ライを殺した盗賊を成敗して物語は始まる、シュパンダウからポツダムへ
馬小屋を出てしばらく歩くと茂みからふたりの男が出てきた。あきらかに善人ではない。武器も携行している。ラインホルトは警戒して長い剣の柄を握った。
男1「おや、さっきぶち殺したはずなのに生きてやがるぞ。」
男2「手間かけて殺してやったのに財布に小銭しか入ってねえとはとんだ貧乏くじだったぜ。」
ラインホルト「貴様ら、俺を殺したのか?殺して財布を奪ったと?」
盗賊1「ああ、それが仕事だからな。」
盗賊2「もう財布は持ってないんだろ。許してやるからさっさと行け。」
ラインホルト「そうはいかないな。下郎にやられたとあっては武士の...いや騎士の面目が立たない。成敗する。」
盗賊1「は?許してやろうってのに刃向かうのか?」
盗賊2「バカは2回死なないとわからないようだ。」
盗賊の得物は短刀とショートソード。動きは機敏だ。入り込まれると喉を抉られる。油断は禁物だ。ラインホルトはロングソードを両手で握って正眼に構えた。太刀より重いが問題なく捌ける。おそらく殺されたラインホルトよりは強いだろう。盗賊ふたりとの実力差は明らかだった。勝負はあっという間に付いた。ショートソードで距離を詰めてきた盗賊の腕を切り落とし、返す刀の逆袈裟切りで短刀を持った男を切り伏せた。腕を失った男は座り込んで怯えている。
ラインホルト「奪われたものは返してもらうぞ。」
ラインホルトは盗賊から財布を取り上げた。かなり重い。ラインホルトから奪われたカネだけではないのだろうが、選り分けるわけにもいかないのでそのまま頂戴した。
ラインホルト「この世界で最初に斬った相手が盗賊とはな。まあ、貧乏な俺にはふさわしいか。しかしこの武器、抜き身で持ち歩くのは物騒だな。鞘はないのか。腰に差せないのか。金も手に入ったことだし、町に行って誰かに訊いてみるか。」
番兵「止まれ!抜き身のソードを持ったまま町に入れるわけにはいかん。」
ラインホルト「混戦の中で鞘を奪われたんだ。この町で鞘を買いたい。カネならある。」
番兵「ならば人を付けてやるからそいつに金を払え。1グロッシェンだ。」
ラインホルト「わかった。頼む。この町は不案内なんだ。」
ラインホルトは案内人に1グロッシェン払って武器防具の店に連れて行ってもらい、鞘と革ベルトを購入した。合わせて7グロッシェンしたが、盗賊の財布にはまだまだカネが入っている。
店主「旦那、いい買物をしたね。似合ってるぜ。まるで貴族の騎士様みたいだ。」
ラインホルト「これでもいちおう男爵家の息子なんだがな。まあ貧乏なので威張れた話ではないが。」
店主「そうでございましたかい。このご時世、戦ばかりなので、腕に自信があればいくらでも稼げますぜ。いい武器が揃ってるので、またおいでくださいよ。」
ラインホルトは案内人に番兵への報告を託し、ついでに宿屋の場所も訊いた。転生一日目だ。まともな飯を食ってまともな寝床で眠りたい。金策はそのあとで考えよう。宿屋と酒場は同じ建物で、どうやら同じ人物が経営しているようだ。
宿屋「いらっしゃい。お泊まりで?」
ラインホルト「ああ、一部屋頼む。あと酒場で飯を食いたい。」
宿屋「酒場はその場でお支払いください。宿代は前金で4グロッシェンです。」
ラインホルト「わかった。これで頼む。」
店主から部屋の鍵を受け取ると、ラインホルトは酒場へ赴き、渋い黄金色の酒と獣の肉、そして付け合わせの酸っぱい漬物のようなもので食事を摂った。酒場には様々な人々がいた。商人、兵士、分類不能な男女....。テーブルはみな相席なので、初対面で言葉を交わしている。中にはドイツ語ではない言葉を話している者もいる。
商人らしき男「おまえさん、傭兵かい?」
