くノ一風音、悲惨な転生、そして元領主盗賊団を追う
ライ「ふたりきりなので聞かせてもらうぞ。おまえは転生者だな。元はどこの忍びだった?」
ブリーゼ「風魔だ。」
ライ「なら近いな。俺は武蔵の小藩の御家人の三男だ。吹けば飛ぶような貧乏侍よ。」
ブリーゼ「私も下忍だから最下層だ。」
ライ「戦場で討たれたのか?」
ブリーゼ「いや、潜伏中に捕らえられ陵辱と拷問の末に息絶えた。」
ライ「それまた壮絶な....」
ブリーゼ「忍びの最後なんてみなそんなものだ。武士の道具だ。」
ライ「俺は偵察中に殿を務めて斬り殺された。弱いくせにかっこつけるとこうなる。」
ブリーゼ「下級武士から男爵家へ転生なら儲けものではないのか?」
ライ「男爵家と言っても領地が痩せて作物が取れず領民はみな飢えていた。もちろん領主の家も食うものが足りないので俺を傭兵に出して食い扶持を減らしたんだ。」
ブリーゼ「こうやって日本語で話をしているとおまえが日本人に見えてくる。転生前の名前は何だった?」
ライ「たしかにな。俺の名は長野資正だ。おまえは?」
ブリーゼ「風音だ。」
ライ「良い名だ。風の音色、ブリーゼに通じるな。」
ブリーゼ「名前だけは里でかぶるやつがいなければ好きに付けられたからな。」
ライ「転生すると転生先の死者の記憶がおぼろげに入ってくる。おまえの転生先はどうだったんだ?」
ブリーゼ「下忍より悲惨だった。下忍は里にいる限り飯は食える。だがブリーゼは孤児から娼婦になった。食うために身体を売って孕んだ揚げ句に性病も移されて死んだ。最底辺の女だったな。」
ライ「それは災難だったな。おまえもあの青髪の女神によって送られたのか?」
ブリーゼ「いや、青髪ではなかった。人を子リス呼ばわりする柔和な女神だった。私は油断したよ。マシュマロという甘い菓子を口に頬張らされ、甘えていいのよと言われて送られた先が地獄の最底辺。何が甘やかしだ。」
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女神「何だと!あのデブ女め、私の知らないところで勝手なことを!」
翡翠「変ですね。甘やかしの女神様は甘やかすのがお仕事なのにそんな悲惨な境遇に...」
青水「うむ、こればかりは説明がつかない。」
女神「ふん、あいつは元々そういう腹黒い女神なんだよ。世界にマシュマロと甘やかしをばら撒いて、溜まった負債を一気に不幸として誰かに負わせる。バレないと思ってヘラヘラ笑いながらな。」
翡翠「そんな裏設定があったのですか....」
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ライ「転生した俺は馬小屋で目が覚めた。傍らに剥き出しのロングソードが1本。属していた傭兵隊が全滅して、逃げる途中で盗賊に襲われて死んだと知った。そのあと俺を殺した盗賊ふたりを斬り捨てて財布を奪ってやった。」
ブリーゼ「そうか。おまえは馬小屋だったか。まだマシだな。私が目覚めたのは豚小屋だよ。裸ではないが乞食同然のボロを纏って目覚めた。武器もない。豚をぶち殺す力もない。とりあえず外に出て新しい身体の性能を調べたさ。少し重いが走って跳ぶのは問題なかった。となれば、盗んで逃げる生活を始めるしかなかった。」
ライ「くノ一としての戦力は期待していいんだな?」
ブリーゼ「忍び道具はだいたい使える。手裏剣、クナイ、煙玉、マキビシ、忍刀、子弓...どれもこの世界にはないものだが。」
ライ「なければ作らせればいいだけだ。俺もこの不自由なロングソードではなく、二本差しの太刀が欲しい。」
ブリーゼ「とりあえず子弓と忍刀代わりのショートソードが欲しい。」
ライ「わかった。あした買おう。」
翌朝、俺たちはブリーゼの武器を買ったあと、口入れ屋で問題の元領主の討伐依頼を受けた。口入れ屋はたった4人で挑むのかと驚いていた。
ライ「まずは聞き込みだ。俺は市場で待っているから、おまえたちは散開して聞き込みをしてくれ。」
3人が聞き込みに出かけたあと、俺は道具屋に赴き、煙玉が作れるかどうか尋ねた。煙玉がどのようなものか、道具屋は商売柄すぐに理解した。発火するための火薬と発煙物質を混ぜて衝突によって小爆発を起こし大量の煙を発生させる。それほど複雑な工程を必要としないと道具屋は言った。
ライ「ならばとりあえず10個作ってくれ。使い勝手が良ければ今後も買いに来る。」
道具屋「おまかせを。武器として使うんですよね?ならば煙に催涙効果を付加しましょう。逃げるのに最適です。」
ライ「最高だな。10個でいくらだ?」
道具屋「2グロッシェンです。」
よし、これでくノ一ブリーゼの武具はほぼ揃った。ん?いやまだだ。忍者といえば手裏剣。これは武器屋に発注しよう。」
武器屋「いらっしゃいませ。」
ライ「投擲武器を作ってもらいたい。鉄製で十字型だ。絵を描いてやる。」
武器屋「なるほど...十字型で回転して飛ぶわけですか。それほど難しくはありませんね。」
ライ「10個でいくらになる?」
武器屋「そうですね...3グロッシェンで承りましょう。」
ライ「ではそれで頼む。」
これでくノ一ブリーゼが爆誕だ。この依頼が終わったらあいつにも暗緑疾風の衣装を設えてやろう。チームの統一感は大事だ。
ゲルタ「目撃情報があったよ。ゲンティンの近くの街道で二頭立て馬車3台と徒歩10人ぐらいの集団がいたって。どう見てもカタギじゃないらしい。」
ライ「ゲンティンか。盗賊が狙いそうな場所だ。あそこは交通の要衝だし土地は肥沃だ。カネの臭いがする。」
ブリーゼ「ただいま。ツィーザルとゲンティンの間にある森に大規模な野営のあとがあった。20人はいただろう。排泄物の状態から推測すると3日前だな。」
エルザ「行ってきた。ゲンティンの店舗で聞き込みをした。大量の食糧や消耗品の買い付けがあったようだ。昨日のことだ。」
ライ「よし、ご苦労だった。これでやつらの位置はほぼ確定だ。討伐に向かう。まずブリーゼ、おまえの武装を引き取りに行こう。武器屋で手裏剣、道具屋で煙玉だ。もう代金は払ってある。これでおまえは戦える。」
ブリーゼ「おお、完璧だ。ありがとう、ライ。」
ライ「今回の討伐、前回の熊討伐のように樹上ハイウェイ作戦でいけないだろう。相手は馬車を持っている。樹上から射かけてもすぐに逃げられる。地上から攻めるしかない。となると反撃される前提で臨まなければならない。攻略の肝は置き盾からの連続射撃、そして薬物による無力化だ。俺とエルザでありったけをぶち込む。ゲルタは盾の銃眼からボルトを撃ち込んでリーダーらしいのを殺してくれ。ブリーゼは...」
ブリーゼ「私は遊撃だ。機動性を活かして左右上下、あらゆるところから煙玉と手裏剣をお見舞いしてやる。それを逃れてかかってきたら忍刀で斬り伏せる。」
ライ「これで作戦は決まった。行こう、ゲンティンへ!」
忍者が参入しました。キャラも強い。地獄からの生還者。Brise(そよ風)、そして風音、そんな名前が何の慰めにもならない過酷な過去を背負う女。




