底辺冒険者になったJKトリオは、それでも根性でゴブリンを殲滅してお金を稼ぐ
これまでチート金満でサクサクだったのに...でも港区JKの底力を見せるときなのです。
翌朝、カロリーメイトと白湯で栄養を補給したJK底辺冒険者パーティはダンジョン入り口へ向かった。
受付嬢「おはようございます。装備を調えてきたようですね。」
桜「初心者クエストを受注します。」
翼「概要を教えてください。」
受付嬢「このダンジョンは3層構造で、ボスはシンプルに3層の奥にいます。敵の種類はゴブリンです。弱いですが数が多い。2階にホブゴブリン、さらに上がって3階にはマスターゴブリンがいます。マスターゴブリンにはジョブの概念があります。」
紬「敵のドロップは?」
受付嬢「アイテムや装備品、それにゴブリンの身体部位です。たいした価値はありませんが数で稼いでください。クエスト参加者には戦利品用アイテムボックスが貸与されるので、荷物を気にすることなく集めることができます。」
桜「わかった。初回はお試しかな。できるだけ集めてくるよ。」
翼「でもって無理しないで撤退する。」
受付嬢「それが賢明なムーブですね。初回に全滅して戻ってこないパーティもたくさんいますから。」
しかし現実は思っていたよりはるかに過酷だった。ゲームならネズミやスライムが2~3匹で始まるのがお約束だが、JK底辺冒険者パーティは初っぱなからゴブリンの大軍に遭遇した。
桜「うわ、これ無理なんじゃね?」
翼「でも1回も戦闘してないし...」
紬「死なないでゲームオーバーなんだから死んだ気になって突っ込んでみれば?」
桜「おまえ...後衛だから気楽に言ってくれる...」
そんな言葉を交わしているうちに敵は次々に奇声を上げながら突っ込んできた。翼はシールドバッシュで3体を打ち倒し、桜は双剣で5体を切り伏せた。
桜「あれ?思ったより弱い?」
翼「弱くなければ困るよ。数が多いんだから...」
紬「後衛にまで飛びかかってくるよ。殴り倒したけど...」
数分で20体以上のゴブリンは全滅した。そして身体の奥でレベルアップを自覚した。レベルアップとともに桜と翼が負った軽微な傷は全快した。
桜「とりあえず戦利品をアイテムボックスにぶち込もう。」
翼「うわ、キモい。ベトベトだ。」
紬「手袋...買おうね、パキスタンで。」
桜「耳とか手首とかも売れるのかな?」
翼「うちらの倫理がだんだん摩耗する...」
紬「しんどいけど、まだポーションは温存してるし、もう1戦いけるんじゃ?」
桜「気楽に言ってくれるよ!」
翼「でも稼げるうちに稼いでおかなくっちゃ。」
桜「くっ...これが労働者ということか....」
3人は同規模のゴブリン集団と3回遭遇してすべて討伐した。怪我はない。レベルはさらに2回上がってLV3になった。紬は回復魔法を使えるような気になったが、気になっただけで実際に呪文は唱えられなかった。どうやら魔法屋マンソンジュで高いロールを買わなければ呪文は唱えられないようだ。
桜「まだ体力的にはいけるけれど...メンタルが持たない。」
翼「暴力の罪悪感....ちょっと港区JKにはこれ以上耐えられないよ。」
紬「いったん戻って精算しようか。どのくらい稼げるのか知りたいし。」
3人は入り口まで戻り、受付に向かった。
受付嬢「お帰りなさいませ。ご帰還おめでとうございます。」
桜「回収した素材、鑑定して。」
受付嬢「おお...初めての攻略でこれだけの戦果....素晴らしい。才能ありますよ、みなさん。ちょっと待ってくださいね....」
受付嬢はそろばんと天秤がつながったような不思議な道具を駆使して戦果を計算している。
