帰ってくるわ、きっと。」
桜「アルフレードのパパがもうすぐここへやって来る。」
翼「あなたたちを別れさせようとしているの。」
ヴィオレッタ「え?そんな...」
紬「大丈夫、私たちが守るよ。」
桜「厄介なことにならないようにパパが来たら隠れていて。アンニーナ、お願いね。」
アンニーナ「わかりました。ヴィオレッタ様、こちらへ。しばらく使用人室にお隠れください。」
ヴィオレッタ「わかったわ。お願いね。」
桜「さて、アルフレードとパパはどこで遭遇するのかしら?」
紬「私、先回りしてアルフレードに接触する。今日はJK制服だから動きが軽快だよ。」
翼「私はパパを足止めする。JK制服とスマホで混乱するだろうからしばらくは翻弄できるよ。」
桜「頼んだぜ、JK旅団!」
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女神「これだよ、私が求めていたエンターテインメント!まるでスパイ大作戦じゃないか。散開して作戦実行!司令塔の桜!」
翡翠「女神様、興奮してシャンパンをラッパ飲みしないでください。お行儀が悪い。」
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紬「アルフレード!」
アルフレード「おや、紬じゃないか。今日は珍しい服を着ているね。」
紬「アルフレード、あなたはジュネーブに行くのよ。」
アルフレード「は?何を言ってる。ぼくはここでヴィオレッタと...」
紬「ヴィオレッタも一緒よ。でも、それは秘密にしておいて。良い?これから大事なことを言うから良く聞いて。」
アルフレード「何だい?」
紬「あなたはヴィオレッタを守れるように一人前の男にならなければならない。良いわね?そのためには学業をしっかり修める必要があるの。だけどパリにいたままだとそれは叶わない。これまでの経緯やら人間関係が邪魔をするわ。なのですべて断ち切ってジュネーブのアカデミーで学びなさい。あの町はこれから金融都市として大きな発展を遂げます。その一角に食い込むのよ、自分の力で。」
アルフレード「お、おう。言ってることはわかる。」
紬「卒業して一人前になるまでの資金は私たちが提供します。四の五の言ってないで受け取れ、坊や!」
アルフレード「はい...マドモワゼル。」
翼「あ、なんか豪華な馬車が来た。きっとあれだ。………… ヘイ!カモン!ピック・アップ・ミー!」
ジェルモン(アルフレードのパパ)「なんだ、君は!」
翼「(スマホアプリを音声モードにセット)私は日本のJKだよ。」
ジェルモン「は?なんだこの小箱は?JK?何の略語だ?」
翼「(おっと私としたことが...)えーと、アルフレードのパパですよね?ヴィオレッタの家に行くんでしょ?」
ジェルモン「ああ、父親のジェルモンだ。その通り、ヴィオレッタさんの家に行くところだ...」
翼「私もなの。一緒に乗せて。」
ジェルモン「かまわんが、君は?」
翼「申し遅れました。私はヴィオレッタとアルフレードの友だちで翼と言います。日本から来ました。」
ジェルモン「日本?知らない国だ。」
翼「え?ご存じないの?もったいない。黄金の国ジパングだし、すき焼きと芸者だし、すごい国ですよ、ジャポン。」
ジェルモン「そ、そうなのか?」
翼「ほら、こんな魔法の箱まで作っちゃう魔法大国ですから。動画見せますね。」
ジェルモン「な、なんだ、これは?動物たちが踊ってる....」
翼「ちょっとその動き、真似してもらえます?」
ジェルモン「こ、こうか?」
翼「そうそう、お上手。撮りますよお!…… はいできた。ほら、ジェルモンさんも踊ってる。」
ジェルモン「な、なんだ、これは?!私が箱の中で踊ってるじゃないか!」
翼「(そろそろ紬の説得も終わったかな?)じゃあ、お楽しみはこれくらいにしてヴィオレッタさんの家に向かいましょうか。」
ジェルモン「そ、そうだな...」
アルフレード「あ、父さん!」
ジェルモン「おお、アルフレード、元気にしていたか?」
アルフレード「うん、父さんも、そして母さんや妹も元気なの?」
ジェルモン「ああ、妹のカロリーヌはもうすぐ結婚するかも知れん。」
アルフレード「それはめでたい。結婚式には何としても参加するよ。ジュネーブからプロヴァンスは遠いけれど。」
ジェルモン「何だって?ジュネーブだと?」
アルフレード「ああ、パリの喧騒を逃れてジュネーブで学業に専念することにしたんだ。支援者も見つかった。自立してやっていける。父さんにはもう心配をかけないよ。」
ジェルモン「おまえ...見ないうちにずいぶん成長したようだな。」
アルフレード「ジュネーブはこれから金融で発展する町だ。ぼくはそこで貴族も平民もない新時代で生き抜く力を得るんだ。」
ジェルモン「おまえ....見くびっていたぞ、我が息子よ。雑念を捨てて未来を見据えるか。」
アルフレード「5年後には孫を連れて会いに行けるよう頑張るよ、父さん。」
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女神「これでだいたい決まったな。もう転移させてしまおうか?」
青水「ダメだろ、最後までしっかり仕上げないと。」
翡翠「女神様は酒に酔わないけれど、飲むとどんどん雑になりますね。」
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桜「ねえ、アンニーナ。私たちそろそろ未来へ帰ることになりそう。」
アンニーナ「そうなんですか?」
桜「これ、1個だけ残しておいたアミアージュのルビー、あなたにあげる。日本から来た姫たちとの思い出に取っておいて。」
アンニーナ「こんな高価なものを。」
桜「うふふ、日本ではそうでもないのよ。じゃあ、そろそろ行くわね。アルフレードのパパがいなくなるまでヴィオレッタをお願いね。」
ヴィオレッタ「桜、本当にいろいろありがとう。」
桜「ジュネーブに行ったら毎日レマン湖畔を散歩して静養するのよ。元気でね。」
3人はホテルへ戻り、すべての精算を済ませ、部屋でドレスに着替えた。
桜「これ、着てから転移しないと、リュックに詰められない。」
翼「渋谷に戻ったらマネキン買わなきゃ。」
紬「スペースがどんどん削られる。」
桜「手狭になったら女神様がなんとかしてくれるよ、きっと。」
翼「そだねー。」
紬「あ、ムズムズが来た...」
あのドレス、脱いでも体積はとんでもないサイズです。クリノリンというスカートを膨らませる仕組みが場所を取ります。脱いでも家具みたいなものです。




