1973年の八王子でスケバンに遭遇するJKトリオ
スケバン、本物は見たことがありませんが、テレビのスケバン刑事は見てました。何の因果かマッポの手先。原作も知らず何となく眺めていただけなので、「何の因果」なのかはいまだに謎ですが。
女神「良し、良い感じだったぞ。かなり笑えた。合格。」
桜「あのー、私たちって女神様専用の芸人なのでしょうか?」
女神「何だ?不服か?」
桜「いえ、とんでもありません。誠心誠意務めさせていただきます。」
紬「必要とあらばパンツも脱ぎます。」
翼「おい、余計なことを言うな。」
女神「次の転移だが、1973年の日本だ。詳細は行けばわかる。物語ではない。物語はおまえたちが作るのだ。」
桜「安全そうな場所ですね。お気遣いありがとうございます。」
女神「気遣ってないぞ。笑いのイベントが起こりそうなので楽しみにしている。」
翼「今度は何を持っていこうか?」
桜「芸人って決められたっぽいからモノボケ用に何か見繕っていこう。」
紬「ドンキに行こう。ラッパとかサイリウムとか紙吹雪とか、いろいろあるはず。」
翼「あとタバコの煙対策に活性炭入りマスク。昭和はヤニ地獄だったのを思い出した。」
桜「ここは日本だけど場所はどこだろう?」
翼「1973年って言ってたけどどんな時代だったのか全然わからない。」
紬「日本史で習った高度経済成長はもう終わってるはずだから、まあ可もなく不可もなくって感じの静かな時代だったんじゃない?」
翼「この時代の日本は.....あ、やばい、お金がない。」
桜「ちょっと待って ………… マノンの回のリーヴルとお岩さんのときの江戸の通貨、そしてウルトラマンのときの日本円がリュックに入ってる。まだ換金してなかった。」
紬「ウルトラマンの回は1967年...だとすると現時点より6年前、大丈夫、お金使えるよ。いくら残ってるの?」
桜「だいたい4万5千円。」
翼「ホッとした。ひとり15000円、外食とホテルぐらいはなんとかなりそう。」
紬「まず煙たくなさそうな甘味喫茶にでも入って現状を確認しよう。」
翼「安心して飲み食いできる世界は優しい。」
店員「いらっしゃいませ。」
翼「禁煙席はありますか?」
店員「いえ、とくにそういう席は...」
翼「じゃ入り口に近いこの席で。」
店員「どうぞ。いまお水をお持ちします。」
桜「ここは人の出入りで換気されるから大丈夫だ。」
紬「八王子だ、ここ。」
翼「え?」
紬「メニューに書いてあった店の電話番号、八王子番号だ。」
桜「うちのパパの実家がある。」
翼「行ってみよう。」
桜「いや、爺ちゃんは1950年生まれでまだ23歳。爺ちゃんは入り婿だから家に行ってもいないよ。」
紬「へー、そうだったんだ。じゃあ婆ちゃんがいるんじゃない?」
桜「いきなり未来の孫が来たら混乱するでしょ。」
紬「とりあえずここが八王子で、桜のパパの実家がある町という重要情報は確認できた。」
翼「じゃあいつもの、犬も歩けば棒に当たり、JK旅団はイベントに遭遇ってことで歩いてみよう。」
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青水「どうした、女神、なんだかわくわくしてるな。」
女神「ふっふっふ、おまえら“Back to the Future“という映画を知ってるか?」
翡翠「もちろんですよ。過去のパパが過去のママと結婚しないと自分の存在が消えるのでタイムマシンで過去に飛んで何とかしてあげる話です。」
女神「ふん、知ってるならそれで良い。まあ見てろ。」
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翼「うわ~、繁華街がうるさい。」
桜「どの店も好き勝手に広告をスピーカーで流してる。」
紬「まだ公害という概念が浸透していないみたい。」
