元領主盗賊団を討伐、馬車を手に入れ動く拠点にする
偵察に出ていたブリーゼが戻って来た。
ブリーゼ「いたぞ。馬車3台と徒歩10名が前方で休憩中だ。」
ライ「よし、では街道の脇の森のなかを進もう。樹上から攻撃できるポイントがあればそこから攻めて数を減らす。」
ブリーゼ「私が先行して縄ばしごを駆けて行くよ。おまえらは回収しながら後に続け。」
ブリーゼはそう言うと風のように姿を消し、樹上を駆けた。一行は難なく縄ばしごでそのあとを追った。樹上15メートルから盗賊団を見下ろす位置を確保した。馬車の外にいる10名はすぐに無力化できる。はやる気持ちを抑えてライは馬車の逃亡ルートを予測し、フリーゼを先行させた。
ライ「よし、攻撃だ。撃ち漏らすなよ。」
エルザ「撃ち漏らしたやつはウンチ漏らしにしてやるさ。」
麻痺矢が雨のように降り注ぎ、敵はその場に倒れて動けなくなった。弓を使えないゲルタは馬車の御者をふたり射殺した。残った馬車は仲間を捨てて逃走した。しかしその前にブリーゼが立ちはだかった。煙玉を投げつけ、御者を手裏剣で仕留める。馬車の中から元領主とその護衛が抜刀して現れた。
ライ「殺すなよ。そいつを引き渡さないと依頼完了にならない。」
ブリーゼ「なれない西洋剣で峰打ちか。加減が難しいな。」
ライ「俺がやる。おまえは護衛を頼む。そいつは殺してもかまわない。」
とは言ったものの諸刃のロングソードで峰打ちはできない。敵の武器を叩き落として殴り倒すしか手はない。元領主は栄養状態がよくて巨体だ。勝てるか?まあ背後にゲルタとエルザがいる。負けそうになったら加勢してくれるだろう。…………敵のソードは叩き落とした。だが元領主はサブウェポンの狩猟刀を抜いて抗うつもりだ。どうする?腕を切り落とすか?そのとき背後から投げ縄が飛んだ。エルザだ。ハンターのエルザが得意の投げ縄で元領主を転がした。俺は馬乗りになって武器を奪い、数発殴りつけた。作戦は短時間で終わった。麻痺させて拘束した配下が8人。殺害したのが11人。そして拘束したボス。
ブリーゼ「9人も連れてマークデブルクまで歩くのはしんどいな。私が市参事会の警吏を連れてくる。」
エルザ「それまで森に隠しておこう。街道だと目立つ。」
ゲルタ「ねえ、馬と馬車はいただいてもいいんじゃないか。4頭立てに改造して私たちの動く拠点にしよう。」
ライ「それは良いアイディアだ。報酬も手に入るし。」
ブリーゼ「私が帰るまで財布の中身は頂いておけよ。」
到着した警吏に盗賊団を引き渡し、引き渡し状をもらって報酬はあとで取りに行くと伝え、俺たちは6頭の馬を連れてゲンティンに向かった。そこで2頭を売却し、馬車職人を探す。馬2頭で30ターラーになった。
職人「いらっしゃい。ご注文は?」
ライ「森の中に2頭立ての馬車を3台放置してきた。そのまま放置するのは惜しい。この材料を用いて新たに4頭立ての馬車を1台作ってもらいたい。いくらかかる?」
職人「そうですな。出張費用も含めて25ターラー、つまり38グルデンになります。」
ライ「いいだろう。即金で支払う。」
こうしてマークデブルクの市参事会からの報酬を受け取る前に、盗賊団から巻き上げた2000グロッシェン、すなわち100グルデンと合わせて、暗緑疾風の資産はすでに120グルデンを超えた。ここから個人への配当を行う。グルデンは使いにくいので1人300グロッシェンがそれぞれの財布に収まった。みんなの顔が綻んだ。
馬車ができあがるまで、ゲンティンの口入れ屋で臨時の仕事がないか探す。たいしたものはない。狼、猪、狐...。だが狼以外は獲物として高く売れそうだ。猪の肉、狐の毛皮。エルザは狩人なのでやる気のようだ。ブリーゼは獣相手だとあまりやる気が出ない。ゲルタは手に入れたカネでしばらく自堕落に過ごしたい。
ライ「遊んでいる余裕はない。獣を狩ってカネを稼ぐ。稼いだカネはまた分配だ。親がいるなら仕送りもできる。親がいないなら....好きなものを買え。」
エルザ「やるぞ。実家には3人も細々と猟をして暮らしてるんだ。冬が来る前に暖かい衣服を買ってやりたい。」
ゲルタ「そういうことなら私も頑張るよ。両親に美味いものを食わせて長生きさせる。」
ブリーゼ「私は....似合わないけど孤児院に寄付だ。娼婦になる女の子を減らしたい。」
狩りは大成功だった。ブリーゼが口入れ屋に報告して市場から解体屋がやって来た。その場で貴重部位の価値を減らさないように手際よく解体し、荷馬車に積み込む。帳簿係が部位を数えながら支払額を計算し、手形を発行した。これを持って口入れ屋へ行けば25グルデンになる。
そんな生活を数日過ごし、馬車が完成した。馬車の色はもちろんダークオリーブだ。ブリーゼにも暗緑の衣装を着せた。馬車には組織のマークも入れてもらった。
新しい馬車を駆ってマークデブルクに到着し、元領主盗賊団討伐の賞賞金10グルデンを受け取った。依頼を受けたときは高額だと思っていたが、今となってははした金に思える。ゲンティンの狩りでしこたま稼いだし、余った馬も売った。資産は200ターラー、すなわち300グルデンに膨れ上がっていた。約束通り、仲間に多めに金を分配した。ひとり500グロッシェン。慎ましい家計なら1年暮らせる。それを持って暗緑疾風はメーザーに凱旋した。
ゲルタ「ママ!パパ!いっぱい稼いできたよ。立派な馬車も手に入れた。リーダーのライは本当に頼りになる。」
母「あらまあゲルタ、血色も良くて元気そうね。いっぱい食べてるのね。」
ゲルタ「はい、300グロッシェンあげる。これでパパとママもお肉をいっぱい食べて長生きして。」
父「こんなにか?大丈夫なのか、こんなにたくさん俺たちに与えて。」
ゲルタ「大丈夫、丈夫に産んでもらったお礼だよ。」
ライ「兄さん、ただいま。」
兄「おお、ライか。評判は聞いてるぞ。大活躍じゃないか。」
ライ「仲間に恵まれてな。そっちはどうなんだい?」
兄「村が成長して人も増えた。とくにエルベ河畔が栄えている。大きな船も係留できる。商人が荷下ろしして保管する倉庫もたくさんできた。渡し船事業は利益が大きい。マークデブルクへの道も整備が進んでいる。旅人がたくさん通る。村にたくさん金が落ちる。」
ライ「森の狩人が挨拶に来ただろ?」
兄「ああ、母と兄妹の3人で来た。森の管理の年間契約を結んだ。害獣の駆除、獲物の定期的な献上で年間1000グロッシェン。喜んでもらえた。」
ライ「そうか。あの家の長女が今の仲間のひとりなんだ。凄腕のハンターでな、役に立ってもらっている。」
兄「そうだったのか。さぞかし美人だろうな。妹が美少女だったし。」
ライ「変な気を起こすなよ。」
兄「ふん、おまえこそな。」
物語に出てくる地名はすべて実在します。Googleマップを開いて、16世紀末の状況を調べながら書いています。ファンタジーにもリアリズムを求める派なのです。ブリーゼ、いい働きを見せてくれます。




