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貧乏あむの大逆転~小学校を卒業するまでに知りたいお金に関する事~  作者: あがつま ゆい


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7/12

第7話 緋縅(ひおどし)家訪問

「……」


 ゴールデンウイーク初日。前からタテハのお母さんと会う約束をした私は家にお邪魔しに行ったが、相変わらずスケールのでかさに圧倒される。

 市営住宅の私の家と違って立派な庭があり、それも池がある程広い。

 本当はタテハのおじいさんがコイを泳がせたかったがそこまでのスペースが無く断念したらしいけど、池が造れる時点で私からしたらとんでもなく広い庭なのは確か。


 家は3階建ての3世帯住宅で、立派なたたずまいだ。

 タテハの家である緋縅(ひおどし)家はさかのぼれば戦国時代から続いており、それも納得の名家だ。スクールカーストの外でもやっていける理由がよく分かる。


「お邪魔します」

「あら~あむちゃん、今年も来てくれたんだねぇ」

「こ、こんにちは。タテハのお母さん」


 タテハのお姉さん。と言っても通じる位にキレイな肌をした若々しいお母さんだ。栄養不足で肌が荒れている私のお母さんとはビックリするほど違う。



「ちょうど良かったわぁ。みんなも揃ったみたいだし、行こうか」

「は、はい。ご同行いたします」


 タテハのお母さんはお茶会をするのが趣味で、特にゴールデンウイークや年末といった親戚が集まった際には必ずやるという。

 いわゆる「上流階級の社交場」というのは見ておいて損はない。という打算もあって去年からお誘いがあったら混ぜてもらっている。


 旅館の広間みたいに広々としたリビングにはタテハのおじさんやおばさん、いとこと言った親戚がずらり、と(そろ)っていた。

 もちろんタテハ本人や彼女の父親、おじいちゃんもいる。


「はーい、みんなお待たせー」


 タテハのお母さんが嬉しそうにティーポットにお茶を入れて持って来た。集まったメンバーにお茶を配っていく。

 調べてみたらティーポットもティーカップも私の家では手が届かないほどの高級品で、最初の頃はもしも落として割ったりでもしたらどうしよう。と持つ手がガチガチに震えていたっけ。


「いやぁ~あむちゃん、しばらく見ないうちに急に大きくなったよなぁ。もっと小さかったはずなんだけどなぁ?」

「そ、そうですか? まぁ着てる服は変わりましたけど」



 タテハちゃんの親戚とお茶会となると、どうにも居心地が悪い。会話の内容にはついていけないし、どこが面白いのかさっぱり分からない。

「上昇婚した後はこのお茶会が日常になるから今のうちに慣れておかないと」と思っているのだが、居心地の悪さは変わってくれない。

 聞いた話ではお茶の葉も高級な物を使ってるらしいけど、たまにお母さんが買って来るペットボトル入りのお茶との違いが良く分からない。お茶菓子は甘さ控えめなんだけど凄く美味しいんだけどね。


「あむちゃん、クラシック聴いてる? ベートーベンの『第九』や『運命』くらいは聴いたことあるでしょ? クラシックは学べば学ぶほど面白くなるぞ」

「は、はぁ……」


 タテハのおじさんはクラシックが好きで、今でも時々演奏会に出かけるそう。動画が普及してもやはり生演奏には勝てないのだとか。

 おじさんに言われてからタブレットでたまにクラシックを聴くようにはなったが、良さは今一つ分からない。まだアニメの主題歌の方がスッと入る。

 聞き流すように話を聞いてると、


「ワンッ! ワンッ!」


 ドアの向こうから犬の鳴き声が聞こえてきた。

 タテハの親戚が開けると……



 出て来たのは、立派な毛並みのゴールデンレトリーバー。1年前からタテハの家で飼われている犬だ。犬種の影響なのか人懐っこい顔をしている。


「ミカエル、今お茶会してるから待って。って言ったでしょ?」

「タテハちゃん、いいじゃない。私もミカエル君に会いたかったから。大きくなったわねぇ、初めて会ったのは去年かしら?」


 ミカエル君も嬉しいらしく、尻尾を常にパタパタと振っていた。人懐っこすぎて、部外者である私にも初対面で尻尾を振り振りしていたので番犬には向かない。そんな子だ。


「そう言えばミカエル君の散歩って誰がしてるの? 当番制だったりする?」

「雨の日以外は散歩は毎日私がしてます」

「へぇ、タテハちゃん偉いねぇ。雨の日以外って事は休みがほぼ無いんでしょ? それにミカエル君結構大きいから引っ張られたりしない?」

「ミカエルはお行儀が良いから引っ張られたりはしてません。その辺は大丈夫です」


 犬を飼いたいと言い出したのはタテハで、飼う代わりにお世話やしつけはきちんとする。と約束をして、それを守ってるのは偉いと思う。

 私だったら途中で嫌になって投げ出すかもしれない。まぁウチにはペットを飼う余裕なんて無いんだけどさ。

 その後もぎこちない動きをしていたが何とかお茶会の最後まで参加する事が出来た。



「ただいまぁ……」

「あむちゃんどうしたの? そんな顔して」

「タテハちゃんの家でお茶会してた……疲れた」


 1時間くらいお茶会してただけなのに、家に帰るとどっと疲れが出るのはどうしてだろう。身体の中に鉛が入っているかのように重い。自分のベッドにダイブだ。

 これから金持ちと上昇婚したらこれが日常になるのに……慣れなきゃダメなのに……。

お読みいただき、ありがとうございます。

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