コゼットを救い出したので、パリで贅沢させて栄養を付け、それからママが待つモントルイユへ
オデット「ただいま戻りました。」
桜「おかえりなさい。あら、連れてきたのね。」
オデット「はい、あのまま放置するわけにはいきませんでした。」
コゼット「ボンジュール、メドモワゼル!」
紬「こんにちは、コゼット。ここを自分のお家だと思っていいのよ。」
コゼット「メルシ。」
桜「で、宿屋の買い取りは?」
オデット「3000フランで無事に所有権を譲渡させました。ここに来る前に公証人を手配しましたので、今ごろ向かっていると思います。」
桜「手際が良いわね。やっぱり思った通り、オデットなら立派な経営者になりそう。」
オデット「ありがとうございます。」
翼「宿屋に常駐する管理者に当てはあるの?」
オデット「はい。かつて実家のメイド長をしていたアデールにお願いしようかと。」
紬「元メイド長なら宿屋を再建してグレードを上げてくれそう。」
オデット「戦争のごたごたで領地を失ったとき26歳でしたから、今はちょうど30歳になっているはずです。パリに出て大商人の館で働いています。」
翼「立派なホテルになりそう。」
オデット「名前はHôtel Baron d’Alsaceにします。」
紬「オテル・バロン・ダルザス、一気にグレードが上がったわね。郊外の木賃宿が貴族の館のように。アルザスはドイツの気風が生きている土地だから、清潔、規律、安全が確保されてるイメージだわ。」
オデット「はい。失った実家を再建するつもりで繁栄させます。領地ではありませんが、あの荒廃した周辺の村も合わせて。」
桜「7000フランの資本金も潤沢だし、リフォーム、いや大がかりなリノベーションで見違えるようなホテルになると思うわ。アデールも元メイド長、しかもアルザス仕込みなので、怠け者のテナルディエ夫妻もキリキリ働かされることでしょう。使用人部屋は北側にこぢんまりとしたのを作ってあげるといいわ。それから客室にはしっかりとしたトワレを設置してね。テナルディエ夫妻が毎日ピカピカに磨くのよ。」
オデット「了解しました。」
翼「さてコゼットちゃん。パリに出てきたのだからそのお洋服じゃダメね。お姉さんたちとお買い物に行きましょう。ママに会う前に立派なpetite mademoiselle に変身しなくっちゃ。」
オデット「コゼットはしばらく私の部屋に泊めます。過分にも広いお部屋をいただいておりますので。」
紬「お願いね。オデットとコゼット、音が似てるので姉妹みたい。」
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女神「…………」
青水「どうした女神?ハンカチなんか取り出して。」
女神「な、なんでもないぞ....」
翡翠「いいんですよ、感動を隠さなくても。私も大胸筋と横隔膜の不規則な収縮を感じます。」
青水「翡翠...おまえは女神を上回る...何というか、人外だな。」
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翼「まあ、よく似合ってる。ハッピー・プリンセスだわ。」
紬「いっぱい写真を撮って特別なフォルダーに保存しておこう。」
桜「それじゃあ数日パリで贅沢を楽しんでもらって、少し体重を増やしてからモントルイユへ連れて行きましょう。」
紬「モントルイユで母子の感動の再会を果たしたあと、しばらく何もないね。」
翼「モブにはいろいろあるんだろうけど、私たちにとっては...」
桜「仕込んでおくことはいくつかあるよ。まずファンティーヌとジャン・ヴァルジャンの関係性の構築。これをしておかないとファンティーヌの立場が不安定。これは簡単なんだけど、次が難しい。1820年にジャヴェールがモントルイユに警部として赴任してくる。」
翼「偽名を使って市長してるからね、ジャン・ヴァルジャン。バレたら犯罪者だ。」
紬「戸籍とか住民票とか、当時のフランスでどうなってるかわからないけど、公的な個人記録を改竄しなくちゃならないか。」
桜「そう、それはめっちゃ難しい。公的立場の人間を共犯者にしないと無理。」
翼「アミアージュのルースはまだいっぱい残ってるけど、お金だけでなんとかできるのかなあ?」
紬「んー、調べても複雑怪奇だ。役所、警察、司法、教会...介入するとすればこいつらなんだけど...」
桜「ふむ、警察と司法は危険だから外そう。失敗するとお縄を頂戴することになる。」
翼「まずさ、ジャン・ヴァルジャンという存在を死亡という形で抹殺する必要があるんじゃない?」
紬「原作でも船から海に落ちて死体が上がらない水死を偽装してた。」
桜「ジャン・ヴァルジャン本人と相談してみよう。」
翼「明日はモントルイユか。Googleマップで見たら220km。馬車だと途中で一泊だね。けっこうしんどい。」
桜「クッション持って行かないと。尻が死ぬ。」
翼「馬車の寝台車ってないのかな?王侯貴族はそういうの使いそう。」
紬「元貴族のオデットに訊いてみよう。」
桜「ねえ、オデット。コゼットを連れてモントルイユに行くんだけど、あの子のためにできるだけ快適な馬車旅を手配してくれないかしら?お金に糸目は付けないわ。」
オデット「了解しました。4頭立てのベルリーヌを2台手配します。1台におふたりです。寝台を設置させます。」
桜「あとさ、途中の宿泊地はどこがいい?」
オデット「アミアンです。パリから120km、朝に出れば夕方には着きます。大きな町なので豪華な宿もあります。明日ご出発なら、郵便で来着を伝えておきましょう。」
桜「お願いね。私たちが留守の間、オテル・バロン・ダルザスの経営を頑張ってね。会えないまま出かけちゃうけど、アデールにもよろしく。」
コゼット「すごい!お馬さんが4頭もいる。ベッドも付いてる。」
翼「そうよ、モントルイユは遠いから大きな馬車じゃないと疲れちゃうもの。眠くなったらいつ寝てもいいからね。」
コゼット「うん!寝るときはドレスを脱ぐわ。しわになっちゃうから。」
オデット「行ってらっしゃいませ。道中、お気を付けて。」
桜「はい。留守を頼んだわね、オデット。」
コゼット「わあ、すごく大きい!あれなあに?」
紬「あれはアミアンのノートルダム大聖堂よ。中に入ってみましょう。ステンドガラスがきれいだよ。」
コゼット「うん!中に入って神様にご挨拶する!」
そうなんです。これからが大変なんです。ジャヴェールを締めるだけで済むならいいのですが、警察という巨大な国家権力が控えていますからね。とはいえ、革命も近づいています。革命が成功しちゃうと警察や軍隊はいろいろ複雑な動きを余儀なくされますね。




