「注文の多い料理店」で突っ込み役として伴走してきた
桜「楽しい女子旅だった。」
翼「JRのCMに使ってもらえるクオリティ。」
紬「うちら、そこらのアイドルよりキャラが強いからね。」
桜「女優以上だよ。耐えてきた試練、こなしてきたミッション、助けた人々数百万人。」
翼「盛りすぎだろ。」
紬「異世界や琉球を考えるとそのくらいになるかもよ。」
桜「で、次の国語教科書人気作品は?」
翼「また賢治。もう中学校か小学校かわからない。“注文の多い料理店”」
紬「それ1分で読める超短編じゃん。」
翼「うん、仕込んだネタがひとつだけの。」
桜「それ、いくらでも使い回せる技かもよ。ハライチの漫才なら5つぐらいすぐ出してきそう。」
紬「指名の多いキャバ嬢。」
翼「さすがにそれは無理だわ。キャバ嬢が指名なんかできない。」
紬「失敗の多い美容院。」
翼「それも無理だって。」
桜「意外と難しい。」
翼「さすが賢治だ。」
紬「で、どうするの?行ってもすぐ終わるよ。しかも介入できない。」
桜「漫才の突っ込みとして伴走。」
紬「いいけど、字数が稼げるとは思えない。」
桜「翼、人気ランキング、次は何だっけ?」
翼「魯迅の“故郷”。」
桜「たしか中三で習ったっけ。印象が薄い。」
翼「ほぼすべての中学国語教科書に収録されてるってよ。」
紬「そこそこ身分が高い主人公が落ちぶれた故郷の実家に行って、家と家財道具を売り払う話。そこで昔の知り合いと再会して、みんな苦労してるんだと思う。」
桜「それだけ?それじゃ記憶に残らないよ。」
紬「そうなんだよ。どうする?行く?」
翼「二本立てでサクッと終わらせるならそれもありかも。」
紬「消化試合みたいで読者に申し訳ない。」
桜「たまにはそういう回もあるのさ。」
紬「ただなんというか、なんでこの超地味な“故郷”がすべての国語教科書に採用されなければならなかったのかって話だよ。みんな国語が嫌いになるよ。家でアニメやマンガに親しんでいるのに。」
桜「それな。ホント謎だよ、大人の理由。」
翼「大人っていっても今の大人じゃなくて昔の大人だよ、採用を決めたのは。何十年も引き継いできた。前例主義ってやつだね。」
紬「恐るべし、教育界。謎のガラパゴス校則もそのせいで残ってるんだ、きっと。」
桜「そんなモヤモヤした気持ちを抱えたまま転移しよう。スッキリするかもしれないし。」
翼「どっちも1920年代の作品だよ。日本と中国。」
紬「そういえば中国って初めてだ。」
桜「女神様にも守備範囲があったんだよ。東アジアとアフリカへは一度も飛ばされていない。」
翼「それはつまるところ作者の守備範囲。」
紬「馬脚を現したな。」
桜「ねえ、教科書の世界だからさ、久しぶりに制服で行こう。JKの原点だ。」
翼&紬「いいね。」
桜「いたいた、食べられることになるとも知らずに。」
翼「東京の成金紳士を描く賢治の冷たい眼差し。」
紬「このあと犬が死ぬ。そしてふたりは犬の死を悲しまずに損失金額でマウントを取り合う。」
翼「2400円と2800円。これは現代のレートでは...ちょっと待ってね...50~60万円だね。」
桜「今とほぼ一緒じゃん。大型犬はペットショップでそのくらいするよ。」
紬「賢治、調べたんだね。」
翼「あ、腹が減ったとか言いだした。」
紬「ていうか、これ遭難寸前なんじゃ。」
桜「山の中で飲食店を探すのか。なんかそんな番組があったような。」
桜「出た、レストラン山猫亭。」
翼「このふたり、かなりバカなんだけど。」
「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」
二人はそこで、ひどくよろこんで言いました。「こいつはどうだ、やっぱり世の中はうまくできてるねえ、きょう一日なんぎしたけれど、こんどはこんないいこともある。このうちは料理店だけれどもただでご馳走するんだぜ。」「どうもそうらしい。決してご遠慮はありませんというのはその意味だ。」
紬「ね、“その意味だ“っていうのがね。」
桜「もちろんここではレストランが遠慮しないって言ってるんだけど、そうじゃなくてもただでご馳走にはならないよ。」
翼「このあと次から次にドアがあって、誘い込まれて閉じ込められるんだけど気がつかないよね。」
桜「最初はブラシできれいにしろ。」
翼「次は鉄砲と弾を取り上げられて丸腰に。」
紬「その次は帽子と上着と靴。」
桜「靴は気付けよ。料亭じゃないんだからさ。」
翼「その次はレントゲン検査や飛行機に乗る前の検査みたいに金属のものを外させられる。」
紬「よく財布まで差し出すね。」
桜「次は身体にクリームと酢を塗れと。」
翼「そして最後に塩を塗り込めとなって二人は気づく。」
紬「でもさ、こいつら着衣のままだよね。食べるつもりなら全裸になってスープの風呂に入れというのが正解なのでは?」
桜「デブの裸を描きたくなかったんんだろ、賢治。」
紬「なるほど、一理ある。」
翼「あ、ついにレストランが本性を現してふたりが泣きながら逃げようとしてる。」
紬「でも賢治は死んだ犬を召喚して山猫を倒させ、ふたりは助かる。なんかモヤモヤする。」
翼「これさ、童話なんでしょ。だから死なせない。赤ずきん方式。」
紬「赤ずきんは1回食べられてるけどね。」
翼「子どもの読者もここはモヤモヤするんじゃないの。死んだはずなのに。」
桜「賢治、考えるのをやめたな。」
紬「ラストは、助かったふたりが東京に戻っても、怖くてワンワン泣いたせいで顔が紙くずのようになった。」
翼「読んだ子どもも困るよね、紙くずのような顔、イメージできない。」
桜「サービスで挿絵を残そう。」
翼「はっはっは、これで“注文の多い料理店”終了だね。」
紬「ねえ、なんだかんだいって、文字数はもう足りてるんじゃない?」
桜「ホントだ。よく足りたな。」
翼「じゃあここまでにして魯迅は次回にしよう。」
紬「うん、めでたい。」
改めて読むと、宮沢賢治、たまに投げやりになってますね。