ラインホルト「ああそうだ。それなりに腕は立つ。」
商人「そうか。カネを稼ぎたいか?」
ラインホルト「ああ、持っていて邪魔になるものでもないからな。」
商人「ならば護衛の仕事をやらないか?実はこの町に来る途中に盗賊に襲われてな、護衛が倒されてしまった。わしは隙を見て逃げ出してここにこうしておるわけだが、次の町に護衛なしで行く気にはならん。船に乗って明るいうちには到着する仕事で10グロッシェン出そう。」
ラインホルト「ふむ、よかろう。受けてやろう、その仕事。」
商人「行き先はポツダム。ここシュパンダウから南西に20kmだ。」
ラインホルトは酒場を出て先ほどの武器屋へ向かった。船旅での護衛、それはすなわち船への襲撃に備えなければならないということだ。
店主「おや、旦那。何か買い忘れましたか?」
ラインホルト「ああ、弓と矢をくれ。あまり大きすぎない、携帯できるサイズのものだ。」
店主「はい、ちょいとお待ちを ………… これなんかどうです?背中に背負えますぜ。」
ラインホルト「どれ、貸してみろ ………… ふむ、いい感じだ。軽いし連射もできる。これをもらおう。矢は20本だ。」
店主「へい毎度。合わせて15グロッシェンです。」
翌朝になってポツダムへ出発する。過去のラインホルトの記憶にうっすらと刻まれた地名。ここ要塞都市シュパンダウも昨晩寝る前に思い出していた。ポツダムには知り合いがいたような気がするが、靄がかかっているように思い出せない。人間関係は感情生活の要だろうが、もはや死んだラインホルトの感情は途絶えている。ふと思い出した。親しい人々から自分がライと呼ばれていたことを。ライか、安らかに眠ってくれ。この人生は俺が使わせてもらう。
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紬「いいねいいね、豊太郎、なかなか文才があるじゃん。」
翼「テンポがいい。読者が飽きない。ずっと乗っていられる快適な乗り物みたい。」
桜「週刊誌の連載にピッタリのスタイルだ。きっと人気が爆発するよ。」
豊太郎「ありがとうございます。」
エリス「はい、たしかにテンポが良くてすごい速度で原稿が回されてきます。そしてその速度に比例して誤記や文法破綻が増えています。でもかまいません。それを調整して完成原稿に仕上げるのが私の仕事です。」
紬「豊太郎、聞いたか?絵に描いたような糟糠の妻だ。」
翼「書籍化の暁には、妻への賛辞を忘れないように。」
豊太郎「はい、決して忘れません。作品は二人三脚の産物だと記しましょう。」
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シュパンダウからポツダムまでの船旅は、ハーフェル川が順流なので静かで快適だった。しかし油断することはできない。川幅が狭くなったところで盗賊団の襲撃があるかもしれない。ライは弓に矢をつがえて警戒した。そしてその警戒は正解だった。5人の盗賊が小舟に乗って襲ってきたのだ。
ライ「ふ、5人なら楽勝だ。墜ちろ!」
和弓の運用は源平の世より一撃必殺。ロングボウのように矢の雨を降らせる戦法ではない。ライの放った矢は正確に5人の盗賊を絶命させ、船と乗客は無傷で通過できた。
商人「おお、素晴らしい手際です。」
商人が拍手をすると他の乗客たちも寄ってきて次々にライを称賛した。そして、これは助かった命のお礼だと言って銀貨をライに渡した。ライは船上で50グロッシェン以上も稼いでしまった。
はい、JKトリオが言うように、物語がテンポ良く進行しています。どうぞお楽しみください、ライの大冒険。ん?なんか聞いたことがあるような響き。




