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貧乏あむの大逆転~小学校を卒業するまでに知りたいお金に関する事~  作者: あがつま ゆい


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5/20

第5話 遺伝子の力はあまりにも強い。が……

 先生からの呼び出しで大目玉を食らった事以外はあまり目立ったことは無く放課後を迎えた。

 佐野原(さのはら)の奴は私が先生から叱られている所を見て満足したらしい……相変わらず性格がねじくれている。


 下校途中、私はケータイに番号を登録していた宮本さんに電話を掛けた。


「もしもし、岩田です。そちらは宮本さんのスマホで間違いないですか? 今お話ししても大丈夫でしょうか?」

「ああ、大丈夫だよあむちゃん。そうだ、ちょうどいい機会だ。俺はあむちゃんの家庭事情に関しては一切調べていない。でもある程度は言い当てるつもりだ」

「……?」


 何を言い出すかと思えば、私の家の事情を当てる? できる物ならやってみなさい。という心構えで聞いてみたら……。



「まず、あむちゃんの親は共働きで、テレビのワイドショーを見ては『俺達がこんな貧乏な暮らしをしてるのは政治家のせいだ』と文句を言い、

 そしてお互いに『何で子育てってこんなにもお金がかかるのぉ!?』って嘆きながら『俺が、私が、こんな貧乏な暮らしをしているのはお前の稼ぎが足りないからだ!』って言ってお互いに他人のせいにしてケンカしている」

「!?」


 私が声を返す暇すら与えず、宮本さんはさらに話を続ける。


「そしてあむちゃん。君自身も親と同じように自分が子ども食堂で食事をとらなくてはいけないほど貧乏なのを、他人のせいにしている。例えば……そう『親ガチャ』とか言ってね。

 あとは……ご両親が多忙だから、あむちゃんをあやすためにスマホかタブレットを渡されて、ショート動画を幼いころから見続けて来たんじゃないのか?」

「……」


 え……何で? どうして? え? え? 訳が分からない。



「み、宮本さん。ウソつきましたよね? 私の事も、家の事情も完璧に分かってるじゃないですか。大当たりですよ」

「まぁそんなところだろうと思ってた。自分の娘を子ども食堂で食事させなくてはいけない位だから、相当貧乏な家だとは分かってたよ。

 今言ったのはよくある貧乏な家庭のパターンをそのまま言っただけさ。詳しく話してはくれるかな?」

「え、ええ。良いですよ」


 私はお父さんが酒に酔っては例のセリフを繰り返し言ってる事、お母さんが何かにつけて「お金が無い」と言ってる事を伝えた。


「やはりそうか。貧乏の原因、いや世界のありとあらゆる争いごとの原因の大半は『自分に非がある』事を認めて改めれば解決できるものだよ」

「ちょっと! 宮本さん! 家が貧乏なのは私のせい、って言いたいんですか!?」

「ある程度は、ね。もちろん、あむちゃんがいなければ家が大金持ちになるってわけじゃあないけどね」

「酷い! 私は悪くないのに何でそんな事言うんですか!?」


 私のせいで家が貧乏!? そんなのあり得ない!



「良いぞあむちゃん、それだ。その『私は悪くない』だ」

「……?」


 宮本さんの言葉に、私の怒りは急速にしぼんでいく……『私は悪くない』がそんなにもいい事なの?


「いいかいあむちゃん。世の中には精神的に成熟してなくて、身体だけは大人になっても中身は小学生で『小学32年生』とか『小学47年生』っていう大人もたくさんいる。

 それこそ『結婚して子供を産んで親になっただけの小学生』だって山ほどいるもんだ。あむちゃん、残念だけどあむちゃんの親も『精神的には小学生』らしいね。

 ご両親は貧乏なのを政治家のせいにして、あむちゃんは親のせいにする。こうやって貧乏が遺伝するわけだ」

「……」


 貧乏は遺伝する。うわさでは聞いていて私は絶対に認めなかった、いや認める事が出来なかった事だが、認めるしかなかった。

 貧乏が遺伝するのなら、私は産まれた瞬間から負け組じゃないか。そんなの認めたら死ぬまで貧乏じゃない。そんなの、絶対に嫌だ! って思ってたのに……。



「黙ってる、って事は当たりみたいだな。それだけ親の血の力……遺伝子(いでんし)とも言うけど、その力はとてつもなく強い。

 親から殴られて育った子供が親になったら本当は子供を殴りたくないのに、子供の態度にどうしても腹が立って殴らずにはいられなくなる、殴らざるを得なくなる。なんて事もあるからね」

「……じゃあ、私は一生貧乏なままなんですか?」

「それは違う。人間は無力じゃない。人間の事を『万物の霊長(れいちょう)』って言い換える言葉もあるように、正しい教育さえ受ければ血の力に抗える力も持っている。と俺は信じたいな。

 あむちゃん自身がその証明になるんだ。そうすればあむちゃんの話はみんなに希望を与える話になる。だから頑張ろう」



 宮本さんの励ましは、今まで感じた事も無い程スッと、身体の奥に入っていった。

 大人はお父さんもお母さんも先生も酷かったから大抵は「ウザい」側だったが、宮本さんは別だ。こんな大人がいただなんて知らなかった。

 これからも何回か電話しよう。

お読みいただき、ありがとうございます。

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