表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貧乏あむの大逆転~小学校を卒業するまでに知りたいお金に関する事~  作者: あがつま ゆい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/25

第17話 初めてのお仕事

「じゃああむちゃん、午後の4時ごろ篠竹(しのたけ)さんの家に行ってね」

「は、はい。分かりました」


 私はタテハのお母さんから電話で指示を受けた。

 私のキッズケータイではLINEが使えないので、お客との初回のコンタクトはタテハちゃんのお母さんを橋渡しにする事になっている。

 それにしてもこれだけの事をお金をもらわずにやってくれるなんて本当にありがたい。神っているんだなぁ。


「それにしてもこれだけの仕事をしてくれているのにお金は一切要らないなんて……」

「あら、困ってる人を助けるのに理由なんていらないじゃない。困ったときはお互い様よ」


 タテハのお母さん、いいお母さんだなぁ……タテハが私なんかと違って良い子に育つ理由も分かる。



 私は学校が終わると利用規約と契約書をカバンに入れ、篠竹(しのたけ)さんの家までやって来た。午後3時50分、インターホンを押す。


「初めまして。ドッグウォーカー『犬の前足』の者です」

「そうか、じゃあ君が……あむちゃんだね? 緋縅(ひおどし)さんから話は聞いてるよ。まだ若いのによくやるねぇ。

 っと、無駄話はいいか。上がってくれないか? 膝が痛くて玄関まで行くのも辛いんだ」

「は、はい。今行きます」


 緋縅(ひおどし)さん、要はタテハのお母さんの事だろう。彼女が事前に話してくれたおかげなのか、相手の声からは警戒心が全く伝わってこない。

 リビングに上がると、最近良く見るようになったパピヨン犬がいた。インターホンに出たおじいさんは……どこ行ったんだろう?

 少しすると奥からおせんべいの入った器を持ってやってきた。その表情からは歩くたびに苦痛で歪んでいるように見えた。なるべく隠そうとしているが、隠しきれてはいない。



「ふう……最近ヒザを痛めてしまって外に出るのもおっくうになってねぇ。あむちゃん、キミがうちのマロンを散歩させてくれるのなら有難い」

「分かりました。ではこの利用規約を読んで同意していただけませんか? よく読んで納得していただけるのでしたらこちらの欄に氏名をフルネームで書いていただけますか?」

「ああ、分かった。それにしてもしっかりしてるねぇ……とても子供のやる事とは思えんよ。親や親戚が手伝っているのかい?」

「え、ええまあ。そんなところです」


 私の言う事に納得できたのか、篠竹(しのたけ)さんは気にせず利用規約を読み、サインをした。


「1回およそ30分で1匹につき300円頂戴しますがよろしいでしょうか? 報酬は散歩後にお支払いいただければ大丈夫です」

「ああ構わん、頼んだよ。で、この子が依頼のマロンだ。この子の散歩を頼むよ」


 そう言って、リビングに居たパピヨン犬のリードを渡してくれた。この子がマロンちゃん、もしくはマロン君か。


「分かりました。では行ってきます」


 私は家を出て仕事を始めた。



 マロンちゃん(君かも)は良い子で、特に吠えたり引っ張ったりはせずに素直に散歩してくれた。

 家の家族共用のタブレット端末で予め篠竹(しのたけ)さんの家を調べており、そこから30分間歩く散歩コースを作ってその通り歩いてるだけの仕事だった。

 特にトラブルも無く散歩は終わり、家に戻って来た。


「おお、お帰り。マロン、久しぶりの散歩で良さそうな顔をしてるな」


 篠竹(しのたけ)さんはマロンをなでながら弾んだ声で語りかけていた。


「それじゃあ、お仕事の報酬だな」


 篠竹(しのたけ)さんはそう言って300円を取り出し、渡してくれた。


「ありがとうございました。何かありましたらこちらの電話番号までご連絡ください」


 そう言って携帯電話の番号をお互いに登録しあう。めんどくさいけどキッズケータイだと電話帳に載ってない電話番号は自動的に弾いちゃうんだよね。

 それにしても、たったこれだけの事でお金がもらえるだなんて何だか騙してるみたいで罪悪感あるなぁ。

 私としてはただ犬を散歩させてるっていう、誰でも出来る事をしてるだけなのに。


「とりあえず1週間、頼んだぞ」

「はい。ではまた翌日お伺いしますね」


 私はそう言って家を出ると……


「よおマック」


 何故か噂を聞き付けたみたいで、佐野原(さのはら)の奴が待ち構えていた。



「マックは噂じゃ家が貧乏過ぎて働きだしたって聞いたけどガチだったとはなぁ! まぁ犬の散歩ごときでいくら儲かるかは分からないけど、せいぜい頑張れやマック。

 今度のお誕生日はマクドナルドじゃなくてファミレスにでもランクアップするといいなぁ。ハハッ!」


「誕生日はマクドナルドでお祝いしてもらった」という話をしたらそれが佐野原(さのはら)の奴にバレて

「マクドナルドでお祝いだってぇ?」とバカにされ「300円」「ご飯無い」と並んで「マック」が私のあだ名となっている。


「それにしても傑作だよなぁ。マクドナルドで誕生日をお祝いしてもらったから、マクドナルドがてっきり高級料理店だと勘違いするなんてさぁ。ハンバーガー美味しいいい! だなんて安っすい舌だよなぁ」

「それを言うためにわざわざ来たってわけ?」

「ああそうだよ。文句あるか?」

「暇そうで羨ましいね」

「ハハハッそりゃそうさ、金持ちは暇なんだよ。貧乏暇なしっていう言葉もある位だから、貧乏人とは違ってオレみたいな金持ちは時間があるんだよ」


 ……コイツ、わざわざ私の事をバカにするためだけにここまでやってきたらしい。

 そんなにも私をいじるのが楽しいだなんてどんな家で育てばこうなるんだ!? 宇宙人の方がまだ理解できる位だ。コイツの事は絶対に分からないし分かりたい気にもならない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