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貧乏あむの大逆転~小学校を卒業するまでに知りたいお金に関する事~  作者: あがつま ゆい


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第15話 上昇婚は辞めとけ

「上昇婚は辞めとけ。0点だ。仮に出来ても不幸になるだけだ」

「!? 宮本さん! どうしてそんな事言うんですか!?」


 6月30日、もうすぐ夏休みという時期に「ご飯無い」を言い渡され、せっかく子ども食堂に行くなら宮本さんと落ち合うように連絡を取り、合流して話をしてた時だった。

 私が「夢は上昇婚」と言ったところを「0点だ」とばっさり切り捨てられた。

 どういう事!? 私が何か悪い事をした、って言うの!?


「あむちゃん。上昇婚って事は『結婚相手の男性の方があむちゃんよりも格上』って事でいいよな?

 じゃあ相手は『わざわざ自分よりも格下の女であるあむちゃんと結婚する』事になるんだよね? なぜ相手がわざわざ自分よりも格下の女と結婚しなくてはいけないか? それは1回でも良いから考えたことはあるかい?」

「!! えっと……それは……私が美少女、だからかな? 結構いい線行ってると思いますし」


 私はほぼデマカセの理由を宮本さんに告げた。が、彼の機嫌はますます悪くなる。どうしよう、地雷踏んじゃったかも。



「あむちゃん、そんなんじゃ0点どころじゃない『マイナス80点』だ。じゃあ聞くが『学校1の美少女』って凄いと思うか?」

「え!? だって学校1の美少女だよ!? 凄いに決まってるじゃない!」

「実際には全然凄くない。現在日本には小学校は18000校以上あるんだ。だから『学校1の美少女』も同じように18000人以上はいるんだ。

『学校1の美少女』だけで町が何個もできる位の数いるんだぞ? その中から金持ちに選ばれるのは……ってなると、18000人以上のライバル相手に勝てると思うか?」

「そ、それは……」


 言葉が出ない。完璧に打ちのめされてしまった。


「金持ちにとってパートナーの見た目は大して重要じゃない。何せ結婚したら30年、50年ってお付き合いが続くんだ。

 どんな美少女だって50年も経ったらしわくちゃで腰が曲がったヨボヨボの70代や80代のお婆ちゃんだ。その年老いた姿でもなお愛せるか? を金持ちはしっかりと見てるものさ。

 結婚式の時には『その身健やかなる時も、その身病みし時も、富めるときも貧しき時も変わらず愛する』って誓うしね」

「じゃ、じゃあどうすればいいんですか? 旦那さんの仕事を手伝う、とか?」


 打ちのめされてもなお食らいつく所だけは見せたい。そう思って何とか頭をフル回転させて絞り出した言葉をぶつけてみる。



「ふーむ、35点くらいかな。じゃあ聞くがあむちゃん、仕事を手伝うと言っても具体的に何をするか分かるかい?」

「!! い、いえそれは……」

「じゃああむちゃんがお金持ちと結婚したとして、旦那さんの知り合いをもてなすパーティを開くとしよう。これなら何をすればいいか分かるかい?」

「えーと……なんだろ?」


 答えの出ない私に相手は答えを用意してくれた。


「まずパーティに参加する人数を把握して、それに応じた会場を抑える必要がある。

 それにパーティに出される料理の材料や飲み物、要はお酒の確保もしなくてはいけないし、調理する料理人も手配する必要がある。

 しかもパーティに参加する人の好みや宗教上食べられない物も事前に知っておいて調整する必要だってある。

 もしあむちゃんが本気で上昇婚を狙ってるなら最低限これくらいは一瞬で出ないと話にすらならないぞ」

「……そ、そこまでが一瞬で?」

「ああそうだ。他にも駐車場はどうするのか? パーティ中、お付きの運転手はどこで待機させるか? そのセキュリティはどうなってるか? 考えなくてはいけない事は山ほどあるぞ」


 ……完敗だ。完全に発想のスケールが違いすぎてついていけない。



「都合よくお金持ちで美形の王子様が現れる、ってのが許されるのは幼稚園児までだ。そんな都合よく石油王や大企業の御曹司(おんぞうし)が地面からニョキニョキ生えてくると思っているようじゃ死ぬまで貧乏人だ。宝くじでも買って1等が当たるのを待つ方がまだ早いし確実だ」

「……今日の宮本さん、何か随分と厳しいですね。何かあったんですか?」

「勘は鋭いな、95点だ。お金を持ってる事業家と結婚したい女の人ってのは多いけど、全員吊り合わない。あむちゃんみたいな上昇婚をもくろむ愚かな女は『ドン引きする程』いるんだ。

 それこそ『点数を付ける事さえしたくないほど酷い論外な女』には星の数ほど出会ったよ」


 私だったらなんとか行けるかもしれない。って思っていた上昇婚を、宮本さんは断固として否定した。

 お父さんやお母さんに言われれば「お金が欲しかったらこうするしかないんだよ!」って言いたくなる事だけど、宮本さんから言われたら説得力があるから不思議だ。



「それに、あむちゃん自身がお金持ちになる方がお金持ちと結婚して上昇婚をするよりもずっと早くて簡単だし確実だ」

「!! わ、私……が? む、ムリですそんなの! 実家が貧乏だし……」

「出来る。アマゾンを作ったジェフ・ベゾスだって最初はガレージ起業だったし、フェイスブックは大学生の身内で使われていたんだ。

 まぁさすがにこの規模となるとあむちゃんには無理だろうけど、年収数百万なら十分行ける」

「行ける……って、具体的には何かあります?」


 私が稼いでお金持ちになる? そんなの「宇宙人が地球にやって来た」レベルの話だけど、あの時は食い付いて本当に良かったと思っている。




「具体例か……世界には犬の散歩をするだけで月収100万稼ぐ人だっているんだぞ」

「い、犬の散歩で!?」

「ああ。アメリカには『ドッグ・ウォーカー』っていう仕事があって、飼い主の代わりに犬の散歩をする仕事があるんだ。中には1ヵ月100万、1年で1200万円以上稼ぐ人だっているんだ。

 あむちゃんには信じられないだろうけど、本当にいるんだぞ」


 宮本さんがいなければ「犬を散歩させるだけの仕事」という「ドッグ・ウォーカー」があるなんて知りもしなかった。

 そしてこの仕事が、私を大きく変えようとしていた。

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