ファウストとメフィストフェレスの契約の場に同席して契約内容を精査する桜
有名な契約の場面です。JKムーブは相変わらずです。
戸外からファウストの名を呼ぶ声がする。悪魔が再訪したのだろう。
ファウスト「入れ。」
悪魔「3回言ってください。」
ファウスト「面倒くさいな。入れ、入れ。」
悪魔「お招きありがとうございます。」
桜「私たちも同席させてもらうわよ。」
悪魔「かまいませんよ、お嬢様方。」
ファウスト「おまえは私に何を望む?」
悪魔「そのしけたなりでは人生が楽しめませんから、私のように豪華な貴族の衣装に着替えてこの世の快楽を味わい尽くしましょう。」
ファウスト「見ての通りの老いさらばえた身だ、今さら着飾っても意味はない。日々の雑事の繰り返しが腹立たしく、夜に寝ようとしてもろくでもない悪夢が押し寄せる。死ねば楽になれるのにと思うだけの日々だ。」
悪魔「とは言っても、いざ死神がお出迎えに来たら喜んでその手を取るとは思えませんがね。まずその老いた姿を何とかしてから、日々の雑事とは無縁な世界へお連れすることもできますが。」
ファウスト「見返りに何を望む?」
悪魔「この世にいる限り何も。その代わりあの世に行ったら関係は逆転で、私に尽くしていただくというのはどうです?くっくっく。」
ファウスト「あるかないかわからないあの世なんてどうでも良い。」
桜「ちょっと待って、ファウストさん、そんな簡単に地獄行きを決めちゃって良いの?あなた、キリスト教徒なんでしょ?」
ファウスト「表向きはそう振る舞っているだけだ。学者と信仰は相性が悪い。宗教は信じることを要求する。だが学問は疑うことで始まる。この俗世でキリスト教徒ではないと主張して回っても何の得にもならないから信徒のふりをしているだけだ。地獄?そんなものがあるのなら、教会はそのエビデンスを示すべきだろう。」
悪魔「清々しいですな、ファウスト博士。ならば契約していただけますか?この世にいる限り私はあなたの下僕、死んで虚無に飲み込まれたあとはあなたの魂を私が自由にできる。」
ファウスト「ああ、かまわん。もしこの世を好きなだけ味わって満足し、ああ、この瞬間を永久プレパラートに包んでしまいたい、時よ止まれ、おまえは美しいと言ったらこの身はくれてやる。」
メフィスト「本当にそれで...」
桜「ちょっと待って!さっきと約束が違ってきてる。さっきは命が尽きるときまで、悪魔くん、君は先生の下僕を務めると言ったよね。だけど、今度はファウスト博士が、時よ止まれと世迷い言を言ったらゲーム終了っておかしくない?ルールが変わって悪魔有利になってる。」
紬「そうだそうだ!ゲームにチートコードを入れるな!」
桜「だいたい人間の満足ってその瞬間にだけ訪れて、その1分後にはその余韻とともに日常が始まるものなのよ。いくら命じても時は止まらない。博士なのにそんなこともわからないの?」
ファウスト「うむ、確かに。つい独白の高揚に酔って理に合わぬことを口走ってしまった。学者失格だな。」
悪魔「お嬢様方の機転でルールが元に戻りましたな。良いでしょう、ではその命が尽きるときまで私があなたの下僕として尽くしましょう。さあ、この契約書にサインを。」
桜「ちょっと見せて。何これ、髭文字で読めないじゃん。Googleレンズで翻訳できないからチェックもできない。第三者チェックを拒む契約書なんてありえないんですけど。」
悪魔「小煩い雌どもですね。いいでしょう、ではほら。」
桜「じゃあこの内容を日本語で読み上げて。録音するから。」
悪魔「録音とは?」
桜「文字通り音声をそのまま記録保存することよ、証拠として。」
悪魔「わかりましたよ。えーと、私メフィストフェレスとファウスト博士は以下の点について合意した。~~~~~~~~~~ 契約は血の署名によって締結される。」
桜「ふーん、あんたメフィストフェレスって名前なんだ。長くて面倒くさいからこれからメフィストって呼ぶね。」
メフィスト「かまいませんよ。」
ファウスト「署名したぞ、手をチクリ刺して採血するのがふつうだろうが、実は足にかさぶたができていてな、そこから血を採ってサインした。問題なかろう?」
メフィスト「ちょっと汚いですけどしかたがありません。契約終了です。それでは広大な世界へ旅立ちましょう。お嬢様方、ごきげんよう。」
翼「あ、メフィストがマントを翻したら気球が出てきた。」
紬「えーと、熱気球の発明は…………1783年、フランスで。このファンタジーっぽい何となく中世よりずいぶん後だよ。」
桜「作者のゲーテさんが好きだったんじゃない?気球に乗って遊覧飛行って夢があるから。」
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女神「ふむ、なかなか健闘したな。悲劇の芽をひとつ摘んだ。」
青水「翡翠もファウストを助けに行ったとき似たような理屈で不利な契約内容を修正したよな。」
翡翠「あれは誰が読んでも理不尽ですからね。しかも、その回収方法がちょっと問題で、ファウスト博士は“もし~~~ならば、時よ止まれ、おまえは美しいと言えるだろう”と非現実話法で言ってるだけで、直説法ではありません。」
女神「ファウストとメフィストが飛んで行ってしまったので、いったんJK旅団も戻すことにしよう。」
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女神「おい、おまえたち。場所が変わるのでいったん東京へ戻した。30分後にまた転移だ。トイレ休憩だな。」
翼「その間に次のイベントについて予習します。」
紬「PCがあると予習がはかどる。」
桜「飲み物買ってくるけど、希望は何?」
紬「ドクペ。名前にドクターが入ってるので縁起良さそう。」
翼「私は午後ティー。作業の傍らに置くのにちょうど良い。ペットボトルだから飲み残しは転移先に持って行く。」
紬「ファウストはあのあと魔女の台所というところに行って若返りの薬を飲むよ。それから人生初のナンパに挑む。」
翼「え?悪魔の力を借りて若返って、最初にやるのがナンパ?何かイメージ崩れた。立派な学者だと思っていたのに。」
紬「高齢童貞で魔法使い、大魔道とクラスチェンジをくぐり抜けてきたのかも。」
翼「ありえる。」
紬「あ!そのナンパが悲劇を生む。次のイベントはきっとこれだ。」
翼「どんな悲劇。」
紬「ナンパした女を孕ませて捨てる。」
翼「うーわ、サイテー!」
桜「話は聞いた。はい、ドクペと午後ティー。許せんな。」
紬「ナンパを邪魔して失敗させる、これが次のミッションだね。」
翼「何を持って行こう?」
桜「荒事はなさそうだからスタンガンとグレネードはいらないかな。」
紬「ナンパシーンをぶち壊せそうなもの、コンビニで探して持ち込もう。」
ハウスに冷蔵庫がないから外の自販機に買いに行かなければならないのが面倒ですね。さて次回はマルガレーテの悲劇を止める作戦です。




