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貧乏あむの大逆転~小学校を卒業するまでに知りたいお金に関する事~  作者: あがつま ゆい


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第4話 クラスメート

 翌日、お母さんが昔着ていた服の「お下がり」である時代遅れの古臭いデザインの服を着て、鏡を見て身支度をする。

 お母さん譲りの茶色のロングヘアーを安物のくしでとかす。お母さんを恨むわけじゃないけど、この色のせいで特に先生からの評価は悪い。

 コスメショップで粘って無料でもらった化粧品は持っているが、学校は化粧が全面禁止なのでしない。


 身支度を終えると、いつものようにお母さんのお下がりである赤いランドセルを背負って登校した私は5年1組の教室に向かう。

 教室中ではこれからやってくるゴールデンウイークの話がされていた。


「ねぇ、今度のゴールデンウイークどこ行くかもう決めた? 佐野原(さのはら)さんは家族でディズニーリゾートに1泊2日で行くんだって!」

「へー、さすが佐野原(さのはら)さん。いいなぁ、うらやましいなぁ」



 佐野原(さのはら)の奴は、雛森市で一番大きい工場を持つ会社の社長一家の息子というお金持ちで、夏休みや冬休みの時には決まって海外旅行に行っているそう。

 ゴールデンウイークの時も国内の観光地に行くのが当たり前で、今年は東京ディズニーリゾートに行くらしい。


 一方で私は国内旅行はもちろん、ドライブでどこかへ連れて行ってくれた事もない。もちろん「お金が無い」からだ。

 ついでに言うとそもそも車も持って無い。お母さんは前後にカゴが付いた原付に乗って買い物やゴミ出しに行っているし、お父さんは自転車で会社に通ってる。



「おはよー」


 私が教室に入ると1テンポ遅れて、そいつも入って来た。

 去年から耳にこびりついている私にとっては耳障り極まる声。その方向を見ると「オレってカッコイイアピールしてます」っていうのが顔に書いてあるような容姿。

 親が自分の財力を誇示するかのようにブランド物の服装を着ているのも気に入らない。スクールカーストトップの佐野原(さのはら)の奴だ。


佐野原(さのはら)君、オハヨー!」

「おはようございます佐野原(さのはら)さん」


 アイツの取り巻きやおこぼれ目当てに群がるクラスメートを、私は軽蔑(けいべつ)していた。あんな奴にこびを売って恥ずかしくないのか?

 そう思っていると早くも佐野原(さのはら)の奴は私をいびり始めた。



「やぁみんなお早う。そろそろゴールデンウイークだから家族で旅行に行かないとなぁ! 貧乏でどこにも行けないどころか車すらない家の奴とは違ってなぁ!」


 佐野原(さのはら)の奴はクラス中に聞こえるようなでかい声をわざと出して私をバカにする。この野郎……。


「まぁ仕方ねえよなぁ! ごはんが無いお小遣い300円じゃ旅行の予定も無いよなぁ!? ごはんの無い家なんてあーかわいそうかわいそう! ギャハハハ!」


 ……こいつ!! 心底楽しそうに私をバカにする奴にもう我慢が出来なかった。



佐野原(さのはら)!! いい加減私の事バカにするの辞めなさいよ!」

「オイオイ、オレが大切なクラスメートをバカにするわけがないだろ? オレは別にテメーの事を言っちゃいねえよ。

 オレはただ『ごはんも出ないような家では旅行なんて行けるわけないよな』っていう一般論を言ったわけで、大切なクラスメートをバカにするなんて絶対にやってないぞ。

 神に誓っても言える。そんなことしたら「いじめ」になってお巡りさんに逮捕されちゃうだろ? そんな事出来るわけがないだろ? 頭使えよなぁ300円」


 ……ふざけやがって!! もう限界だ。ウザいアイツの腹に蹴りの1発を叩き込んだ。


「おは……!! 岩田さん! 何やってるの!?」

「!! 先生!」


 タイミングが悪かったことに、私が佐野原(さのはら)を蹴っていたところを先生に見られてしまった。



「先生! 岩田さんが急にボクの事を蹴って来たんですよ。ボクは何もしていなかったのに」

「!! 何ですって!? 岩田さん! どういう事なのか説明してもらいましょうか!?」


 先生は佐野原(さのはら)の奴を自分の子供のようにかわいがっていたから常に佐野原(さのはら)ファーストで、完全にアイツの味方だった。

 ……なんだコイツ。それでも先生か?


「先生! 佐野原(さのはら)の奴は私の事オモチャにしてからかってたんですよ!? 先に手を出したのは佐野原(さのはら)の奴です!」

「先生! 違うよ! ボクは何も悪いことしてなくてただみんなに挨拶していたら『何だその汚い声は!』ってアイツが絡んできて……」

「岩田さん! 昨年から問題起こしてばかりで、何回やれば気が済むんですか!? 昼休みに職員室に来なさい!」


 またえこひいきの先生による呼び出し確定だ。やってられない。



「あむちゃん大丈夫?」


 朝の会と1時間目の間にある休憩時間に、立羽(たては)ちゃんが私に声をかけて来た。

 丸い眼鏡をかけ肩までかかる黒くてつややかな髪であまり日に焼けてない、いかにも文学少女という顔立ちだ。


「ありがとう。佐野原(さのはら)の奴になびかずに私なんかを心配してくれるのは、タテハちゃんだけね」

「私なんかって……あむちゃんは私の大事な友達じゃない!」

「あーごめんごめん。タテハちゃんこういうの嫌いなんだよね」


 学校なんて先生はえこひいきするし佐野原(さのはら)の奴もいるから大キライだったけど、タテハちゃんがいるから何とか通えているようなものだった。

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