海軍省へ行って超弩級戦艦空母大和改を取材してきたよ
桜「原爆を先に作ってニッポン大勝利のシナリオ、ひどすぎた。」
翼「ひどすぎる結果をゴジラならぬゴジロでエンディングにした私たちもひどすぎたんだけど。」
紬「ひとつ真面目なこと言ってもいいかな?歴史改変国士作家さんたちは気付かないようだけど、実際は当時の日本で核実験なんかできなかったんだよ。エヴァンゲリオンのヤシマ作戦って知ってる?日本中の電力を一時ストップして陽電子砲に供給したんだけど、あれと同じことをしないとウラン濃縮に必要な電気エネルギーが賄えない。いや、同じことをしても当時の日本では無理。慢性的な電力不足だったんだから。通常戦闘も工業生産もすべて停止してもウラン濃縮はできなかったはず。」
桜「なるほどね。何としても日本を勝たせたくて設定条件をいろいろ無視しちゃうのか。それって理系の国士様に怒られちゃうんじゃないの?」
翼「理系の国士様と量産型架空戦記作家様に接点はないのかも。」
紬「あのさ、私どっちでもないのに気付いたよ。そのくらい感じ取ってよ。」
翼「ちょっと検索すれば、1940年代の米国オークリッジ施設で消費した電力は当時の日本の総発電量を上回っていたというエビデンスに逢着するはずだよね。」
紬「エヴァを観てないのが悪い。」
桜「というわけで、原爆なしで日本大勝利の架空戦記へ転移しよう。今度は途中で逃げ出さなくても大丈夫。」
翼「通常兵器で日本大勝利だからね。」
桜「前のコスを使い回しでいいかな?」
紬「憲兵に日の丸勝負で勝てたけど、もっと日の丸を強化したい。」
翼「何の勝負してるの?」
紬「愛国心。」
紬「これでよし。皆の衆、いざ参ろう!」
桜&翼「アストラール・トランスファー!」
桜「うわ、もう戦勝気分!」
翼「さすが鼻息の荒い国士様系架空戦記の世界。」
紬「戦時中の国民の暮らしには興味がないのでスルーして、武器や兵装のチート化には血道を上げる。」
桜「鼻息荒く“勝利ニッポン!”のシュプレヒコール。」
紬「それを読んで“胸アツ”とコメントを書く読者様たち。」
桜「美しいな。」
翼「美しい。」
紬「美しい国ニッポン。」
桜「なんか聞いたことがあるようなないような。」
紬「美しいって自画自賛する時点でもう危ないんだよ。」
翼「そういえば英語の聴き取りは苦手だけど、ニュースでドナルド大統領が出てくるとすぐビューティフルって言うよね。」
桜「言う言う。ビューティフル・ドナルド。」
翼「どんな珍兵器で勝利を収めるのか見に行こうか。」
紬「取材と言えば記者だ。しかし報道規制の戦時下、どういう記者なら歓迎されるか。」
桜「そりゃ愛国忖度記者に決まってるだろう。鋼鉄の愛国乙女学校新聞団。」
翼「愛国の感動を虹色に染め上げて地方の津々浦々まで届ける。」
紬「まずは何と言っても海軍だね。海軍士官は陸軍士官をきっと下に見てると思うので、先に海軍に取材に来ましたって言うと機嫌が良くなる。」
桜「そしてあとで陸軍へ行ってもそのことは伏せておく。これが大事。」
翼「名前が翼なので気になるんだけど、日本軍にはなぜ空軍がないの?」
桜「それ....言ったらあかん。」
紬「海軍省は霞ヶ関だよね。」
桜「中央官庁はすべてそこでしょ。危機管理的にやばいけど。」
翼「やって来ました、海軍省。」
桜「海軍士官ってすごいエリートなんだよね。」
紬「海軍兵学校、広島県江田島にあって日本中から秀才が集まっていたらしい。」
翼「東大法学部と同等、いやそれ以上。学力だけでは入れない。」
桜「健康、体力、人格、すべて考査の上で入学が認められる。」
