モントルイユへ行ってコレットはママと再会、そしてジャン・ヴァルジャンには死んでもらう
桜「銀行にまだ80万フランあるけど、アミアンでもう少しアミアージュのルースを換金しておこう。公的機関をカネで殴る作戦に資金が必要になるから。」
翼「もう賄賂のレベルではないね。」
紬「ルビーとエメラルドとサファイア、それぞれ5個ずつで100万になったから、また同じ数を出そうか。面倒くさいけどそれ以上を換金すると怪しまれる。」
桜「100万とか、日本円じゃないのと時代が違うのとでもう全然実感が湧かないけど、巨大な資金力という背景だけは確保しておかないと。」
翼「鋼鉄の富裕乙女旅団か。鋼鉄のと言いつつ防御力が全然足りないな。襲われたら即終了。」
紬「危ないのは換金直後だね。前にもあった。あ、思い出した、マノンのときだ。」
翼「あのときは鋼鉄の武装宝石商旅団だった。まだテイザーを手に入れてなかったから、タクティカルライトで視覚を殺してスタンガン。」
紬「今はテイザーがあるから負ける気がしないよ。」
だが鋼鉄の富裕乙女旅団は、換金後に襲われることもなく銀行口座を180万フランにして、そこから現金を10万フラン下ろして今後の作戦に備えた。1000フラン紙幣を50枚、残りは金貨と銀貨だ。モントルイユでの作戦実行の予行演習として3人は大聖堂へ行き、ディーニュでミリエル司教に語ったのと同じ嘘物語で1000フランを献金した。これだけの額を寄付すれば名望が上がる。それは教会ネットワークでモントルイユへも伝わるだろう。
翼「ほらコゼットちゃん、モントルイユの町が見えてきたよ。」
コゼット「あそこにママがいるのね!」
翼「大きくなったのを見てきっとびっくりするよ。」
コゼット「ママ!ママー!待っててね、もうすぐだから!」
工場主任「さあ今月の給金だよ。並んで受け取りな。」
ファンティーヌ「ああ、ありがとうございます。」
主任「お礼はマドレーヌ様にだ。」
ファンティーヌ「これで...今月も送金ができます。」
主任「親に送金してるのかい?健気だねえ。」
ファンティーヌ「は...はい。」
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女神「あ、こいつだ。この上司の女がファンティーヌをクビにするんだ。」
翡翠「悪気があったわけではないようですが、秩序の番人の自負心がときとして不幸を産むのですね。」
青水「正義の裁きという高揚感に包まれて人は無慈悲なことをすることがある。難しいな。」
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桜「さて、このままコゼットを母親の元に連れて行くわけにはいかないね。」
翼「独身と偽って働いてるからね。」
紬「最初にジャン・ヴァルジャン、いやマドレーヌと話をしよう。」
秘書「マドレーヌ様、お客様です。」
マドレーヌ「ん?どなただろう?」
秘書「小さな女の子を連れた若い女性が3人です。」
マドレーヌ「わかった。応接室に通しなさい。」
紬「はじめまして、ムッシュ・マドレーヌ。私たち3人は日本から来た鋼鉄の富裕乙女旅団です。私は紬、こちらは翼と桜です。お見知りおきを。」
翼「この女の子はコゼットです。おたくの工場で働いているファンティーヌさんの娘です。」
桜「マドレーヌさん、今だから打ち明けますが....ディーニュの司教館でミリエル司教から渡された手紙、あれは私たちが託したものです。」
マドレーヌ「な、なんと!………… あの手紙、そして頂いた1000フランの手形、あれで私は人生を切り開くことができました。ミリエル司教はおっしゃった、神の御使いがこれを託したと。あなたたちが....」
桜「いえ、あれは方便、つまり嘘です。ミリエル司教に手紙を渡すためについた嘘でした。私たちはキリスト教徒ですらありません。どうしてもあなたに救いの手を差し伸べたかった。」
翼「私たちの女神様がそれを望んだのです。」
紬「カトリックの教義が定める神ではない女神の指示で動く私たちは胡散臭い存在でしょう。しかし善意はカトリックの教義の外側にもあるのです。」
桜「マドレーヌさん、いやジャン・ヴァルジャンさん、あなたの未来の憂いを断ち切るためにどうか話を聞いてはいただけませんか?」
マドレーヌ「....わかりました。あまりにも大きな出来事だったので混乱していますが、包み隠さずすべてを打ち明けたあなたがたは信用に値すると確信できました。」
翼「まず、この女の子、コゼットといいますが、ファンティーヌという工員の娘です。ファンティーヌはパリのカルチェラタンでお針子をしていたときに放蕩学生に欺されてこの子を身籠もり、ひとりで育てる決心をしたのです。しかし赤子を連れた母親を雇ってくれる人はいません。ファンティーヌはコゼットをモンフェルメイユの宿屋に預け、ここで働いて毎月養育費を送金することにしたのです。」
マドレーヌ「ここに連れてきて一緒に暮らせば良かったのに。」
紬「父なし子を連れた女は、“真面目な人間”というこの工場の唯一の採用条件に当てはまらないと思ったからでしょうし、おそらく人事担当者もそう判断したと思います。」
マドレーヌ「善良という枷が弱者を追い詰める...もっと気をつけるべきでした。ファンティーヌという女性、工場から内勤に転属させて母子共々暮らせるように手配いたします。」
翼「よかった。コゼットちゃん...もうすぐママに会えるからね。」
コゼット「うん、楽しみ!」
マドレーヌ「秘書がファンティーヌさんを連れてきます。ここでお待ちください。」
ファンティーヌ「コゼット!」
コゼット「ママ!」
感動の再会を確認した3人はジャン・ヴァルジャンを促して別室へ向かった。
桜「ふう、これで問題がひとつ解決しました。」
翼「まだひとつだけですが。」
マドレーヌ「と言われますと?」
紬「あなたの問題があります。ジャン・ヴァルジャンの問題です。」
マドレーヌ「そうですか...そうですね。偽名で工場経営...許されることではない。」
桜「はい、なのでジャン・ヴァルジャンには消えてもらわなければなりません。」
翼「ジャン・ヴァルジャンは消えてマドレーヌだけ残る。」
紬「ジャン・ヴァルジャンは死ぬのです、死体を残さずに。」
桜「釈放後のジャン・ヴァルジャンは本来ここで暮らすことは許されない、違いますか?」
マドレーヌ「その通りです。私はスイス国境に近いポンタルリエという町に居住する義務がありました。山の上の町です。」
翼「ヌシャテル湖が近いですね。そこで水死を偽装しましょう。湖に落ちたけれど死体が浮かび上がらない。できますか?」
マドレーヌ「はい、潜水して泳ぎ離れた場所で上陸します。前もって上陸場所を決めておき、荷物を隠しておきます。あえて人目につく状況で湖に沈みます。」
桜「よろしい。私たちはあなたが戻って来るまでの間にマドレーヌ氏の身分を何とかしましょう。申し訳ありませんが、幼少時にフランスに移り住んで苦労の末に現在の立場を得た人物として認めさせます。」
翼「フランス生まれのフランス人というあなたのアイデンティティーの根幹を壊すことになりますが、未来のためです。」
マドレーヌ「かまいません。マドレーヌとして堂々と生きていけるなら、エジプト生まれでも北極生まれでも。」
原作のジャン・ヴァルジャンも海に落ちて死んだふりをして過去を消しました。潜水泳法もできる。きっとスパイ大作戦でも活躍できるタフガイなんですね。




