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姉の運命を変える予定でしたが 〜死に戻った姉と転生した弟〜  作者: こまつり


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遠足のお知らせ



 授業には今のところ、ついていけている。今までのヴィトリークの努力の賜物だ。とはいえ授業で出てきた単語に『あ! 知ってる!』となるのはなかなかに気分がいい。これが例の通信教育の狙いなんだな。

 これから先のために、僕自身も頑張らなくては。

 もし、俺が生きていて、ヴィトリークがそちらにいるとしたら、戻ってきた時に苦労させるわけにはいかない。ローレンツもしきりに「次の試験で成績が落ちていなかったらプラチナ級に転入できるから」とアピールを欠かさない。

 そんなに頑張ってくれているのに、僕が普通級に落ちてしまうわけにはいかないだろう。

 プラチナ級には学年が違う生徒もたくさんいる。ホームルームなどを行うのが1教室、授業の時は自分の受ける授業が行われる教室に移動するので各自バラバラになる。ジュノは僕と同じ授業を可能な限り選択してくれたけれど、それでも実践魔法講座や魔法陣理論講座などは姉上達と同じクラスに進んでいる。僕が初級講座レベルの技量しかないので、ついていくわけにはいかなかった。

 学年が進めば、選択できる授業ではあるんだけど、ジュノはその分野については飛び級を認められているから。


「では、各自きちんと自分で支度を整えることを忘れないでくださいね」


 先生の声にハッとして、思わず隣のジュノを見る。冷めた目をしたジュノがプリントの最上段の見出しをつついてくれた。歓迎遠足のお知らせ。


「自分で揃えるべきものはここに書いてある。そんなに多くないから明日にでも揃うだろ」


 イベントだ、それもゲーム内で毎年発生するタイプの。目を輝かせた僕に、ジュノが微妙な顔をする。


「そんなに楽しみか?」

「え、遠足嫌い?」

「遠出したのは……拐われた時の一度きりだ」

「あ……じゃあ、今度は楽しい思い出になると思うよ」


 このイベントはいわばご褒美イベントだ。攻略対象と接近するも自由、ステータス上げもできる、さらには美味しい雑魚敵との連戦でレベルアップもできる。一年の最初にしかない貴重なイベント。そう、ゲーム内ではこの時ばかりはシャーロットの出番がないのだ。つまり姉上も安全。このイベントが終わればあとは勉強勉強勉強の隙間に体力作りと遊んでいる暇はない。この後を楽にするためにも、このイベントで稼げるだけ稼いでおくのが重要なのだ。

 換金できる素材、実戦経験、それから交流。現実的に、学校が歓迎遠足などを行うってことは交流がいちばんの目的のはずなんだけど、それは最悪後半で挽回できる要素。今必要なのは、実戦経験と素材の確保だ。



 僕が、どうやって素材を換金したり錬成したりすればいいのかは置いておいて。



 シャーロットがハーレムに進むために、必要なものがわからない以上集められるものは集めておいていいだろう。ヒロインの妨害になるかもしれないし、好感度上げになるイベントで必要な素材もある。





「楽しそうだね」

「ええ、歓迎遠足があるんです」


 夕食の前に、父上がおやつをくれて。僕は父上の執務室のソファでお茶を飲む。


「ああ、シャーロットも去年行っていたね。何かトラブルがあったとかで、帰ってきてからしばらくは機嫌が悪かったけれど」

「去年……あっ」


 僕が、事故に遭う前。そうだ、踊り場の階段から突き落とされたのは、その頃じゃないかな。5段ほどしかない階段だったけれど。手首を捻ってしまってしばらく生活するのに苦労した気がする。


「何か、思い出すことがあるのかい?」

「い、いいえ?!」


 まさか姉上にいじめられたエピソードがまだありましたなんて、言うわけにいかない。姉上は今回僕とジュノのグループに、というか僕とジュノを自分のグループに組み込んでいるのでおそらくテオドール殿下と姉上と、僕とジュノの4人グループだろう。殿下と姉上、という高位貴族のグループに混ざりたいという人は多いだろうけど。下手にグループを組んでしまうと厄介なことになる可能性もあるんだそうだ


「用意するものがあって、それは自分でちゃんと用意しなさいって言われたんですけど」

「遠足だろう? そんなに用意が必要なものがあったかな」

「えっと、鞄、飲み物と携帯食、それからハンカチや傷薬……武器……必要なら補助魔道具。虫除けやスクロールは学校が支給します」

「なるほど、自分で揃えられそうな物ばかりだね」


 頷いた父上。そう、なんだ? 姉上も去年行った、ってことはこのあたりは変わってないんだと思うけど。遠足っていうか、日帰りの遠征ってことだよね。プラチナ級以外もこんな感じなんだろうか。


「家の中に全てあるよ、当日までに準備できればいいからね。さ、そろそろ今日の先生が来るよ」

「はい、じゃあ父上また後で」

「うん、がんばってきなさい」


 父上の執務室を出て、今日の授業があるサロンへ向かう。ダンスの授業は気が重いけど、仕方ない。リズム感というものを僕はリュートの分として母上のお腹に置いてきたらしいからね!


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