西郷隆盛の暗躍、サツマ・クランの闇、介入するのはイヤだな
明治初期の人が思いつきそうな発想で組織が設立されてしまいました。不安しかありません。
桜「しーっ...気配を殺せよ...」
翼「目を見たら終わる...」
その距離3メートル、気付かれないわけがなかった。
西郷「なんじゃ...おはんら...日本人か?」
紬「Je ne sais pas! Je ne comprends pas!」
西郷「異国ん言葉でごまかそうちしても無駄でごわす。」
桜「はい、日本人です。それではさようなら。」
翼「さらばじゃ。」
西郷「待て、おはんら、いったい何もんじゃ?」
紬「ただの女子高生です。オルヴォワール!」
西郷「日本人ちいうなら、いろいろ聞きたいことがあっと。」
桜「ここは異世界、日本人もアメリカ人もありません。せいぜいヒューマン、エルフ、ドワーフ、獣人...種族の違いだけです。生前の国籍に拘泥していては生きにくいですよ。」
紬「そやそや...おっさん、ダサいで。」
西郷「ちぇっ、わらしべんくせになめくさりおって!」
翼「年齢は関係ないですー。ここではレベルと資金量がものを言うんですー。うちらLV35なんで。ほなさいなら。」
西郷は頭から湯気を出してプンスカ去って行った。
受付嬢「いらっしゃい、みなさん。クエスト受注ですか?」
桜「いえ、遠征先で得た収入の分配金をフィナちゃんに渡してもらいたくて持ってきました。」
受付嬢「14万ゴールドですね。たしかに預かりました。これが預かり証です。」
翼「よろしくお願いします。」
紬「さっきの人たち、ダンジョンに入る前は10人いたはずだけど。」
受付嬢「3人...お亡くなりになったそうです。」
桜「ええっ!遺体は放置?」
受付嬢「はい...本当は困るのです。魔物が食べてしまうし。」
翼「思った通りイヤなやつだ。」
受付嬢「メンバーが減っても次に来るときは10名になってるんですよ。」
桜「常時募集中なのか...よくあんなパーティに入る気になれるなあ。」
受付嬢「行き場のない人たちがたくさんいますから...」
3人が宿に向かって歩いていると、町にブースを出して勧誘している冒険者がいた。Satsma Clan と書いてある。
紬「え、tsuのuが抜けてね?」
翼「いや、そんなことより、あれ西郷のパーティ募集だろ。」
桜「パーティ募集というより、団体を設立してメンバーを集めてるね。」
紬「訊いてみようか....ねえ、あんたたち、これ何なの?」
男「おお、興味を持ってくれたかい?」
女「タダで食事も出るよ。入る?」
紬「いや、入らないけど...何なの、これ?」
男「西郷さんが作ったサツマ・クランだ。」
女「LV1のオケラでも装備を貸し出してすぐにダンジョンに入れるよ。」
男「隊員の数は今50名を超えた。」
女「毎日ダンジョン攻略だ。レベルに応じてF、Eに入ってもらってる。そろそろDも狙えるかな。」
男「鑑定して得た収入はいったんすべてクランに入る。」
女「隊員には日給と食事が与えられるって仕組みさ。」
紬「あ、そう...まあ安全に頑張ってね...」
紬「ねえ、あれヤバいよ。新興宗教とブラック企業が合体したような組織だ。」
翼「LV1で実戦に投入、死んだら放置。」
桜「これ、公安で取り締まったほうが良いんじゃ...」
翼「コンカフェに行ってエラさんに報告しよう。」
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女神「ほら、ろくでもないことになった。甘やかしの女神のせいだ。」
青水「いや、紬の言うとおりだ。新興宗教とブラック企業が合体した組織。自由な異世界の冒険者生活と折り合いが悪すぎる。」
翡翠「行き場のない底辺の人々を誘い入れて奴隷にする発想がひどいです。」
青水「このままあの組織が膨張すると...国が乗っ取られる危険もありそうだ。」
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エラ「あら、いらっしゃい。どうぞ中へ入って。」
桜「こんにちは、エラさん。」
翼「なんか変な組織ができたの知ってる?」
エラ「サツマ・クランね、知ってるわ。」
紬「もう50人も隊員がいるって言ってた。」
エラ「あの人たち、スラム街の廃屋を根城にしてるのよ。不法占拠。」
桜「犯罪じゃないですか。なぜ警察は動かないの?」
エラ「持ち主が訴えないから。」
翼「なぜ訴えないの?」
エラ「そのまま放置していても管理にお金がかかるでしょ。あいつら、修繕して住めるようにした上、わずかだけど持ち主にお金を渡してるらしいの。闇の賃貸みたいな。」
紬「うわ、何から何までダークだ。」
エラ「内部を改造してたくさん収容できるようにして、収容所のようになってるらしいわよ。警察官が迂闊に近寄れる雰囲気じゃないみたい。」
桜「放置しておくと膨張してろくでもないことになりそうだけど...」
エラ「でも警察は、底辺冒険者がホームレスになって治安が悪化するよりマシだと思ってるみたい。ほら、いちおう食べるところと寝るところが保証されるわけじゃない?」
翼「まあたしかに。」
エラ「あの人たち、定期的に町の清掃をしてくれるので、町がきれいになってきたの。」
紬「なんだか気持ち悪いけど、表立って敵視する人はあまりいなくなりそう。」
桜「日本の田舎にそういう指導者がいそうだわ。ナンタラ運動とか。」
翼「ギルドは困ってないのかなあ?」
エラ「困ってるかもよ。低級ダンジョンが渋滞するでしょ。」
紬「受付嬢さんを通してギルドのお偉いさんと話してみようかな。」
JKトリオ、関わり合いになりたくありませんね。港区のオシャレでクールな女子高生と折り合いが悪すぎる組織。でもこのままだと異世界王都で知り合った人々も困ることが起きそうです。ああ、でも西郷隆盛と口をきくのはイヤすぎますー。




