新シリーズは枠物語、討ち死にした戦国武士がヨーロッパに転生、ドイツ初のラノベ
桜のナイトケアのグラビア。深窓の令嬢。
ドゥーデン(Duden)というのはかなり昔からあるドイツ語の辞書で、正しいドイツ語を使うために必須のアイテムです。正書法、文法、発音、いろいろな種類の辞書があります。エリスはそれを使って慣れない校正の仕事で豊太郎を支えます。
桜「ちっとも帰還の兆しがないんだけど。」
翼「ベルリンでやるべきことはやりきったと思うんだけどね。」
紬「とりあえず豊太郎の様子を見に行こうか。」
豊太郎「やあ、みなさん。」
桜「調子はどう?」
豊太郎「設定が決まればあとは物語が主人公とともに走り出します。」
紬「いいスタートを切ったわね。“Der Samurai im Abendland“.」
翼「主人公の名前はどうなったの?」
豊太郎「主人公は長野資正、17歳。武蔵国の小国の武士。実家は100石の貧乏侍なので、武勲を挙げて報奨を得なければ未来はない。戦で討ち死にし、同時代のプロイセンに転生。転生先の人物はラインホルト・フォン・バルデン、同じく17歳。貧乏男爵家の三男なのでわずかな領地を相続する未来はない。傭兵団に所属して糊口をしのぐしかない。」
エリス「週刊誌に連載する12回のうち5回分の原稿が校正済みです。」
紬「起稿は豊太郎、エリスがドゥーデンを使いこなして校正ね。正書法と語法の調整だけじゃなく作品の統一性を監視、これは大事な役目だわ。この分業で“ラノベ工房“が回る。」
桜「カタカタと鳴り響くタイプライターからそのまま活字が生み出される執筆スタイル、これだけでも新聞社が取材に来そうな未来図式ね。」
エリス「カーボン紙を使うことにより最終稿を一度に3枚作り出せます。」
翼「それはかなりの技術的優位ね。まだみんな羽根ペンで書いてるのに。」
桜「マリーが原稿を週刊誌に持ち込んで連載を検討してもらうので、ここで少し読ませてもらうわね。」
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初陣から数えて戦への出陣はこれが4度目だった。緩やかな丘陵地帯、柔らかな霧雨が降り注ぐ。甲冑は軽装だが水を含んで重さを増していた。資正の役目は威力偵察だ。敵が潜むと思われる場所に近づき、攻撃を加えて戦力を調べる。敵の人数によっては反撃で被害を受ける危険な任務である。木の枝で偽装し、仲間4人と少しずつ間合いを詰める。そのとき、茂みから矢が飛んできて仲間に当たった。即死は免れたが、剥き出しの太股に矢が刺さった。
資正「くそっ!茂助、大丈夫か? …… 俺がここで食い止める。おまえたちは茂助を担いで撤退しろ。死ぬなよ。」
資正は矢をつがえて茂みに放った。1本、2本、3本。手応えはない。資正はじりじりと後退した。しかし、そのとき左手から抜刀した武者が3人現れて襲いかかってきた。資正も刀を抜いて応戦の構えを取った。
敵は三人、技量はわからない。人数で圧倒的に不利だ。背後を取られたら、いや正面と側面に分かれられたら攻撃を防ぎようがない。敵が動いた。大振りを避け、切っ先を突き出して突進してきた。資正はそれをなぎ払った....しかし...側面に移動した敵の一振りが肩を切り裂いた。鮮血がほとばしり、痛みで気が遠くなる。資正が膝をついた瞬間、敵は全員で斬りかかり、資正は絶命した。
絶命した資正は暗闇の中を漂っていた。痛みはもうない。そして息もしていない。身体を動かすこともできそうもない。だが、突然、周囲に光が宿った。風が感じられる。資正は目を開いた。
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紬「ストップ!ちょっと待った、豊太郎。これはダメだわ。」
翼「そうだよ。何の媒介もなく転生、これはラノベ文法的にやっちゃダメなの。」
桜「うん、狭間の世界で女神様、これがないとラノベの転生は成り立たない。」
豊太郎「....女神様ですか?」
紬「そう、女神様が転生という理不尽を主人公に告げるんだ。」
翼「転生先で使えるチートを付与することもあるけど、今回はそれはなしね。」
桜「女神様....急に思いつかないから、うちらの女神様にお願いしよう。」
紬「うんうん、リアル女神様のカメオ出演。わかる人だけに刺さる。」
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女神「おい、あいつら勝手に私を出演させようとしてるぞ。」
翡翠「と言いながらすごくうれしそうじゃないですか、女神様。」
青水「19世紀に誕生した新ジャンルのラノベで初の女神役、これは歴史的快挙だ。」
女神「...そうなのか?でへへ、そうなのか?私にピッタリの役回りだな。」
青水「ああ、頑張って行って来い。」
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桜「女神様~、お願い。ドイツ初のラノベで女神役をやってください。」
女神「仕方がないなあ。ちょっとだけだぞ。」
豊太郎「え?えええっ?」
エリス「青い髪の女神....降臨なさった....」
女神「あー、苦しゅうないぞ。作品内にちょこっとだけ登場するからそれを書け。」
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絶命した資正は暗闇の中を漂っていた。痛みはもうない。そして息もしていない。身体を動かすこともできそうもない。だが、突然、周囲に光が宿った。この世のものとも思えない神々しい光。
女神「資正よ、目を開けなさい。」
資正「ここは....どこです?」
女神「狭間の地だ。おまえは死んだ。そしてこれから転生する。何、心配するな。いきなり異世界とかではない。同じ時代のヨーロッパだ。おまえの肉体は滅んだ。転生先では金髪碧眼の騎士になる。騎士と言っても貧乏武士のおまえと似たような境遇だがな。侍だったときの記憶はそのままだ。そして転生先の騎士の記憶も消えてはいない。だが所詮それは他人の記憶だ。おまえの自我を形作るものではない。おまえはプロイセンの貧乏男爵の三男、傭兵稼業で糊口をしのぐラインホルト・フォン・バルデンとして新たな人生を始める。」
資正「そのラインホルト・フォン・バルデンはどうなったのです?」
女神「おまえと同じく戦死だ。その身体におまえが転生する。行って来い。」
神々しい光が消え世界は再び暗転した。資正は闇を漂い、そして横たわる自分の下にたしかな大地を感じた。ここはどこだ。藁の臭い...かすかな馬糞の臭い、馬小屋のようだ。資正は目を開けた。身体に痛みはない。手足も動かせる。馬小屋で倒れていた。手足に違和感はないが、見た目が少し違っている。肌が白い。そして少し毛深い。すぐ側に大きな鉄製の武器が転がっていた。刀とは違うようだが振り回せば敵と戦えそうだ。資正は武器を手に取った。太刀よりかなり重い。
資正だった男「これでは腰に差せんな。」
男は武器を手に馬小屋の外へ出た。
男「俺は...ラインホルト・フォン・バルデンという名前だったな。職業は傭兵、要するに金をもらって戦をする。資正とあまり違いはないか。家も貧乏らしいし。貧乏から貧乏へ転生、世界が違えど世知辛いな。とりあえず、何をしようとしてあの馬小屋に転がっていたかだ。女神が言ってた。ラインホルトも戦死したと。つまり付近にはまだ敵がいる。転生してすぐ死ぬわけにはいかない。慎重に行動しよう。」
ついに始まりました。枠物語。ワイプが2層になっています。どうでしょう?豊太郎が書く物語はみなさんお馴染みの転生ものラノベ。これからしばらく続くので楽しんでいってください。




