量産型ラノベの世界に転移してみたよ、まずは悪役令嬢
桜「教科書シリーズ終わっちゃった。」
翼「次どこに行ったら良いか思いつかない。」
紬「もううちら終わりなのかな?」
桜「でもアイテムボックスにアイテムが山ほど残ってるよ。資金も税務署にバレたらやばいほど。」
翼「まだ高2の前半だしなあ。ここでふつうの高校生に戻されても。」
紬「あ...ひらめいた。」
桜「何?ねえ、すごく期待してるんだけど。」
紬「うちら、これまで文学作品にいっぱい介入したじゃん。同じようなことを量産型ラノベにもできるんじゃ?」
翼「でも怒られるんじゃないの?」
紬「黙ってやれば大丈夫。バレなきゃ犯罪じゃないんですよってニャル子さんも言ってた。いわゆる量産型ラノベだから固有名はない。」
桜「いっぱいあるよね、種類も。」
翼「しばらくいっぱい遊べる。」
紬「うちらはふらりと訪れて邪魔しないように観察するだけ。」
桜「嘘つけ。絶対茶々入れるだろうが。」
翼「量産型ラノベの中の人たちは必死なんだよ。笑っちゃ...ぷぷっ...きゃう゛ぁいそうじゃないの!」
紬「思い出し笑いの進化形、未来想起笑い。」
桜「何から行こうか?」
翼「あまり好みじゃないけれど、だからそれゆえに悪役令嬢ものかな。」
紬「私もあのジャンルには虫唾が走る。なのでなおさら行ってみたい。」
桜「最初から邪魔しまくる気満々じゃないか。」
紬「ああいうのをありがたがる女...」
桜「ストップ!おい、やめとけ。女性読者様をディスるのはやめろ。」
紬「だって健気にしてたら意地悪なやつらがみんな不幸になって、よその国のもっと美しくてもっとお金を持ってる男性様が手を差し伸べてくれるんだよ。」
桜「いいじゃん、それで気持ちよくなれるなら。」
紬「男性様がみんなちょっと年上の王子様というのが許せない。年下ではダメなんですか?ショタに生きる場所はないのですか?」
翼「いけない、違う方向に感情が燃え上がり始めた。」
桜「まあ私としても健気なら救済が来るという予定調和にあぐらをかいているのはちょっと苦手だけどね。栄光は自らの手で掴んでこそだ。」
翼「こっちも何か違うスイッチが入っちゃったよ。」
桜「ともかくアイテムボックスに積むものに不備がないか確認して、買い足すものは買い足してから出発するよ。」
翼「行き先は量産型悪役令嬢物語。」
紬「ちょっと待って。行く前にコスチューム。悪役令嬢ものってだいたい時代は決まってるんでしょ?あのふわっとした異世界ヨーロッパっぽい。ああ、もう“的”とか“ぽい”とか曖昧だらけで腹立たしい。」
翼「チャッピーに訊いてみるね。…………出ました。悪役令嬢ものの時代は、結論から言うと:18~19世紀ヨーロッパ風をベースにした、超雑ミックス文化圏です。典型的には:フランス宮廷ドレス、英国寄宿学校、ドイツ貴族名、オーストリア宮廷菓子、ナポレオン風軍服、中世っぽい石畳、近代国家っぽい官僚制度、これらが全部同居します、だってさ。」
紬「コンパスがグルグル回ってみんなゲロを吐く。」
桜「ちょっと待って。1800年頃の服を着たら大変なことになるの知ってるよね?紬、おまえ渋谷のセーフハウスのベランダで...」
紬「わーわーわー、聞こえない!それ以上言ったらいくら桜でもテイザーで撃つ。」
翼「はいはい、あんたらふたりとも漏らしてるのみんな知ってるから、いまさらガタガタ言わないの。コスチュームは機能優先で行きましょ。設定気温をチャッピーに訊くよ…………あ、そう。18℃だって。スカート丈膝上、アウターは色違い、ちょいミリタリーの制服風でいいかな。」
桜「というわけで飛んできちゃったけど、ここどこ?」
翼「寄宿学校だね。うちら悪役令嬢ものの知識が雑だから、いかにもなところに来ちゃったわけ。」
紬「アニメも2~3話で離脱してるからよくわからない。翼、頼むね。」
翼「頼むねって、私だって観てないよ。ネットで雑に調べるくらいしかできないからね。」
桜「主人公が悪役令嬢なんだろ。で、だいたい現代人がゲームとかアニメの世界に転生してしまう。それも悪役令嬢の役に。」
紬「ふーん、見回したところそれらしいのはいないわね。」
翼「寄宿学校なんだからうちらの部屋もあるんじゃない。とりあえず部屋に行こう。」
紬「どこに自分の部屋があるのかわからない。」
桜「いや、それ以前にこの世界での自分の名前もわからない。どうしよう。ちゃんと設定してからくるんだった。」
翼「量産型ラノベに入り込む新シリーズだからいろいろ不手際だらけだ。これでは詰んでしまうのでいったん戻ろう。」
紬「くー、超ダサい。」
桜「で、ここはどこ?」
翼「この格好は何?」
紬「セーブポイントがバグったのかな。」
桜「こんなエロコスを晒しながら悪役令嬢ものの設定を考えるの?怒りで設定が歪むよ。」
翼「怒りで設定がシリアスに寄るようにとのことらしい。そうしないとみんなふざけるから。」
紬「名前から決めよう。短いのがいいな。クロエ・トロワーズ。」
翼「うーん、レア・ツヴィース。」
桜「ガンダムW方式か。うーんとね、ローザ・プリメーラ。」
紬「学園の名前は?」
桜「怒りに任せて思いついた。王立カリゴス学園。意味はないよ。歯ぎしりとパンチだ。」
翼「主人公の名前は?」
桜「これは慎重に決めないと。だって転生前は日本人だからリアルにかぶると申し訳ない。」
紬「私の名前をちょっと変形してツグミにすればいいよ。私が犠牲になるよ。」
桜「じゃあ姓は私から提供する。十条、十条ツグミ。」
翼「転生後の悪役令嬢の名前はドーラ・デイモン、イニシャルDDで悪そう。」
桜「悪そうか?まあいいけど。最後はヒロインだけど、めんどくさ。」
紬「アンジュ・デロイーヌ、安易でいい感じ。」
翼「男性陣は行ってから決めよう。はあ、くたびれた。……久しぶりに、アストラル・トランスファー!」
桜「あの人だよね、絶対。」
翼「取り巻きを連れて中庭を闊歩、髪型は縦ロール。間違いない。」
紬「目が合ったら目を伏せて会釈だよ。うちらモブなんだから。」
桜「ふう...さっさとあっちへ行け~。」
紬「私の思いつきで始めた企画だけど、思ったより大変だ。量産型ラノベって言っても、そもそも量産型ラノベをほとんど読んだことなかった。」
桜「もう始めちゃったから戻れないからな、クロエ。」
紬「う...ふたりの名前が出てこない。」
はい、始まりました、新シリーズ。
量産型ラノベの内容は雑な偏見に基づいていますので、厳しいご意見があれば承ります。




