メロスに伴走して障害を突破する、盗賊にはスーパー・ピョンピョンだ
桜「メロスー、あまり最初から飛ばさないで!」
翼「ペースメイクするのでスマホのテンポアプリに合わせて。」
メロス「了解した。」
紬「あと5kmで給水だよ。」
桜「邪魔になる通行車両や通行人がいないから気楽だね。」
翼「ただ勾配が厳しい。」
紬「結婚式は明日なんだから、今日中に着けばいい。体力を温存するためにも、休憩を挟みながらゆっくり進もう。」
翼「ねえメロス、あなたの村は何ていうの?」
メロス「ラグーザだ。石灰岩の台地で谷と丘陵の村だ。乾いた草地が広がり羊や山羊の放牧が盛んだ。」
桜「だとすると、ここからずっと登りになるわね。」
翼「ちょっと待ってね…………海抜600m、シラクサが海岸沿いの平地だったから...計算が大変。」
桜「どれどれ...E=mgh だから41万ジュールを上昇だけのために必要とするわね。」
紬「女神様の加護でなぜか使えるGPSによると、あと25km。5kmごとに休憩を挟もう。」
そこから3度の休憩で残りは10kmになった。急勾配はもうないので、このまま村まで進む。メロスはそれほど疲労困憊していない。これなら大丈夫だ。
妹「お兄様!」
メロス「結婚式を挙げるための品々はシラクサで用意した。明日は滞りなく式を挙げられる。」
妹「鉄の馬に乗ってらっしゃるこの方たちは?」
メロス「シラクサで知り合い、私を応援してくれるお客人たちだ。明日の宴にも参加していただく。」
妹「そうでございましたか。遠方はるばるラグーザへようこそ。何もありませんが、精一杯おもてなしさせていただきますわ。」
桜「ご結婚おめでとう。お兄様もお喜びで。」
翼「とても可愛らしいお嫁さんになりそう。お婿さんも幸せですね。」
紬「結婚は最初が肝心ですよ。しっかり躾けないと男はどんどんだらしなくなるから。」
翌日、ハレの日なのに天気は悪かった。黒雲が広がり今にも雨が降りそうだ。それでも村人が晴れ着を着て三々五々集まってきた。結婚式場は屋外に設えられたが、神事が終わるころにポツポツと雨が降ってきたので、人々は室内に移動した。そして飲めや歌えの宴が続いた。
桜「古代地中海の結婚式の宴、ひょっとしてオールがデフォ?」
翼「ちょと待って…………いや、それどころじゃないよ。三日三晩とか書いてある。」
紬「まずい。とっとと離脱してシラクサへ向かわないと。」
桜「ちょっとメロス、調子こいて飲んでるんじゃないわよ。」
翼「とっとと離脱してシラクサへ向かわないとヤバいよ。」
紬「うちら、外で待ってるから、さっさと妹と花婿に挨拶して離脱して。」
メロス「そうでした。あまりにも幸せなのでつい忘れるところでした。すぐ向かいます。」
桜「大丈夫かな、酒飲んで走って。」
翼「えーとね、古代ギリシャでなぜ三日三晩も宴が続けられたかというと、ワインを水で薄めて飲むからほとんど酔わないからだって。」
紬「三日三晩といっても寝たり起きたりなんだよ、きっと。」
メロス「お待たせした。妹とは今生の別れになるので、兄を誇りに思って生きるように言い置いた。婿には、羊と妹しか与えられるものはないがすべて託すと言ってきた。もう思い残すことはない。」
桜「よし、出かけよう。」
翼「約束の時刻まであと10時間。ふつうに進めば問題なく到着だ。」
紬「それさ、フラグを立てる台詞だから。」
翼「あ....」
桜「雨が降ってるのでレインポンチョを装着しよう。メロス、おまえもだ。濡れて冷えるとパフォーマンスが低下する。」
