↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界守  作者: 琥珀猫
PR
87/89

― はじまりの裏側 ― (7)c

 あああ……。思わず天を仰ぐ。彼らの言霊が身の内を駆け巡る。甘受しながらも、受ける資格などないのにと心中は複雑だ。

 ふらつく体に活を入れ、大地を踏みしめる。

 更地を覆っていた結界を解くと同時に、穏やかに吹き流していた風の支配も手放す。

 もう一度左手首を見て、目を閉じ呼吸を整え、丹田に気力を溜めていく。

 そして目を見開き、宙を見据えると、力強く二拍手した。

 この小さな島国の隅々に至るまで響き渡るように。

 「此岸に在り、彼岸にも在りし場所であり、現でありながら、夢を見ているようなあわいの地【境界】に、長き刻を独り坐し、我らの核たる【魂】と【想】を見守りし、数多の【境界守】を奉り申し上げ候……」

 その声は、此岸だけでなく、彼岸や天に届くほどの……邪魔者扱いしている人間、上辺だけの介入で見向きもしなくなった神の耳にも、しかと届くほどの声であった。

 「我が身は終りのあるものなれど、我が魂は不変ゆえ、汝方身罷りしときは見送り、新しき撰されし方を迎え入れ、御心を平安に満たすことを、此岸に在りしときは、常にこれを約定する。我が魂が終わりを迎えるとき、我はすべてを賭して御身と御身の坐す【境界】を滅することをここに約定するものなり――」

 己の身を縛る約定だ。ふだんの己ならこのような愚かとも思える言霊など発令しない。なのに……。

 薄い笑みを浮かべると、緩慢な動作で左手首にくくられた紐を千切る。勾玉を地面に落とすや、あっさりと意識を手放した。

 頭が地面に着く直前、力強い両腕で抱えられた。

 「困った時の神頼みならぬ鬼頼みか……たわけが」

 遠方に人間がやって来ようとするのを見つけ、盛大な舌打ちをすると、そのまま身をひるがえした――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。