受付嬢「判定が出ました。おめでとうございます。みなさんが初クエストで得た収益は、なんと680ゴールドです。初回にしては画期的です。いやー、すばらしい!」
桜「ありがとうございます...明日....また来ます。」
3人は、体力的にはまだまだ大丈夫だが、気力が萎えていた。殺戮で得られる報酬という図式にとまどっていた。
紬「とりあえずさ...道具屋へ行って手袋買おうよ。キモいのを掴む嫌悪感が少し減ると思うよ。」
桜「...うん。」
紬「それから武器屋へ行って私の護身用の武器も買って。杖でもワンドでも何でも良いから。手で殴るの、ちょっとイヤ。」
翼「....そうだね。」
3人は町の店で装備を買い足し、宿屋へ戻った。そしてシャワーで血と体液を洗い流し、衣服を洗濯した。
桜「ちょっとメンタルをやられたけれど、気を取り直して明日は鬼になろう。」
翼「そうだね。とっととクエストをクリアして元の世界に戻ろう。」
桜「気持ちを強く持てば最初の階層であと2~3回は戦える。たぶん収益は1000を超える。」
翼「レベルも上がるから、装備を一新すれば上の階へも進める。」
紬「LV10になると上級職にも印を付けられるよ。私、賢者になれば攻撃にも参加できる。」
翼「マンソンジュのロールはひとつ1000ゴールドするけどな。」
桜「ともかく明日は鬼神のように戦って第1階層で1000ゴールド以上、できれば1200ゴールドを稼いで次につなげよう。」
3人はその夜、宿屋の食堂でささやかな初回クエスト記念の祝宴を開いた。異世界のエールやワインも飲んだ。冒険者になってみると、居酒屋で飲まなければやっていけないということが身にしみてわかった。異世界に順応してワイルド化した自分達を感じて3人は思わず自虐的な悦びに浸った。
桜「うちらさ、まだひよっこだから鋼鉄のとか言えないけどさ....ヒック...」
翼「そのうちなろうぜ、鋼鉄の乙女パーティ。」
紬「フフ...ヒヒヒ...いつかぶっ放してやる...エクスプロージョン!」
翌日、3人はダンジョンで効率的に敵を狩った。入り口に戻ればレベルは初期化されるが、戦闘手順の知識は残っている。どう動けば効率的に敵を殲滅できるかわかっている。3人はてきぱきと分担して敵を倒し続け、死体の山から戦利品を剥ぎ取った。レベルは5まで上がった。
桜「気持ちを切り替えたおかげでメンタルは改善されたけれど、さすがにフィジカルの疲労が溜まった。」
翼「マラソンのランナーズハイみたいな感じ。」
紬「稼ぎがどのくらいなのか楽しみ。」
桜「敵のポップも減ってきたし、いったん戻ろう。」
ギルドの受付で帰還報告をすると、素材鑑定の結果が告げられた。
受付嬢「なんと...おめでとうございます...初心者クエストの新記録です。素材鑑定の結果、みなさんには1540ゴールドが支払われます!」
桜「ちょっと訊くけど、おねえさん。上の階層に行くと敵はホブゴブリンになるんでしょ?ドロップも変わるよね?」
受付嬢「もちろんです。上位の装備品やアイテム、そして身体部位も高く売れます。」
翼「ふつうはレベルいくつぐらいで挑む相手なの?」
受付嬢「装備にもよりますが、LV5ぐらいが平均でしょうか。ここで目測を誤って全滅するパーティもたくさんいるので注意してください。」
桜「明日、装備を調えて挑んでみるよ。」
受付嬢「ご健闘をお祈りしています。」
JK底辺パーティは町へ戻り、貯まった2000ゴールド以上の資金を使って、全員の手袋と紬のメイス、そして魔法屋マンソンジュでヒールの習得用ロールを購入した。まだ1000ゴールド以上残っている。
フィジカルの疲労より罪悪感に起因するメンタルの疲労が辛いお嬢様JK...だけど異世界でワイルドになって酒場で気炎を上げるのでした。