しばらく進むと、雨で川が氾濫し鉛色の濁流がメロスたちの前に立ちはだかった。渡し船も橋もない。一行は唖然として立ち尽くした。
桜「あちゃー、これじゃ進めない。」
翼「あと15kmだよ。」
紬「原チャリを捨てて進むとしても、川をどうやって渡るか。」
メロス「私は泳いでも先へ進む。」
桜「ちょっと待て、メロス。アイテムボックスに何かないか探してみる。……あった、ゴムボート。」
翼「それに乗ってもこの急流じゃ流されちゃうよ。」
桜「ふふふ、こんなこともあろうかと……じゃーん、グラップリングフック付きロープ。これで対岸の木に引っかけて引っ張って渡る。」
桜「あと何㎞だ、翼?」
翼「あと10kmぐらい。」
紬「ちょっと休憩しよう。もう無理。」
桜「そうか、紬にこれ以上走らせるわけにはいかないな。」
紬「何かある?アイテムボックス。」
桜「じゃーん、折りたたみ自転車。」
翼「桜がだんだんドラえもんになって行く。」
紬「よーし、行こう!」
3kmほど走ったころ雨が止んだ。だが雨が止むとすぐ、目の前に屈強な男たちが立ちはだかった。どうみても悪者、原作に出てきた盗賊団に違いない。
盗賊1「ふっふっふ、待てや、おまえら。身ぐるみ脱いで置いていけ。」
盗賊2「女3人は脱いだままここに残れ。」
桜「脱がないけど、ここに残ったら何する気?」
盗賊1「知れたこと。エッチな遊びの相手をさせる。」
盗賊2「つまり陵辱の限りを尽くすってことだ。」
桜「翼、録画した?」
翼「OK。」
桜「よし、証拠も保全したので無力化しよう。」
3人はテイザーを抜いて躊躇うことなく発射し、盗賊3人を無力化して結束バンドで拘束した。
桜「あと何㎞で残り時間は?」
翼「あと7kmで4時間。」
桜「楽勝だね。」
紬「こいつら引っ張って歩くのウザいので、逃げられないようにして付いて来させよう。」
桜「そうだなあ。逃げられるかもって一縷の希望を与えてそれを潰すのが楽しいかな。じゃーん、ドクター中松のスーパー・ピョンピョン。これを履いて先に進んで逃げ切れたら勝ち、途中でダウンしたら負け。とはいえ逃がすつもりはないので、紬、おまえが自転車で追って、逃げられそうになったらテイザーで撃て。」
紬「はーっはっはっは、走れ、跳べ!だが逃げられると思うなよ!」
そんなこんなで一行はシラクサに締め切り時刻の二時間前に到着した。衛兵に事情を告げ盗賊団を預けると、一行は王の間に進んだ。
メロス「王よ、約束通り戻って来たぞ。さあ我が友を返せ。私が処刑されよう。」
王「なんと、助かる道を捨ててわざわざ処刑されに戻って来たというのか。」
メロス「私は約束を違えぬ。たとえ濁流が阻もうと、たとえ暴漢に襲われようと、我が友との約束を破ることはない。それが義を尊ぶ男の生き方だ。王にはそれが理解できないと見える。」
紬「はい、録画いただきました。感動のヒーロー場面。これをアゴラで流しましょう。アイテムボックスに大画面モニターが入ってるからね。」
翼「これで処刑したら王の人気はダダ下がり。もう反乱が起こるね。」
桜「ここで王がメロスに駆けより感動の台詞を言う場面を撮れば、王の人気は爆上げ。どうします、王様?」
王「うぐぐぐ...、わかった。爆上げしてくれ。」
紬「かしこまり。では3、2,1,スタート!」
王「メロスよ、わしは猛烈に感動しておる。おぬしこそ真の勇者。ローレルの王冠を授け国民の模範としよう。」
紬「カーット!はい、お疲れ様。」
桜「よかったね、メロス。」
だんだんコスチューム選びが楽しくなってきました。中学国語教科書シリーズ、つぎはいよいよ第二位です。




