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境界守  作者: 琥珀猫
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― はじまりの裏側 ― (5)a

 彼らの絶望し嘆く声が聞こえ、無意識に言葉がするりと流れるまで、これ以上彼らを狂わしてはいけない。ただそれだけを思っていた。

 なので、彼らを行き来させるという言葉に、己自身がまず驚いた。

 天の配剤かと疑ったが、すぐに打ち消した。

 此岸は元より彼岸も天も彼らには見向きもしていない。今現在、町一つが壊滅しているのに、物見すらよこしていないではないか。

 だとすれば、この言葉は己の血に連なる者、いや数多の【境界守】の望みなのではないか?

 近隣の村とは山で隔たれているが、この規模の町であれば、頻繁に人間が訪れるかもしれない。念のため、風を起こして残っている【魂】を更地の外に押し出し、空間全体を結界で覆う。この地に存在するのは、己と己の眼前に漂っている小さな【境界】の欠片のみ。

 ふっと、大小さまざまな欠片が煌くと、一つ一つに見覚えのある姿が投影されていた。

 己が施した術ではない。なぜだと思ったが、理由は後々考えることにして、今はこの不可思議な現象を利用する。

 久しく耳にすることのなかったであろう他人の声を聴いて、そして己が発した提案に驚いて彼らは、ひとまず正気に返ったようである。

 『我らが……行き来……?』

 青年の姿をした【境界守】と重なるように、湧き水が豊富な泉を映し出している欠片から声が聴こえてきた。

 「そうですよ。でも、あなた方すべての【境界守】が一度に動いてしまうと、混乱が起きかねません。それに、あまり遠くの【境界】へ渡るのもよろしくはないでしょう」

 彼らが応えてくれたのに安堵し、大まかに提案していく。

 『我らの役目は、【魂】と【想】を管理するのみである』

 他の【境界守】との会話が聴こえたことに驚きながらも、いかつい顔の小さな鍛冶神が、頑固に役目の放棄はできぬと返してきた。

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