桜「道路にゴミが散乱してる。民度低いな、昭和の日本人。」
翼「ねえ、あそこに立ってる人、目を鋭くしたヴァージョンの桜みたいだよ。」
紬「めっちゃこっちを睨んでる。桜のおばあちゃんかな?」
桜「うわ、あの温和な婆ちゃんがヤンキーだったなんて信じたくない。」
スケバン風の女「おいおまえら、どこ中だ?」
紬「えーっと、いちおう高校に進学したので高校生ですが。」
スケバン「んなこたあわかってんだよ!どこの中学を出たのか訊いてんだ、このタコが!」
紬「港区立十番中学です。」
スケバン「はあ?港区だあ?お嬢が出張ってくるところじゃねえぞ、ここは。」
翼「えーと、訊かれてませんが私も港区で、区立白金台中学です。部活はブラスバンド。」
スケバン「とりあえず縄張り外の通行人か。通って良いぜ。揉め事起こすなよ。」
桜「あのっ....私は港区立広尾中学出身の一条桜と申します。名乗りましたので、お名前を伺っても良いですか?」
スケバン「はあ?名前だと?....まあ自分から名乗って筋を通してるから名乗ってやるよ。一条桃だ。覚えておけ。…… おまえ、よく見たらあたしに顔が似てるな。………… (まさかクソ親父がよそで作ったガキ?まさかな。だったら一条なわけねえし、広尾ってのも変だ。思い過ごしだな)……その顔で悪さするんじゃないぞ。とばっちりを食うのはいやだからな。」
桜「はい、一条桃さん、肝に銘じます。」
桃「姓名全部呼びすんな。桃で良い。」
桜「わかりました。またお目にかかりましょう、桃さん。」
桜「やばいやばいやばい。婆ちゃんだった。名前が桃、年齢も合ってる。」
翼「桜にはヤンキーDNAが...」
紬「広尾の狂犬...」
桜「やめて!」
翼「桜がちょっとパニックなのでお店でクールダウンしよう。」
桜「お、おう!」
紬「桜のお婆ちゃんって今はどうなの?」
桜「70歳で元気だよ。爺ちゃんと一緒に有機農法で野菜作ってる。まあ趣味みたいなものだけど。生活は家賃収入だけで十分だから。婆ちゃんの父親、曾爺さんがニュータウン開発で大儲けしたんだって。」
翼「ヤンキー→マイルドヤンキー→マイルド婆さんに進化したのか。」
桜「婆ちゃんに会うのがイベントだったのかな?」
紬「それはないな。女神様が求めているのは退屈しのぎのエンターテインメント。現在の状況ではまだ大笑いにならない。出だしのクスリ程度だ。」
翼「うん、次に来るね、爆笑イベントが。」
店を出てしばらく歩くと、桃が路上で高校生グループに声をかけていた。別に喧嘩を売っているわけではないようだ。桃はJKトリオに気付くと寄ってきた。
桃「よお、また会ったな。おまえら、時間あるか?」
紬「はい、使っても減らない時間があります。」
桃「何だ、それ?まあ良いや。おまえら、金持ってるか?」
翼「えーと、少しなら....あの~、オカツアゲでございますか?」
桃「はあ?“オ”を付ければ許されると思うなよ。カツアゲなんてだせー真似するか!違うよ、ライブのチケットだ。小ホールで知り合いがライブやるんでチケットを売ってやってるんだ。」
紬「買わせていただきます。おいくら万円ですか?」
桃「くそだせえギャグをかますな。悪いな、ちょっと高いけど1枚500円だ。」
桜「この時代のライブ、楽しみにしてます。」
ステージにはギターを抱えるシンガーがひとり。どうやらソロの弾き語りライブのようだ。客席は1/3程度の入り。
シンガー「貴重なお時間を割き、歌を聴きに来てくれてありがとう。次がラストです。俺が最も敬愛するシンガー、ボブ・ディランの“Blowing in the wind“、俺が詩を訳しました。聴いてください。」
なかなかの熱演で、演者のこの歌への思いが伝わってくるような歌詞だった。会場の入りの割には多めの拍手が聞こえた。シンガーは深くお辞儀をしてステージから捌けた。
桜の婆さんが桃なの?桃さんのお母さんは梅だったりして...




