この時代のパリでメッシュのブラとパンツはハズいが、減るもんじゃないし、オペラ座へ行こう、武装して
ジオラインメッシュは実物を見たことも触ったこともないので、どのくらい恥ずかしいかわかりません。
仕立屋が助手を連れてやって来た。絵に描いたような揉み手と笑顔で、よどみない――けれども紬にも聴き取れない――口上で自己紹介をしたあとで、採寸に入った。採寸するので脱ぐようにとジェスチャーで示され、JK3人はブラとパンツになった。モンベルで買った速乾性のジオラインメッシュなので生地が薄い。恥ずかしい。
桜「うわ、下着のチョイス間違ったかも。」
翼「透けて見える。」
紬「羞恥プレイ開始。」
桜「思えばこんな下着、この時代の貴婦人は着てないのでは?」
翼「着てないね。どんなの着ていたかはわからないけど、たぶんブラという概念もなかったと思う。」
紬「仕立屋のおじさん、すごく興味深そうにガン見してる。」
翼「エッチな視線なのか職業的興味なのか判定不能。」
桜「まあ気にしなくても良いよ、見られたって減るもんじゃないし。」
翼「スケバンDNAからの姉御ムーブ。」
紬「旅先の恥はかきすて。持ってけ泥棒!」
羞恥プレイの採寸が終わり、前金で3000フランを支払ったので、仕立屋はフル稼働で完成させて明日納入すると言って去って行った。
桜「それじゃあ日も落ちてきたし、劇場に出撃しようか。」
翼「どこでイベントが発生するかわからないけど、たぶん女神様の思し召しだから、うちらが行ったところで発生すると思う。」
紬「すぐに名前が出てくるのはオペラ座かな。」
翼「えーと …… それ、ここから近い。」
桜「良し、出発だ。だがその前に....」
翼「その前に?」
桜「心まで鋼鉄に武装する乙女!武装だよ、諸君!」
翼「なるほど、桜だけにサクラ大戦。」
紬「悪を蹴散らして正義を示しに行こう!」
桜「君たち知ってるかい?この袴スタイル、武装に適しているんだよ。右袖にスタンガン、左袖に催涙スプレー、帯にタクティカルライトを差し、懐にゴグル。」
翼「おお、和装の特殊部隊!」
桜「ここか。なかなかの偉容である。」
翼「桟敷を目指そう。」
紬「入れるの?」
桜「そこは鼻薬、袖の下、スタッフを買収すればOK。」
紬「中の人たちが騒ぎ出したら?」
桜「何も知らない東洋のお姫様に悪意を向ける人はいないでしょ。」
翼「そうか、さすが桜、人心掌握に長けている。中の男たちはみんな女の目線の先で格好つけたがってるもんね。私たちに意地悪したら点数が下がる。」
桜「そゆこと。」
紬「Excusez-moi, êtes-vous ouvreuse?(失礼、あなた案内係?)」
案内係「ウィ、マドモワゼル。」
紬「Tenez, votre pourboire! (はい、チップよ!)」
案内係「C’est trop!(多すぎます!)」
紬「“いいからいいから、取っときなって。でね、ロージュまでの案内を頼みます。中に入れてもらったらあとは私たちでなんとかするから、あなたはさっさと捌けなさい。”」
案内係「“文字が出るその箱は何ですか?”」
紬「“これはね...魔法の小箱。”」
そう言ってウィンクを決めようとしたら両目を瞑ってしまった。
案内係「こちらです、どうぞ。」
案内係が鍵を開け、3人は豪華な桟敷に入室した。中の男女の視線が3人に注がれる。
紬「Désolées, nous ne sommes pas au bon endroit! (ごめんなさい、場違いな場所にでちゃった!)」
紬は相手のリアクションが発生する前にスマホの翻訳アプリを音声モードにセットした。
男「“かまいませんよ、どうぞこちらへ。まだ席はたくさん空いています。”」
男は自分の言葉が知らない異国の言葉となって謎の箱から流れるのを聞いて腰を抜かしそうになった。
紬「ふふふ、驚かないでください。これは翻訳機なのです。私、少ししかフランス語が話せなくて。この子は英語を少し(peu)、この子は英語とドイツ語を少し(peu)、そして私は英語とフランス語を少し(peu)。プートリオです。」
男「いや、笑うところが見つからないんだが...それより、その翻訳機、まるで未来技術だ。」
紬「これはサイバー国家ジャポンが技術の粋を結集して開発したスマートポン、つまりpont intelligentです。賢い橋です。それ以上の説明はできません。国家機密です。」
翼「おいおい紬、話を変な方向に盛るなよ。この後が面倒くさくなるぞ。」
桜「いや、このくらいわけわからん設定にしたほうが姫の神秘性が高まる。」
美しい女「その衣装、素敵ですわね。ジャポンってどこにありますの?」
桜「ジャポンは太平洋の彼方、太平洋は新大陸の彼方....つまり大西洋を越えてアメリカ大陸を横断して、さらに太平洋を越えた先に浮かぶ美しい島国です。」
翼「黄金の国です。」
**************************************
女神「おい、見たか?あいつらスマホと紬のなんちゃってフランス語だけですっかり場の空気を掴んでしまったぞ。」
翡翠「芸人の才能があるのでしょうか?」
青水「ジェネレーション・ギャップで付いて行けん。」
翡翠「なんかあの子たちを見てるとアルコールが恋しくなりますね。しらふで見てるのが辛い。」
****************************************
桜「おい、おまえら、気付いたか?」
翼&紬「うん、気付いた。あの男でしょ?」
桜「そうだ。うちらの壮大な茶番に少しも興味を示さず、さっきの美しい女の顔ばかり凝視している。あいつだな、イベントに関係するのは。」
翼「つまりこの美人さんとあの根暗の関係か。」
紬「せめて何という作品かわかれば良いんだけど。」
桜「固有名詞に気をつけよう。そこから調べが付くはず。」
Trio-peu――トリオ・プー――、せっかく繰り出したのに完全に滑りましたね、紬さん。でも注目がスマホに集まったのでノーダメージです。




