S組は優勝できなかったし、アンジュが献身的犠牲を払って男ふたりゲット
桜「さて優勝はどこかな?」
翼「ドーラたちも頑張ってたしね。」
紬「初日に島3に上陸できれば勝ち筋があるんじゃない。」
桜「あ、優勝チームが到着したみたい。」
翼「晴れやかな笑顔。あれは.....」
紬「知らん人たちや。」
桜「あらま、S組は敗退か。」
翼「優勝チームはD組みたい。」
紬「島1だけ踏破のダークホースか。オッズが低いかも。」
桜「賭けとんのかい!」
紬「たぶんみんなやりそう。」
翼「優勝者インタビューが始まったよ。」
D組リーダー「結果が出せてうれしいです。島に到達できるかどうかが勝負の分かれ目でした。特殊なスキルがないので泳ぎ切るしかありません。30kmはマジきつかったです。でも6人で協力して、魔力で酸素形成を途切らせないようにして乗り切りました。島に上陸してしまえばこちらのものでした。魔物は出ない。環境は温帯。食糧調達に不便もありません。我々は堅牢な宿営地を設営して疲れを取り、翌日は島内の樹木を利用して筏を作りました。そこから先は勝ちパターンです。本当にありがとうございました。」
ドーラ「やあみんな、負けちゃったよ。」
桜「あ、ドーラ。お疲れ。残念だったね。」
ドーラ「ああ、いろいろとね。」
翼「島4までは行ったんでしょ?」
ドーラ「行った。過酷な島だった。息ができない。毒霧の島。でもまあそれはモブリンとアンジュのスキルで何とかなった。食糧と水の備蓄も十分だった。だけど...負けた。」
紬「え、負けたって、モンスターに?」
ドーラ「ああ、甘かった。どうやら設定は6人全員で総力戦を仕掛けないと勝てないモンスターだったようだ。いわゆる完璧なパーティプレイ。タンクふたり、アタッカーふたり、キャスターふたり。でも私たちは環境維持に人員を割いたので戦闘能力が十分ではなかった。」
桜「負けたって...大丈夫だったの?」
ドーラ「とんでもない結末になったさ。ジーグルトがフェルディナントをかばって前に出てモンスターの攻撃を受けようとしたら...そのジーグルトをかばってアンジュが前に出た。そしてモンスターの攻撃を受けて負傷。教師たちが救助に来てモンスターを倒し、私たちは途中棄権となった。」
紬「アンジュは大丈夫なの?」
ドーラ「負傷と同時にフェルディナントが治癒魔法で応急処置をしたから大事にはいたらなかったけど.....いろいろと人間関係がね。」
紬「あ...悪役令嬢もののお約束。」
ドーラ「そう。フェルディナントとジーグルト、ふたりの攻略対象がアンジュの手に落ちた。」
翼「そうなるよねえ。命がけの献身は強い。」
ドーラ「私、もう悪あがきはしないでこのゲームからフェードアウトしようかな。」
桜「うん、それがいいよ。ここで悪あがきしたら本物の悪役令嬢になっちゃう。」
紬「最近はさ、ゲームに参加しないでセカンドキャリアを目指すというパターンも多いみたいだよ。ポーション屋を開くとか、魔族や獣人の捨て子を拾って山奥でスローライフとか。」
ドーラ「私はいちおうデイモン家の長女なので山奥スローライフは無理だな。せめて世俗的に成功しないと。」
桜「ならば商業的成功が一番お勧め。なにせ転生者なんだからその強みを活かさないと。転生前のキャリアで得た使えそうなスキルは?」
ドーラ「うー、大学が私立文系だったので何にも役に立たない。薬学部とか農学部に行っておけばよかった。」
桜「そう悲観する必要はないよ。私だって私立文系に進学するつもりだし、だからといってわざわざ負けに行くつもりはない。」
翼「そう、桜は天性のCEO気質だから。」
桜「商売で成功するにはまずブランディング。これがないと売れるものも売れない。何を売るか。アメリカの成功した商人が言ってたよ。ステーキを売るんじゃない、シズルを売れ、と。シズルってステーキを焼くジューっていう音のことね。体験の期待みたいなものに惹かれて人はモノを買うんだって。」
紬「あ、わかるかも。モノ自体じゃなくてそれがまとうオーラに惹かれて買っちゃう。フィギュアとか。」
翼「あんたのそれはちょっと特殊だから。」
ドーラ「なるほど、幸福の約束...別に果たされなくてもいい。約束がうれしい。」
桜「別に特殊技能じゃなくていいんだよ。現代日本で知り得た魅力要素、それをこの世界で提案できれば。」
ドーラ「貧乏だった私が憧れたのは...お風呂とサウナ。温泉は無理でもせめて銭湯に行きたかった。洗い髪からシャンプーの香りを漂わせて颯爽と歩きたかった。」
桜「それだ!考えてみればこっちに来てから風呂はおろかシャワーすら浴びてない。かつての転移で散々な目に遭ってきたのでトイレは用意したけど。」
翼「なければ作ればいいじゃない。シャンプーもネットで検索すれば代用品ぐらい作れるよ。」
紬「スパの建設にはお金がかかる。まずはドーラのお父さんを説得しなくっちゃね。あ、そうだ。持ってきてるじゃん、私たち。キャンプ用のポータブルバス。お湯は焚火で沸かすのが基本で、冷めたら電力湯沸かし棒で追い焚き。大型発電機と折りたたみソーラーパネルもあるよ。これでドーラのパパにお風呂体験をさせてその気持ちよさの虜にすればすぐ説得できるはず。私たちはネットで調べて石けんとシャンプーを詩作してみる。」
ドーラ「あ、本物のお風呂だ。ねえ、入っていい?転生してから一度もまともに入浴したことがないの。もう我慢できない。」
紬「もちろん。どうぞどうぞ。入浴剤もあるよ。」
ドーラ「あああ、この世の天国だわ。そうだ、絵師にこの姿を描かせてスパの看板にしよう。文字通り、看板娘。」
桜「じゃあ私たちは石けんとシャンプーを試作するから、ドーラはパパをこの快楽の虜にするんだよ。背中を流してあげると喜ぶよ、きっと。」
ドーラ「わかった。頑張る。」
ドーラは悪役令嬢を廃業して商売女...おっと、それ違う...商売に活路を見いだすようです。目指せ異世界のスパ女王。