紬「では参ろうか、皆の衆。」
受付「海軍省へようこそ。御用は何でしょう?」
桜「取材です。我々は鋼鉄の愛国乙女学校新聞団、長野県から参りました。
翼「彼の地は辺境の山国であるがゆえ皇国海軍の実力と活躍が知れ渡っておりません。」
紬「そこで我々が学校新聞を通して海軍の栄光を広く知らしめようと思ったわけです。」
受付「そうでしたか。お若いのにその見識は尊敬に値します。広報に問い合わせますので少しお待ちを。…………書記が案内いたします。どうぞ。」
広報「広報担当の吉岡です。きょうは取材に来られたと伺いました。」
桜「はい、私たちは鋼鉄の愛国乙女学校新聞団です。海軍の情報が届かない山国に海軍の活躍の栄光を轟かせるためにやってきました。」
翼「軍の機密に触れない範囲でいろいろ教えてください。」
吉岡「了解しました。まずどのあたりの話をお聞きになりたいのでしょう?」
紬「何といっても日本人の誇り、大和です。」
吉岡「大和は改修されて超弩級戦艦空母大和改になりました。全長372メートル、全幅76メートル、基準排水量92000トンです。」
桜「まさに超弩級ですね。」
翼「武装は46cm砲が有名ですが。」
吉岡「それだけだと敵制圧に不安が残るので、ホーミングミサイルを搭載してます。対艦ミサイル大和、対空ミサイル天翔、対地ミサイル神風、いずれも射程が非常に長く、敵にとっては脅威となるでしょう。」
紬「万能感を刺激してワクワクします。」
吉岡「敵は卑怯にも対艦戦を回避して空爆で沈めようとしますので、空からの攻撃に対して対空レーザーも装備しております。」
紬「それならば“弾幕薄いぞ、何やってるの!”と艦長が叫ぶ必要もなくなりますね。」
吉岡「はい。もう弾幕という概念が必要なくなりますから。」
桜「戦艦空母とおっしゃいましたが。」
吉岡「はい、大和改にはジェットゼロ戦が60機搭載されています。」
桜「ジェットなんですか?」
吉岡「我が国は世界に先駆けてジェット戦闘機を実用化させました。この技術は枢軸の同盟国ドイツにも移転させていません。」
翼「レシプロエンジン搭載機ではもう大人と子どもの勝負じゃありませんか。」
吉岡「ターボジェットエンジン搭載で最高速度は音速を超えマッハ1.2、巡航距離は1800キロメートルです。」
桜「こんなに詳しく情報開示しても大丈夫なんですか?」
吉岡「アメリカの技術力では解析不可能でしょうし、遠くから畏怖しつつ眺めるしかありませんからな。これの同型艦武蔵改もあります。そしてこのふたつを旗艦としてふたつの外洋艦隊が太平洋に展開しております。」
翼「向かうところ敵なしでしょう。」
吉岡「はい。敵はあきらかに会戦を避けています。行く手を阻む敵艦はほぼ皆無です。」
桜「教えていただいた内容、および提供された資料を元に日本海軍最終兵器の見出しで次の記事を発表したいと思います。いかがでしょう?」
吉岡「すばらしい。これで長野県の国民も海軍の栄光に触れることができましょう。よろしくお願いします。」
桜「ううう、量産型架空戦記の作家さんたちの妄想が全部詰まった万能戦艦空母。」
翼「波動砲が付いていないだけマシ。」
紬「次は陸軍だけど、もっとすごいものが出そうで不安だわ。」
超弩級戦艦空母大和改、すごいっすね。架空戦記には夢がいっぱい詰まってます。きっとこの他にもトンデモ潜水艦とか出てくるんでしょうね。水深500メートルを航行可能で、水中から対地ミサイルを発射できるやつ。小学生のころそんなマンガを描いていた記憶があります。子どもの夢を捨てずに追いかける架空戦記作家様、ステキです。




