― はじまりの裏側 ― (7)c
あああ……。思わず天を仰ぐ。彼らの言霊が身の内を駆け巡る。甘受しながらも、受ける資格などないのにと心中は複雑だ。
ふらつく体に活を入れ、大地を踏みしめる。
更地を覆っていた結界を解くと同時に、穏やかに吹き流していた風の支配も手放す。
もう一度左手首を見て、目を閉じ呼吸を整え、丹田に気力を溜めていく。
そして目を見開き、宙を見据えると、力強く二拍手した。
この小さな島国の隅々に至るまで響き渡るように。
「此岸に在り、彼岸にも在りし場所であり、現でありながら、夢を見ているようなあわいの地【境界】に、長き刻を独り坐し、我らの核たる【魂】と【想】を見守りし、数多の【境界守】を奉り申し上げ候……」
その声は、此岸だけでなく、彼岸や天に届くほどの……邪魔者扱いしている人間、上辺だけの介入で見向きもしなくなった神の耳にも、しかと届くほどの声であった。
「我が身は終りのあるものなれど、我が魂は不変ゆえ、汝方身罷りしときは見送り、新しき撰されし方を迎え入れ、御心を平安に満たすことを、此岸に在りしときは、常にこれを約定する。我が魂が終わりを迎えるとき、我はすべてを賭して御身と御身の坐す【境界】を滅することをここに約定するものなり――」
己の身を縛る約定だ。ふだんの己ならこのような愚かとも思える言霊など発令しない。なのに……。
薄い笑みを浮かべると、緩慢な動作で左手首にくくられた紐を千切る。勾玉を地面に落とすや、あっさりと意識を手放した。
頭が地面に着く直前、力強い両腕で抱えられた。
「困った時の神頼みならぬ鬼頼みか……たわけが」
遠方に人間がやって来ようとするのを見つけ、盛大な舌打ちをすると、そのまま身をひるがえした――。




