― はじまりの裏側 ― (7)a
不可思議だが便利な欠片を利用したとはいえ、全土に渡る大掛かりでありながら細やかさも要求される術は、さすがに心身に堪える。
左手首にくくってある勾玉をちらりと見て、荒い息を整えると、声を風に乗せていく。
「いかがですか?」
己でいいながらも、いかがもなにも訳がわからぬであろうなと笑っていれば、案の定であった。
なので、己が成したこと、新たに定めたことを一つずつ丁寧に伝えていく。
絶えず動く【想】はそれぞれの【境界】から好き勝手に彷徨わせ、【境界】同士を繋ぐ道に入り込めぬように施したこと。
村から町、町から国、国から聖域へ渡れる日に、各出入口に留めてある光を灯らせ、通路に風を生じさるようにしたこと。また迎え入れる側の出入口は、一見一つに見えるが寄り添わせていること。これは国から各聖域への出入口も同じようにしていること。
戻る刻になれば渡った先の【境界】の光が明滅し、風の向きが変わるようにしたこと。そして、戻ると光は消え風もやむようにした。
さらに、各【境界】にあった彼岸への出入口は聖域以外には閉ざしたことを。
そして、聖域の【境界守】が己に対しての使いの出し方を。
「さて、これで仕舞いですが……いかがでしょう?」
彼らの満足した声を聴きながら、風から意識を切り離そうとしたとき、低く重い声に呼び止められた。
『のう、此岸の識者どの』




